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第129話

北郷正輝の発表から、二週間が経過。


「――正義の方は、落ちついたみたいだな」

「前の暴走した上級系譜みたいに、北郷さんに逆らってまで、何て人が居なかったのが幸運でしたね……まさかとは思ってますけど」

「バカ言え、戦闘部隊も一緒になって反対してたんだぞ? 純粋に、北郷の人望ってもんだよ」

「……そう、ですね」


正義の方は説得が完了したらしく、大規模な政府への抗議や反対運動は途絶えていた。

その代わり、余所では反契約者思想のテロや犯罪契約者達の横暴は絶えず、秩序は悪化の一途をたどり、傲慢と正義の一騎打ち後の騒乱程ではないが、その再来も時間の問題とも言われていた。


「もうっ、どうして皆こんな事ばっかり……話し合いの余地は作って貰えたのに、それが活かせないだなんて」

「正にしろ負にしろ一般人にしろ、遺恨が増え過ぎたんだ。今更そんな事言われたって、信用できないし許せない――それが正義を支持する理由であり、反対する理由でもあるってのは、完全にジレンマだな」

「――でも北郷さんにだって、落とし所はある事がわかったんです。だったら希望がない訳じゃないのに」


正義と勇気の間を取り持つ――通称“仲裁派閥”は、政府議会ではまだまだ弱い。

筆頭になっているのはまだまだ若い議員ではあるが、北郷正輝が感銘を受けたと言う事もあり、無視はできない存在になりつつあった。


その代わり正義の戦闘部隊や住民達、そして反契約者思想者からは酷く嫌われており、現に何度か襲撃や暗殺対象とまで扱われていた。

それを裕樹は、忍者軍に指示を飛ばしてガードさせようとしたが……それも不要だった。


「それが気に入らないって奴は、多いらしいな」

「気に入る気に入らないが人が死ぬ理由になるって言うの、どうかと思うんですけど」

「そんなだから、欲望を斬り捨てた正しき世界、何て考えに賛同する奴があんなに多いとも言えるけどな――しかし」

「? どうかしたんですか? もしかしてその議員の方に、キナ臭い何かが……」

「いや、議員の方には問題ない。寧ろ……」


その派閥には、数人程傲慢と繋がりがある議員が数人混ざっていた。

更には、傲慢の傘下契約者まで、その護衛として出向させており――今までを考えれば、傲慢が明らかに矢面に立ち過ぎている。


「――大神、さんですか?」

「傲慢が支援してるってんなら、迂闊には手を出せないから、安心っちゃ安心だな――疑問は残ってるが、こっちはそれ所じゃないのが腹が立つ」

「疑おうにも、私達自身それ所じゃありませんからね」


そこへ割り込んできたのは、資料等を手にしたアキ。


「わんっ! わんっ!」

「きゅーんっ」

「わんっ!」


柴犬ベースの合成獣キメラ、ソルジャードッグの信長、秀吉、家康を伴って。


「御苦労さま、信長、秀吉、家康」

『わんっ!』


ひばりがしゃがんで、労いの言葉を掛けながら1匹ずつ頭を撫でる。

その間に、アキはバインダーを裕樹に手渡す。


「ま、その通りなんだよな……光一が行方不明で、憤怒の戦力は大幅に低下しちまってる」

「上級系譜損失の穴埋めは、簡単にはできませんからね」

「まあ、ひばりの思考錯誤ももう少しみたいだし、今は戦力を整えつつ、現状打破の案を出さねばならない訳だが……アキ、進捗は?」

「一応、クエイクの量産体制は、ある程度整いました。今は戦闘用、警備用、運搬作業がメインになってますが、やはり医療福祉と言ったジャンルにも対応はさせた方が」

「その辺りは“色欲”に技術提携を頼むしかないな」

「……私はあの人苦手なんですけど」

「――我慢してくれ」


そこで、そっとアキが呟くような声で――。


「――久遠さんの行方がつかめました」

「……そうか。異次元に飛ばされたんじゃ、俺達に探しようなんてねえが……場所は、傲慢のナワバリか?」

「……ええ。意趣返しは、うまく行きました」


意趣返し――傲慢のナワバリのシステムのクラッキング。

以前は足取りすらも掴めなかったが、掴んでしまえばこちらの物――と言わんばかりに、アキはシステムを掌握し、情報を幾つか抜きだしていた。


「その辺りは、流石憤怒自慢の技術班長だと褒めておくよ。さて……」

「待ってください。状況が、どうにもおかしな事になってまして……」

「おかしな?」

「ええ――それが」



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