第22話
憤怒の契約者、朝霧裕樹
勇気の契約者、一条宇宙
――両者の激突は、あらゆる物を焼き、薙ぎ払い……破壊した。
「――“迦具土”!」
ユウが6本の太刀“六連”を持ちつつ、両腕をマグマで包み――刀を牙としたマグマの竜を繰り出す。
「“断空”!」
宇宙はそれに対し風を腕に纏わせ、手刀の構えをとり一歩踏み出す。
纏う風が腕の3倍の長さの剣の形状をとり、“迦具土”とぶつかり相殺。
「はああああああああああああああああああああああっ!!」
相殺すると同時にユウが駆けだし、六連を掴み鞘におさめ、打ち刀“焔群”を抜き斬りかかり――。
ガギイッ!!
宇宙の手甲とぶつかった。
「――状況は理解してる。時間が来るまでは、このままで」
「――すまない。こっちの落ち度で、こんな事になっちまって」
「――俺も妹がいる身だ。気持ちが理解できる以上、責められないよ」
2人が距離をとり、睨みあいへと移行。
ユウは焔群を構え抜刀術の構えをとり、宇宙も待ちの姿勢へと移行。
「――こんな虫唾の走る戦い、初めてだ」
「奇遇だな――俺もだよ!」
2人が駆けだし、ぶつかり――地面を抉った。
一方で、両手に片刃の片手剣を二刀流で構える綾香と、改造リボルバーに自動拳銃を構える光一が、相対していた。
「――胸が悪くなる戦いだよ」
毒気づきながら、綾香が軽くリズムをとりながら、ゆらゆらと揺れる。
「――来たか」
綾香の能力“幻想舞踏”
契約者の能力では希少である“瞬間移動”をベースに、“催眠能力”を織り交ぜた、幻惑系高速移動能力。
不意に綾香の輪郭がブレ、掻き消えると同時に光一は銃を――自身の死角へと撃ち出した。
「――!」
その刹那ガラスの砕けるような音が響き渡り、光一の死角から剣を振り下ろそうとした綾香の姿が、砕けて消える。
「――あぶねーあぶねー」
ゆらりと綾香の姿が、ぼやけて――幾つも光一の周囲に浮かび上がる。
それらが一斉に軽くリズムをとりながら、ゆらゆらと揺れ動き――そこからさらに、ぼやけた綾香の姿が、分裂。
こうなると、実像と虚像の区別はつきにくい。
実像だとしても、“瞬間移動”ベースであるため、それを使い虚像が掻き消える様に演出する事も、“催眠能力”を使えば可能。
「――ちぃっ!」
光一は苦し紛れに、虚像の群れに手当たり次第に銃を発砲。
それらはガラスの砕けるような音を立て、砕けて消えて行く偶像であり――その破片はすぐさまに集まり、ぼやけた綾香へと戻っていく。
ザクっ!
「うっ!」
そこで光一の背が十字に斬り裂かれた。
「――今だ!」
光一が銃を落とし、右手で電気をバチっと音を立ててショートさせ――
「!?」
周囲が爆発を引き起こした。
「うわっ! あちちちちちっ!」
光一が発砲し、綾香が剣でそれを回避し距離をとる。
「――ったく、油断ならないな。自分の周囲を可燃ガスで充満させてたなんて」
「俺相手に油断出来ると思う方がおかしい」
――もう一方では
「“属性武装・地剣”!」
「“武装解放・重装右腕”!」
ひばりの両手の双剣が、岩を粗く削ったような大剣へと変貌。
鷹久の両手両足の装備が、液体金属を噴き出し形をとり重装備へと形を変える。
まず、ひばりの能力“属性武装
自身の武器に属性を付与する能力で、付与する属性により様々な攻撃が可能となる能力。
そして鷹久の“武装解放”
武装強度の限界を超えた強化と、重量の上下をコントロールする能力。
彼の装備する籠手とレガースは特注品で、特殊液体金属を使い念動力で形を整える、契約者専用装備。
故に鷹久は、特殊液体金属を使用した装備を使い、パワー戦からスピード戦まで、そつなくこなす接近戦を得意としていた。
ガギィっ!
岩の大剣が、液体金属でまるでボーリング玉の様に膨らんだ、籠手の右拳とぶつかる
「“武装解放・斬撃左腕”!」
左腕の小手が二の腕から伸びる刃を模り、ひばりに向けて斬りかかる。
「“属性武装・風盾”!」
その斬撃は、ひばりの左手に着けられた手甲から生じた風で、受け流された。
鷹久は一旦距離をとり、ひばりは剣を納め銃を取り出す。
ひばりの場合、遠近両方こなせるオールラウンダーであり、武器が変われば効果も変わるが、威力が落ちる事はない。
「……裕香ちゃん」
銃を構えるひばりの口元から、ふと漏れた呟き。
――その次の瞬間、ひばりの口元にツッと赤い線が走る
「――! “属性武装・凍銃”!」
表情をきっと引き締め、ひばりが引き金を引く。
銃弾はかわされ、着弾した個所が凍結し始めると同時に、銃を納めて剣を抜く。
「――支倉さん」
「…………ごめんなさい。やあああああああああああああっ!!」
ひばりが双剣を構え、鷹久に向けて駆けだした。
「――準備、完了しました」
「御苦労――正義の契約者、北郷正輝の名において命ずる! これより、裏切りという罪を犯した負の契約者、憤怒を滅する!!」
「「「了解!」」」
「我らは正義の軍勢であり、この世界は正しき者達の物である! 故に諸君が成すべき事はただ1つ、正義の鉄槌を手に憤怒のナワバリに住む者を皆殺しにしろ! 負の契約者という悪もその賛同者も、その存在を絶対に許すな!!」
「「「はっ!!」」」




