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第143話

「わからない、位でいいんじゃない?」


場所は、憤怒の戦闘部隊詰所。

その中を夜叉が修哉を伴い、手の杖で地面を撫でるように動かしながら、歩いている。


「わからない位でいいって……」

「変わらなきゃいけないのは正義だけじゃないよ。正義が方針を検討するって云ったって、何もしなきゃ逆戻りだって十分あり得るんだから」

「そんなもん聞きたくもない! 一方的な決め付けであんな事する殺人鬼どもに……」

「そんな事言ったって無駄だと思うな。アンタも知ってるだろ? その殺人鬼どもしか信じられないって声は少なくないどころか、強くなりすぎてるってこと」

「それだよ、俺が一番信じられないのは!」


修哉が今一番気に入らない事柄。

それは、自分たちと同じ一般人からの正義を支持する声があり、しかもそれが多い事。


「なんであんなやり方を支持する声があるんだよ!?」

「そりゃ、今に至るまでに正義の方針と北郷正輝の存在が、この世界にはなくてはならない事が証明されたからとか。班契約者思想者や犯罪契約者の横暴さを目の当たりにして、力なんて持ちたくないって考えたからとか……実際の所はどうかはわからないけど、考えれば結構たくさん出てくるよ?」

「……あーくそっ! どいつもこいつも!!」

「とにかく、過ぎた事を攻めたって仕方ないでしょ? そうやってあんたがぐちぐち騒いでる間にも、もう正義の北郷は動いてるんだから」

「――?」

「えーっと……そろそろ、18号室って書かれた札がある筈なんだけど見える?」


夜叉に言われるままに、トある部屋に入り――そこに積まれた本を、夜叉は指さす。


「何これ?」

「本」

「いや、それはわかってるから」

「北郷正輝が政府の直轄地にある大学に依頼して、契約者社会を題材にして書いて貰った本だってさ」


修哉はまず1冊――“理性と欲望”という題名の本を手にとる。


「……こんなの考えられるんなら、なんであんな手段とるんだよ!?」

「今だから通用するって思ったからじゃない?」

「――ちっ!」

「とりあえず、後で読んで聞かせて貰うとして……じゃ、次行くよ」

「? ここに用があったんじゃないのか?」

「読書もそうだけど、まずあんたがどれだけやれるか見たいからね」



――所変わり、武道場。


「へぇっ……広くていい道場だな」

「そりゃあね。さて、ボスが剣を送ったって事は、剣の心得はあるって事だよね?

「ああっ、一応初段持ち」

「そうっ……じゃあ、早速構えてよ」


そう言って、夜叉が持っている杖――仕込杖の刃をのぞかせる。


「え?」

「まずはどれだけやれるかが知りたいから」

「おい、これ真剣だぞ!?」

「知ってる。大丈夫、ブレイカーは使わないから。まあ手になじませるつもりで来てよ」


修哉は躊躇しつつも、先ほど裕樹に貰ったばかりの刀を鞘から抜く。


「うっ……!」


刀の重さもさることながら、刃の輝きに怯えを見せる。


「――木刀に変える?」

「……そっ、そうだな。うん、ちょっといきなり刀は……」

「じゃあごめんけど、僕の分も取ってよ」

「ああっ、わかった」


修哉は壁に立てかけてある木刀を2本とり、一本を夜叉に手渡す。

まずは一振りし、手ごたえを感じた所で再度向き合う。


「……大丈夫なのか? 見えないのに」

「遠慮はいらないよ。僕だって系譜だから、アンタに後れを取る事はない」

「言ってくれるな?」


プライドに火がつき、修哉はきっと表情を引き締め、構える。

それに対し夜叉は、木刀を構えず直立不動の自然体で対峙する。


「……はっ!」


修哉は剣を横なぎにふるい、胴を狙う。


「……」

「なっ……!?」


その横なぎの一撃が突然下から打ち上げられ、その次の瞬間には修哉の喉元に夜叉の木刀の切っ先が突きつけられていた。


「――躊躇こそあったけど、良い打ちこみだったね」

「……何やられたのか、全然わからなかった」

「僕が系譜格だって事、忘れてない? ブレイカーなしでもこれ位は出来なきゃ、務まらないよ」

「…………」


唖然とするしかなかった。


「さて、と……次だけど、ブレイカーのレクチャーでいいかな?」

「え? ……あっ、ああ」

「で、どんな能力が欲しいかは決まってる?」

「うっ、うーん……」


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