第17話
「ヘヘヘッ、勇気側ノバケモノモ出テ来タカ」
「コリャ良イ。ココデブッ殺セバ、正負友好トカ言ウ悪魔ドモノ仲良シコヨシモ、ブチ壊シニ出来ル」
「大規模駆除ニハ、戦争ガ1番ダカラナ」
綾香、鷹久が駆けだそうとしたその時。
先ほどひばりが見たそれとは違う、3体のサイボーグがこちらに向かってきた。
――手首と肘を境とする様に、螺旋の様なエッジを取り付けられた腕と、カギ爪の様な手。
身体に、返り血をべったりと浴びた姿で。
「いい加減にしろよ! 第三次世界大戦が終わったばっかだって言うのに、なんでまだ血で血を洗うようなマネをするんだ!?」
「そうですよ! これじゃあの戦争を大罪と美徳達が終結させた意味がない!」
その光景を見た、鷹久と綾香が激高。
――それを受けたサイボーグ達は、電子的な笑い声を上げた。
『――貴様等ノボスガ終結サセタ? 違ウナ。貴様等ノボスガ、新タナ戦イノ始マリヲ告ゲタノダ。貴様等契約者トイウ悪魔タチノ危険性ヲ公言シタノダ!』
『貴様等トイウモンスターノ存在ガ現レタ以上、人間同士ガ諍イ、争ッテイル場合デハナイ――ダカラコソ、我々ハ戦ウノダ!』
『広大ナル大地ノ贄トナレ! バケモノ!!』
3体のサイボーグが、それぞれ打撃系格闘技の構えをとりはじめ――
腕が駆動音を上げ、ドリルの様に回転し始めた。
「――趣味悪い装備だなおい」
「そんな事より、はい」
鷹久が背のギターケース(擬装用)を開き、その中から2本の剣を綾香に投げ渡す。
綾香がその片刃の片手剣を鞘から抜き、構えをとった。
そして鷹久自身は、特殊液体金属性の籠手とレガースを着け、ぐっと踏み込み構えをとる。
「…………」
その後ろで、ひばりは拳銃を構え、援護の体勢と周囲の警戒。
『ギャアアアアアアアアアアッ!!』
――その緊張は、突如の断末魔に遮られた。
「なんだ!?」
「――あれ、まさか“凶雷獣”!?」
綾香、鷹久、ひばり達の目に飛び込んできた光景。
それは、義肢となっている手足をもぎ取られ、武装を破壊された3体のサイボーグの残骸と、黒い異形の存在。
身体を元素操作で全身に炭素硬化を施し、その上を更に高圧電流を纏った炭素でコーティングした、攻防一体の光一最強の能力。
『ナンダヨアレ!?』
『ソンナ事ヨリ、ヤルゾ! コッチノガ危険ソウダ!』
『チクショウガ!!』
――姿形は、どう見ても映画に出てくるエイリアンの様な、バケモノじみた物。
「撃て撃てーー!!」
スタジアム全域から、光一めがけて一斉射撃が行われる。
「……」
しかし、光一はかわす事もしない
肌どころか、その上を纏う装甲は炭素――ダイヤモンドの硬度を持ち、その上に高圧電流を纏わせてある。
銃弾など、装甲が弾くまでもなく――
「はあっ!」
光一は電磁力を使い、磁力で銃弾を弾き飛ばした。
『ナラ俺達ダ!』
『風穴空ケテヤル!』
『広大ナル大地ノ贄トナレ!!』
先ほど綾香たちと対峙していた、3体のサイボーグ。
光一に向けて飛びかかり、両腕をドリルの様に回転させ、襲いかかる。
「……」
光一が両掌を、まず2体に向け――
ピュンッ!
『!?』
『ガ!?』
発電能力と元素操作、その2つを応用し構築したレーザーを放つ。
『クタバレエッ!!』
溜めに時間がかかる隙をつき、残りの1体が腕を突き立て――
ボンッ!
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
高圧電流により、逆に義肢を破壊された。
「チッ……チクショウガ!!」
バヂっ!
「ギャッ!」
自爆の気配を見せたサイボーグに、光一は右手をかざして放電。
「さて……」
光一は薬の効き目が切れる前に――身体の炭素硬度を元に戻した。
――身体の元素を操作する場合激痛が走る為、この形態は薬の効き目が切れる前に解除せねば、一日寝たきりになってしまうのである。
「――くっそおっ」
周囲を見回すと、既に侵入したテロの殆どは、検挙されていた。
――所々で、手当てを受ける物や家族を殺され泣いている者が、ちらほらと見える。
「――ユウは?」
「呼んだか?」
「大変だったね」
「――お疲れ様、光一君」
「あっ、宇宙さんに首相も。無事でしたか」
「誰が警護してると思ってる?」
「更に俺が居るんだから、当たり前だよ」
「――本当に、やりきれないわ。私が決断した事だけに」
契約者社会の母。
――故に、それを否定する上での犠牲者に対して、首相は遺憾の思いで。
ヒュウウウウウウウッ……ズゥゥウウウウン!
「!?」
――その悲しみに浸る間もなく、追撃が。
「――今度はパワードスーツかよ。それも巨大サイズの」
「首相が居るだけに念入りだなおい」
ユウ達の目の前に落下して来たのは、明らかに10メートルは超すサイズの、超大型パワードスーツ。
それも、両手にパワードスーツ用マシンガン、肩にはキャノン砲が取り付けられた、重爆撃装備を――首相に照準を合わせる。
「手間かけられねえ。すぐ終わらせる」
「! 首相、こちらへ」
宇宙が首相を連れてはなれると、パワードスーツもそれを追う様に方向を変え――
『クタバレ! 悪魔を擁護する老が――なっ、なんだ!? ああっ、熱い!!』
今引き金を引こうとするその瞬間、不意に機体が揺れると同時に異常な暑さがコクピットに充満し……モニターが消えた。
「よし、うまくいったな」
その原因は、パワードスーツの腹部をつく破る、ユウの拳。
貫いた個所から一気に炎熱の放射を行い、内部の装置を焼き切ったためである。、
腕を引き抜くと、ユウは駆け上がりコクピットをこじ開け、刀を突き付け制圧した
「――人間業じゃないな。さすがは大罪」
「――嘘だろ!? あんなでかいパワードスーツが!?」
「――はー……やっぱり、大罪となると別格の強さなのかな?」
「――すごい。あんな人が、あと13人も」
「……はーっ」
「流石はユウさんだね」
「ああっ。あたしらでも手間かかりそうだよ、あのサイズは」
「うん。やっぱりユウさんはすごい」




