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第2話

契約者社会。


第三次世界大戦を終結させた大罪、美徳の契約者を中心、頂点とした組織を始めとする、契約者達のもたらす恩恵により、世が成り立つ時代。

彼らの功績で、医療、料理、環境等、あらゆる人間社会の発展が数百年は早まったとされ、世は発展の一途をたどっていた。


――新たな問題と引き換えに


ガシャアンっ!


「……ん? なんだ?」


ブレイカーは、頂点として大罪シリーズと美徳シリーズ。

それを基に造り上げた系譜のブレイカー、その下に量産型が存在し――量産型の契約者ですら、精鋭の軍人数十人がかりのレベルである。


更に契約者には、理性を契約条件とする正、欲望を契約条件とする負の2種類存在し――。

その内の負の下級契約者による犯罪、それを起点に起こる正と負の戦争に、世が怯える時代でもあった。


「なんだコラアっ!!」

「上等だ!!」


商店街で契約者によるケンカ騒動勃発。

ケガ人どころか、建物自体が破壊されてるために、たまたま通りかかった光一が……


「はい、それまで」

「んだあこのモヤシ! 人間の分際で契約者様にたてつく気かよ!!?」

「邪魔だ失せろ! ぶっ殺されてえか人間!!」


仲裁に入ると同時に、揃って光一の体躯を見て舐めきり、好き放題罵倒。


「…………(すっ)」


それに対し光一は、羽織ったジャケットの袖をまくり――


「なんだあ……は?」

「え? ――まさか、“血黒の凶王様”?」


残虐のブレイカーを見せると、それまでの強気の態度は一変し――


「「ごっ、ごめんなさい! 命だけは助けて!!」」


揃って財布を差し出しながらの土下座に移行した。


「えーっと、契約者のケンカに差別発言、傷害に器物損壊から営業妨害――2週間ほど留置所で頭冷やせ」

「「はいいいっ!!」」


余談だが、光一は荒事関係の仕事を手掛ける場合、返り血を浴びて帰ってくる事が多い。

その事と、黒を基準とした服を着てる事が多いことから、服の色は血を吸い過ぎて黒く変色した物だと妙な逸話をつけられ、“血の黒”、血黒の凶王と呼ばれていた。


「やれやれ……」


その通り名自体、光一にとってはあまりいい感情は抱いてはいない。

――が、仕事の上では大いに役に立つ事が多いので、複雑な気分ではあった。


「――っと、いけないいけない。ひばりとアキ待たせてんだから、急がないと」



――所変わって


「可愛いお嬢さん方、今から私と一緒にスイーツでもいかがですか?」

「何やってんだテメーは」


バヂっ!


「ぎゃあっ!」


ひばり達をナンパしてる男の背後から、光一が高圧電流を集中させた指を脳天に突き立てた。


「だっ、誰だ!? いきなり何しやが……げっ! なっ、何するんですか、久遠さん」

「何仕事サボって上司ナンパしてんだ。お前確か今日、ビオトープの新型設備搬入の補佐だろうが」

「え? 上司……? あっ! 悲愴のひばりさんに、技術班長!」

「もうっ、ダメですよ。仕事サボってこんなことしちゃ」

「すっ、すみません!」


ひばりに諭され、男は逃げる様にその場を後にした。

光一は呆れつつ、ひばり達の座ってるオープンテラスの席に腰を下ろす。


「……だから技術開発所で話しましょうと言ったのに」

「その技術開発所員全員から、“外に連れ出してくれ”って苦情が来たんだ。閉じこもりっぱなしでカビが生えそうだからって」

「失礼ですね。ただ趣味と仕事に没頭しているだけだと言うのに」

「趣味はゲームのワーカーホリック。インドアどころか引きこもりじゃねーか」

「中に外、影に日向にとあちこち出回ってる貴方ほど、忙しくはありませんよ」


憤怒技術班長、来島アキ。

憤怒のプログラミング技術第一人者で、開発された人工知能やセキュリティなど、契約者1の頭脳派“知識”の技術陣にも引けを取らないと言われる程。


「――昼は外で、最低30分の日光浴。これ命令だから、破ったら厳罰な?」

「……まあそれ位なら良いですよ。では報告ですが、ほぼ形にはなりました。それと試作品ですので、試験用兵器をいくつかつけたいと意見が――」

「許可は出すから、早く量産にこぎつけて」

「わかりました。完成次第、連絡します」


そこから、細かな打ち合わせ。

途中からは、料理を注文して楽しくごはん。


「それで、そちらはどうなんです?」

「芳しくない。どこもかしこも、契約者のケンカや暴力、犯罪が多発して……」


ドガシャアッ!!


「こんなだからなあ」


少し離れた銀行から響く轟音。

念動系の攻撃らしく、ガラス戸が木端微塵になり壁が不自然にひび割れる。


「どけコラ!!」


そこから1人のマスクをかぶり、現金を詰め込んだカバンを持った男が、喫茶店側に向けて駆けだしてきた。


「こちらに来ますよ?」

「じゃ行ってく……」


「どけっ!」

「きゃあっ!」


光一がゆっくりと立ち上がろうとした、その瞬間。

強盗が薙ぎ払ったテーブルの上に乗っていたカレーが、綺麗な放物線を描き……


ベチャっ!


「「あっ」」


ひばりの頭にぶちまけられた


「…………」

「……久遠さん」

「俺が行く手間省けたなこれ」


ひばりはゆっくりと頭のカレーと顔を拭い……


「待ちなさあいっ!!」


どこからともなくハリセンを取り出し、強盗を一閃。

その迫力のままに正座させ、ハリセンを手に仁王立ちで説教開始。


「――以上だ。物質操作系連れて修復頼む」

『了解です。直ちに」


その傍らで、光一は携帯を取り出して場の収拾の手配を済ませると、テーブルにつきカレーを食べ始める。


「ちなみに、ひばりのハリセンは別に能力じゃないので、あしからず」

「――なんですかいきなり?」

「いや、なんとなく」



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