表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/171

第24話

「死ねえっ!!」

「ぎゃああああああああっ!!」


「東城博士の新作に食われちまいな!!」

『ぐがあああああああっ!』

「ひっ……ううぅぅあああああぁぁぁああああっ!!」


正義の襲撃により、憤怒のナワバリの住民は、次々と蹂躙されて行く。

合成獣キメラに食われ、能力の餌食となり――断末魔が響き渡る。


「1人残らず生かすな!!」

「力を振るえ! 我らは正義、悪を蹴散らせ!!」



「はっ……はっ……」


そんな中で鷹久は1人、とある一箇所にて侵攻を食い止めていた。

数こそ多くとも、上級系譜の前では意味を成さず、次々と数を減らされて行く。


「――負の契約者を殺せ! 正義の力を思い知らせるんだ!!」

「正輝様の正義を世に知らしめ、平和を――負の契約者を皆殺しにした未来を造り上げるのだ!!」


――しかし、士気は下がらないどころか、逆に昂る一方。


「――なんで、そんな! そこまでして、一体この先に何があるんだ!?」


そこで、全員がしんと静まる。


「――何が? 決まっている、平和だ!」

「悪を皆殺しにした世界――それこそが真の平和だ!!」

「そんな事も忘れたか、美徳の恥さらし!!」

「負の契約者どもに媚びを売ったゴミ共が!!」

「負の契約者を殺せ、正しき者が正しく暮らせる世界を創るのだ!! 我らが正義の契約者、北郷様バンザーイ!!」

「「「バンザーイ!!」」」


その次の瞬間、逆上したように全員が激高。

一斉に鷹久に向け、鬼気迫る表情で攻撃を開始。


「死ねえ、負の契約者ぁっ!」

「正義の鉄槌、受けてみよ!!」

「悪に存在する価値なし!!」


「――こんな、事って!」




勇気の契約者、一条宇宙

正義の契約者、北郷正輝


かつて、とある自乗故に反発し、戦い――決裂した2人。


「――美徳から逃げた腰抜けが、平和活動の邪魔をしないでもらおうか」

「平和? ――侵略の間違いだろ」

「平和だ。世の秩序と安寧を乱す悪を殲滅する活動だ」


その2人が今、相対していた。


「――そんな……ボク達が何をしたって言うの?」


へたりこみ、涙で顔がぐしゃぐしゃになった愛奈が、ふとそう呟いた。

正輝が愛奈の方に顔を向けると、震えながら力の入らない四肢で後ずさり


「負の契約者の庇護下に入った――それだけで十分だ」


さも当然の様に、正輝はそう言い捨てた。


「――ふざけるな!!」


ガシィッ!!


宇宙が風の龍を繰り出し、正輝がそれを片手で受け止める。


「ふざけてなどいない。我は平和を願っているだけだ」

「これのどこが平和だ!?」

「悪が死に絶えた世界――それ以上の平和がどこにある?」

「――言ってくれるな!」


宇宙の後ろから、黒煙を上げるマグマの腕を振り上げたユウが、飛びかかる。

マグマの腕が突き出されるのに対し、正輝はもう一方の腕を振りあげ――ぶつかり合う。


「うっ、うわああっ!」


その相殺による余波で、道は砕け破片は舞いあがり――辺り一面を吹き飛ばす。


「――気がついたばかりで無茶しちゃだめだよ」

「……無茶はお互い様だ。おーい後ろの、クエイクの後ろから動くなよ?」


――一般人は、光一とひばりが協力してはった防壁とクエイクのガードで、何とか事なきを得ていた。


“動けって方が無理”――そう思ってはいたが

完全に恐怖ですくんでしまい、声が出せない状態となっていた為、言葉としては出なかった。


「――負の契約者の横暴の内容を知ってなお、否定が出来るのか。朝霧裕樹?」

「否定はしねえ――だがだからって、こんな事を鵜呑みにする理由にもならねえ!」

「争いをとめた先も争い――これじゃ、俺達が世界大戦を止めた意味がないだろ!」

「“人類の敵として降臨した14匹のモンスター”――そんな発言がのさばった時点で、意味もなければ命に価値もない――正義こそが重要、正義こそがすべてだ」


「はい、そこまで!」


そこで、昴が間に入り中断。


「――何の真似だ、昴?」

「これ以上は僕としても許せない――それだけさ」

「どういう事だ? 場合によっては――」


正輝が拳を握りしめ、構えをとる。

――それに対する昴は、表情一つ変えず立っているのみ。


「一条宇宙の行動に対する美徳側の方針の決定権は、僕にある――そう言う協定を結んだ筈だよ? これは立派な協定違反なのだけどね」

「――これは憤怒に対する攻撃だ。朝霧裕樹は勇気に対し、同盟破棄を示す裏切りを働いた。故に協定の範囲外である」

「それに対しては、正の契約者の一部の暴走で朝霧裕樹の妹が誘拐され、その命と引き換えに強要された事――そう調べは付いている。故に協定の範囲内であると判断し、僕は攻撃停止を進言する」


メガネを介してなお、昴の瞳は有無を言わせない――その一言に尽きる眼光を放つ。


「――わかった。協定を破る訳にも行くまい」

「……理解してもらえて助かるよ」


ホッと昴が息をつき、正輝は踵を返し――。


「――待てよ」


宇宙はそれを呼びとめた


「――契約者社会における平和は、正と負の垣根を越えた友好同盟だ」

「違うな――悪が死に絶え、正しき者達が正義と秩序の名の元で、正しく生きる事こそが真の平和だ」

「――俺はそれを認める気はない。お前が命をこれからも蔑ろにするなら、」

「人命とは正義の燃料だ―――大切にする理由など、必要ない」

「――なら俺が理由を創ってやる」

「ぬかせ――美徳の方針は我の物だ。決闘で負け、美徳から逃げ去った貴様に、否定する権利等ありはしない」


「なら正負同盟として、あたしは笑顔で満ちた世界を創ろうとする宇宙さんを賛同する!」


2人の間に割って入ったのは――


「――ひばり」

「世界に必要な物は、笑顔ではない――正しさだ」

「その世界に必要な正しさの証明は、人の笑顔――あたしはそう信じてる!」


きっと、正輝の目を見据えそう断言するひばりに――


「…………人とは自分勝手な物。それを思いしれ、“悲愴”」


そう言って、去って行った。


「――ひばり、あんま無茶すんな」


――その場の契約者、全員がアクションを取っていた。


「――肝が冷えたよ」


光一がリボルバーを構え、“超電磁砲レールガン”の発射準備を整えていて


「――全くだ」


宇宙が両手に風を集中させ、“風竜”の発動の構えをとっていて


「事なきを得たけど――一般人が居るんだ。あんまり刺激する事して欲しくないな」


ユウも、ひばりの横で至近距離での“迦具土カグツチ”の発動の構えを取っていた。


「――ごめんなさい」

「けど――」


膝をつき、ユウはひばりの頭に手を乗せ――


「カッコよかったぜ、ひばり」


にっと笑みを浮かべた。




「――お帰りマー君。今回はどうだった?」

合成獣キメラの稼働データなら、合成獣キメラ使いに聞け」

「りょーかい。さて今回は……ふんふんっ……やっぱり天草さんに止められちゃったのか」

「――太助、仮眠室を借りるぞ」

「ん、おやすみなさーい。じゃあぼくちん東城太助は、稼働データを使ってさらなる研究を続けるとするよー」

「頼む」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ