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第144話

政府直轄地、とある一軒家にて。


「――これはこれは、お待ちしてました」

「……失礼します」


1人の男が、黒服の男性に促され、居間に通される。

そこで待っていたのは……


「――具合はいかがですか? 首相」

「身体なら、月ちゃんに診て貰ったばかりだから、大丈夫よ」

「そうですか……じゃあこれ剥がしたら、メンテナンスルームへ行きましょうか。首相」

「ええ――お願いね、太助君」


太助と呼ばれた男は、顔に手を宛がい――ベリっと顔の皮をはがす。

2、30代と思わしきその顔が剥がれたその下からは、まだ10代の男性の顔――東城太助の顔があった。


「ごめんなさいね。それ、結構手間がかかるのに」

「そう思われるのでしたら、無理はしないでもらいたいですね。貴方が倒れたり、サイボーグ義肢装備者であるとバレでもしたら、契約者社会は崩壊の一途をたどる事になるんですから」

「――けれど、私が動かなければならない事態でもある。でしょう?」

「ええ。だから最強格は皆、貴方を信じている」


この家は政府直轄地における、井上弥生首相のサイボーグ義肢メンテナンスを秘密裏に行う場所として、事実上は太助の所有物件として扱われている家である

ただし、サイボーグ義肢が戦闘用として扱われている現状で、それが公にならない為に太助はここを訪れる際に、人工培養皮膚を使っての変奏を行った上で出向いている。


「それじゃあ、お願いね?」

「ええ」


右足の人工培養皮膚カバーを外し、機械義肢を露わにすると太助は持ち込んだカバンを開いて前回のカルテなどを取り出し、メンテナンス器具を取り出してメンテを始める。


「……随分と無理をされたようですね。前回よりも、痛んでいる部品が多い」

「――欲望の終焉を望む声がある。それが一体どういう意味なのかがわからない、と言う訳にはいかないのだけど?」

「――そう言う考えが少しでも人にあったら、こうはならなかったかも知れませんね。正義のナワバリの住民は皆、余所のナワバリの住人を信じてませんから」

「……政府に届いた抗議文の数、内容は聞いてるわ」


“政府までもが、北郷正輝に責任を押し付けて逃げる腹積もりか!?”

“平和を願う声を迷惑で一蹴して、死んでもない謝罪に誠意を感じないなら、もう破滅の一途をたどるしかないって何故わからない!?”

“正義のナワバリは人類最後の楽園だ! 楽園を踏み躙るな!!”


「……まさか北郷君のとった道が、ここまで強い力を持っていたか以上に、これほどまでの不安と不満が、私の知らない所で煮えたぎっていたなんて」

「――現実なんて所詮、人のやってきた事の結果にすぎませんよ。それに……」


作業の手を止めて、太助が自身のYシャツのボタンを外して、シャツをまくりあげる。

――かつて、反契約者思想者に刻まれた拷問の傷跡を露わにする為に


「力は受け入れるべき物であり、手に入れる物じゃない――手に入れる物にするから、何もかもが軽くなる。だから契約者の存在を認めない、正義のやり方を認めない、欲望ノ存在を認めない……“受け入れられない”と“受け入れない”の違いも曖昧なままに」

「――そう言えば、正義で最初に人の限界を謳ったのは、君だったわね?」

「――親って立場を認めなきゃ、子供の存在何て受け入れられない。相手を人とみなさなければ、命に意味があると思わない――受け入れようともしない物ばかりが増えて行く流れでしかないなら、なぜ人は今以上を求めるんでしょうね?」


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