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第131話

政府直轄区画。


「――ふぅっ」

「お疲れ様です」

「ははっ……貴方方こそ」


所は、今世の変化を齎した“仲裁派閥”党首の邸宅。

護衛を買って出た傲慢の傘下契約者の代表をリビングに招き、お茶を振る舞っている


「感謝します。私の様な若輩者では、なにぶん……」

「そこまでです――僕達の盟主は、貴方の踏み出した一歩を高く評価しておいでです。そして何より、北郷正輝に世を揺るがす発表をさせた事も、貴方の功績ですよ」

「……正直驚きを通り越して、逆に実感がわきませんが」

「そんな物ですよ……では、貴方は貴方の成すべき事に集中なさってください。岩崎賢二の名において、仲裁派閥の安全は保証いたしますので」

「ありがとうございます」



――その数分後


「……どういうつもりだよ一体?」

「どの事ですか?」


賢二達に宛がわれた客室内。


「今回の事だ。お前ら一体……」

「君にも相応の利益は提示してある筈でしょう? ――彼を守る事は、君達にとって最重要事項であるが、勇気も憤怒も今はそれどころではありません」

「確かにそうだがな、キナ臭さを感じずには……」

「ここで騒動を起こして困るのは君の方でしょう? 今の君は名目上、僕達の傀儡なのですから」

「――ちっ!」

「まあそういきり立たずに――ここで失敗して得をする人間は、1人としていない。そうでしょう? 光一君」


備え付けのソファーに腰掛け、ゆったりと背を預けながら――本来なら、そこに居る筈のない人物、光一に声を掛ける。


「それとも、今ここで騒ぎを起こして全てを台無しにしますか?」

「……わかったよ」


傲慢のナワバリでの大立ち回り以降――光一は、賢二の命で幽閉されていた。

当然武器もブレイカーも取り上げられ、ヘルオンアースとは別の個所でその身柄を拘束されていた中で――賢二から取引を持ちかけられた。


それは、今回の仲裁派閥の護衛。

魔剣カオスを使い、傲慢の手ごまとなったフリをしての同行――この前提が崩れる様な行動をしてはならない。


ナワバリの事も心配だったが、仲裁派閥に接触しコネクションを得つ可能性があるまたとない好機であるが故に、その要求を呑まざるを得なかった。


「――しかし、なんだって俺を?」

「君1人いれば、何人もぞろぞろと連れ歩く必要はありませんし、より確実ですからね」

「――巨人まで連れてきといて、よく言う」

「彼に何かあれば、もう正義の方針を否定する事は限りなく不可能になる――それ位はわからない訳ではないでしょう?」

「……否定はできないな」


実際の話、仲裁派閥が生まれた事で正義は考えを変える余地が生まれた。

それが潰されれば……


「本気で人は、欲望を斬り捨てるほかないでしょうね」

「――おいおい」

「では聞きますが、成長とはなんの為の物なのですか? 高度な文明を築いても、より強い力を手に入れても、より進歩した英知を学んでも――死ねばそれまでだと言うのに」


そこで賢二が、いつもは笑みを浮かべている眼を、きっと細める。


「――まあこれに関しては、世がこれをどう受け止めるかにかかってますので、一旦はやめておきましょうか」

「そりゃ俺達憤怒や勇気にとっては愚問だ」

「絶対に失敗をしない唯一の存在は、何もしない人間だけ」

「--?」

「欲望の否定は、結構簡単なんですよ? 何もしないが最善であるなら、欲望などいらない--叩き潰すが最善でも、欲望は不要になる。ならば、欲望が必要となる最善の答えは何か? ……それが出せるかどうかで、この先はわからなくなりますからね」


ドォォオオオンッ!


「--! 夜討朝駆けときましたか」

「--ちっ!」

「では先行、カオスを忘れずお願いしますね?」

「はいはい」

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