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閑話 正義のナワバリの実情

 正義のナワバリ

 そこは主に犯罪契約者の横暴、大地の賛美者のテロを恐れ、あるいはそれらが原因で今までの生活を追われた者達が、明日を迎えられる事だけを幸福に日々を過ごす場所。

 ――本来は。


「外に出ちゃダメよ。悪い負の契約者に攻めてくるかもしれないの」

「――正義はどうしちゃったの? 正輝様が悪い奴等をやっつけてくれるから、正義のナワバリは平和なんじゃないの!?」

「――政府の奴ら、余計なことばっかり!!」

「いつもそうだ! 正輝様に責任を押し付けて逃げるばっかりで!!」

「……どうして平和を嫌がる奴等の、見捨てて逃げるか無理やり罪を作って襲う為だけの、イカサマ人道ばっかりまかり通るんだ!!?」

「……また負の契約者や大地の賛美者、それに便乗する外道どもの、差別と暴力にさらされるんだ」

「法律は差別の基準に、裁きは暴力の免罪符に堕ちた……終わりだ。この世界はもう、欲望という悪魔に踏み躙られるだけなんだ」


 しかし、北郷正輝による仲裁派閥の推奨発言により、正義のナワバリの住民は家に閉じこもり、人っ子1人外に出てはいない。

 巡回の契約者と……。


「……まあ、当然と言えば当然か。成長だ発展だとか言っておきながら、やってきた事は所詮は差別と暴力なんだから」


 定期のサイボーグ義肢メンテ往診を行う、東城太助とその護衛以外は。


「――このような事、いつまで続くのでしょう? ……正輝様としては、変わるチャンスをモノにしたかった、精一杯の慈悲なのでしょうが」

「……君はどう思ってる?」

「――一条様の意思はわかります。ですがそれ以外の正輝様の否定など、最早差別と暴力の為の外道の所業としか思えません」

「――そうだね。僕達が信じるのは、正輝様だけで良い……権利が守ってくれる物は自分だけなんだ。それだけを主張する奴らなんて、信じる意味はないさ」

「――はい。我ら正義、秩序を守るという責任を全うするのみ」


 ――その日太助は、サイボーグ義肢装備者とその家族

……正義のナワバリでしか生きる事が出来ない者たちからの懇願に、頭を悩ませる事になる。


「――やだよ、ママと離れるだなんて」

「お願い、わかって――もし負の契約者が攻めてきたら、サイボーグ義肢装備者のママは真っ先に殺されちゃうの。だから……」

「……東城先生、あたしを契約者に、正義の戦士にして! ママをいじめる欲望を持った悪い奴等を、やっつける力をください!!」


「――東城先生、どうして正輝様は悪い奴等をやっつけてくれなくなっちゃったの?」

「怖いよ……怖くて眠れないよ」

「……東城先生、お願いします! どうか正輝様を説得して、元の正しき世界を示してください……どうかこの子たちに、安心して眠れる夜を!」

「もう正輝様しか、私達家族に明日をくれる人はいないんです――どうか、お願いします」



「――先生」

「……報告は僕がするよ。君は何も心配しなくていい」


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