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第26話

――1つ良いですか?」

「何?」

「何故僕を連れてきたんです?」

「――あそこに1人おいとくには、危なっかし過ぎるから」


ボルグ105B型は、10両編成。

光一たちが乗っていた10両目、龍清が乗っていた9両目。


「と思ったんだけど、これお前がやったの?」

「――これでも系譜ですから。ただ、周囲に防壁はるのに手いっぱいで、数名そっちに逃げられましたけど」

「――皆さん、ここは俺達に任せて後ろに車両へ避難してください」


光一がそう告げると、物陰に隠れていた乗客たちは恐る恐るたち、後ろの車両へ。

それを見送った後に、気絶している、あるいは拘束されている武装襲撃犯数名に目を向ける。

強力な電撃を浴びた者もいれば、何か札が貼られ動きを拘束されている者。


「――弱そうでも系譜は系譜か、大したもんだな」

「――身長以外、大して差はないじゃないですか」

『きゅうっ!』


列車は当然だが、危険物の持ち込み禁止故に、光一はほぼ手ぶら。

その為、武装襲撃犯の武器、主に自動拳銃を奪いつつ――


「生憎と俺は女に間違われた事はない――ん?」

「――あなたの事嫌いです」

「へそ曲げてねーで、構えろ」

「え?」


光一が奪った2丁の自動拳銃を構え、8両目に繋がる連絡扉に向けて撃ちだす。

窓が割れると同時にドアが乱暴に開けられ、3つの影が龍清めがけて襲いかかった。


「!」

『きゅうっ!』


春清が間に割り込み、雷のブレスを吐き出すと、影が三つとも飛びあがり天井に張りつく。


「――契約者が混ざってたか」


天井に張り付いているのは、3人の男。

1人は、合成獣キメラの物と思われる毛皮を上半身にかぶり、指先を天井に突き立てている男。

もう1人は、脂ぎった感じの小太りの男で、両手両足からの分泌物で張り付いているらしく、天井がじっとりとしめっている。

最後の1人はフードを被りマスクをした厚着の男で、こちらはみた感じどうやって天井に張り付いているのかがわからない、不気味な印象を醸し出している。


「……」

「きゅうっ……」

「――被った毛皮が何か関係してそうだな。もう1人は恐らく汗腺、あるいは皮脂を異常発達させ、粘着力を持たせた……か?」


龍清が警戒する中で、光一は銃を構えながら相手の能力に対する考察。


「――残虐に誠実期待のルーキー」

「――討ち取れば大手柄」

「――こんな底辺生活ともおさらばだ」


相手がそう言うや否や、小太りの男が右手を天井から離し、ぐっとにぎりしめる。

その手からジワリと汗が吹き出し、それが皮脂となって徐々に膨らんでいく。


「“皮脂拘束”」


その皮脂を投げつけ、光一と龍清は飛び下がり避ける。


「――汚い攻撃」

「もらった!」


龍清が皮脂がべっとりとついた床に顔をしかめている間に、かぶり物の男が飛びかかる。

両手を広げると、その指先には人間の物とは思えない爪が伸びていて、それを龍清めがけて突き立てようとする。


「させない!」


龍清が突き出す様に札を取り出すと、その次の瞬間爪どころかかぶり物の男自体が吹っ飛ひ、右手を抑える。

――かろうじて見えた右手は、突き立てようとした指が全部妙な方向へと曲がっており、それを無理やり元に形へと戻した後、龍清を睨む。


「――見た目に騙された。弱そうなお嬢ちゃんでも、やはり系譜か」

「僕は男です! ――なんで皆して!」

『きゅうっ』

「――おや、男だったか」


にっと頬を釣り上げる様な笑みを浮かべた、かぶり物の男。

その次の瞬間歯が形を変え、人間のそれではなく獣の――それも、肉食の獣の牙へと変貌していた。

更に言えば、纏っていた毛皮が生物的な雰囲気を纏い始め、龍清は人間ではなく獣と対峙しているかのような感覚を覚え始めていた。


「――ま、どっちでも良いけどね。“思念獣人マインドビースト”、系譜にも劣らないって事を示す事優先だ!」


ぺろりと舌舐めずりをし、狩人の目となり龍清を睨む。


「――援護は任せろ」

「おうよ」


その後ろで、小太りの男が全身から大量に皮脂を分泌し、気味悪い光景を造り出す。


「――じゃあそっちから仕留め……!」


べゴン!


「!?」

「――させるか」


光一の足もとが、突如へこむ。

厚着の男が、マスクに手をかけ――


「!」


光一は軽く首を横に倒すと同時に、後ろの窓ガラスが割れた。

それと同時に、カウンターとして先ほど奪った自動拳銃を数発、厚着の男に向けて撃ちだした。


「――ひひひ」


小太りの男が庇う様に立ち、銃弾が命中。

――しかし、身体を覆う皮脂に穴が多少空いた程度で、身体には届いていない。


「――ただの列車ジャックじゃなさそうだな」


光一が電気を纏わせた両拳を撃ちつけ、そのまま振り上げ思い切り振りおろす。

その動きに雇用する様に、電撃のムチが小太りと厚着に襲い掛かる。


「ちぃっ!」


厚着が小太りを抱え、ひらりと後ろへと飛ぶ。

その時、厚着の服に電撃が多少当たり――


バリバリ!!


「――お前も強化系か」


そこから衣服がびりびりと、派手な音を立て敗れる。

――露わになったのは、厚着の男の腹……それは、異様に膨らんでいた。


「念動力と、肺と横隔膜と言った呼吸系臓器の身体強化を組み合わせた、空気砲――それがお前の能力だな?」

「まさかこんな早く見破るとは、流石」

「……どこのカー●ィだよ? っと、それよりお前ら一体何者だ? 明らかに系譜と戦い慣れたその連携、ただの列車ジャックが持つ様な技能じゃない」

「「「……覚悟!」」」


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