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第125話

時をさかのぼり、傲慢と憤怒の戦争後。


今まで際立った動きもなく、正義の行動にも不干渉だった傲慢。

ここに来て、正義、勇気、憤怒――と、立て続けに攻撃を仕掛けた事は、世の不安を煽っていた。


“傲慢は、正義と勇気の対立を利用し、何かを目論んでいるのではないか”


そう論じられ始め、傲慢を糾弾する声も上がり始めていた。

しかし……


「――北郷の正義が絶対的な正しさを持つ事の証明が、今まさにだな」


そう斬り捨て、白夜は意にも介さなかった。


無論、その言葉に激怒する者たちが現れ、傲慢のナワバリで巻き起こる混乱、そして吹き荒れる非難や罵倒は、他に類を見ない程の暴動となって押し寄せる。

それを利用すべく、大地の賛美者を始めとする反契約者思想は暗躍し、犯罪契約者達も横暴の限りを尽くそうとする。

――のも、傲慢の精鋭たちに悉く

鎮圧され、知略謀略も先手を取られ撃退。


北郷正輝とは違い、大罪最強のその力だけではなく、権謀術中や知略にも優れているのが、傲慢の契約者、大神白夜。

傲慢におけるテロ活動は、逆に傲慢の力を世に知らしめる結果となっていた。


今や世は、正義と勇気の対立から一転し、傲慢の三つ巴と言われ始めていた。

ただそれでも、眠れる獅子――正義の方針に対する不干渉の姿勢、必要最低限の防衛以外を行う事はせず、混乱が大人しくなれば傲慢は静かに。


――混乱が傲慢に集中していたが故に、他は復帰には専念できたが、その反面どこも面白いとは微塵も思わなかった。

傲慢には、現状を打開する力があるにも関わらず、静観の姿勢を崩さない。


まるで白夜が、世界を掌の上に乗せているかの様な構図。

それを自覚出来ているならまだ良い方。


しかし、反契約者思想にとっては、美味しい獲物としか見ていない。

力が大きければ大きい程、それが崩れた時の反動――それは十分に目がくらむ程の物。


そして……


「――あの」

「ん? なにか?」

「私達、こんな事をしていて良いのでしょうか?」

「え?」

「正義だ勇気だって……結局私達、北郷正輝と一条宇宙に甘えてたんじゃないですか?」

「……まあ、言われてみれば」

「もっと他に考える事があるんじゃないですか? もっとこう……何と言うか」


――それは確実に、世界の風向きを変えていた。



「――大神め、やってくれる」


政府の中で、正義と勇気の対立――そのどちらかにつくかの議会に、疑問を持つ声が政府に中で生まれ始めている。

その事が新聞で取り上げられ、北郷正輝は舌打ちをする。


傲慢の投じた一石は、確実に世に波紋を齎している。

暴動だけではなく、政府の方針にさえも。


「……しかし、これは私達も無視はできませんよ?」

「わかっている――何らかの変化が生じると言うなら、我等も取る方針を考え直さねばならんだろう」


元々政府には、正義か勇気かの2択しかなかった。

そこへ傲慢の介入もあり――政府に変化の余地が生まれ始めていた。


「私達もまた、変わらざるを得ないと言う事ですか……ですが、よろしいのですか?」

「構わん……プライドなど、大輔を九十九にしてしまった時点で捨てた」

「いいえ、正輝様は正輝様です……それよりも」

「戦闘部隊は我が何とか説得する……それでだ、クラウス」

「はい、政府には私の方から連絡しておきましょう」

「……頼む」

「――正輝様、そして同胞たちに……神の加護があらん事を」


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