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第117話

「ふぅっ……!」


トランス


ブレイカーの機能を最大限に引き出す、系譜格以上の最大の切り札。

上級系譜以上は、トランス時にしか使えない最大奥義――正義の契約者、北郷正輝で言う“徹拳星砕”の様な技を、必ず持っている。


その代償として、トランスは使用者自身にも大きな負担となり、ブレイカーの機能も一時低下するリスクもある為、基本的に最強格だろうと一日一回が限度。


バヂバヂっ! ドォンッ!!


「はっ……はっ……くっ!」


がれきを電撃で吹き飛ばし、光一は埋もれていた場所からはいでてくる。

腹の傷は完全に開き、そこから大量に出血していた。


「――驚きましたね。まさか耐えきるだなんて。まあ、タダですまなかった分面目は保てた、と言うところでしょうか?」

「――あんた達の狙いは何なんだよ!?」

「さあ? ――まあ僕としては、来たるべき大罪と美徳の全面戦争……第4次世界大戦に備え、力を蓄えておきたいところですね」


大罪と美徳の全面戦争。

それは憤怒としても懸念はしていた――が。


「気が早いな――もう始まる事前提で動く気かよ?」

「君ならわかると思いますが、大罪と美徳の全面戦争は最早回避できません。避けられない事柄ならば、それをどう乗り切り生き抜くかに専念した方がいい」

「――的確だな」

「言っておきますが、僕だってなんとも思ってない訳ではありませんよ。ですが、血を流さない解決が嫌だと言うから、こうなっても仕方がないとしか言えないのでしょう?」


光一とて言い分は、理解はしていた。

現状で大罪と美徳の全面戦争は、決して避けられない事も。

現状では一般人ですらも、直に全面戦争を望む様になるだろう事も。


正義の方針は間違っている――しかしそれは、一体何を持って間違いとしているのか?

その答えも、光一にはわかっていた。


人に北郷正輝のとった方針を否定は、絶対に出来ない。

その否定する為の理由が人に全うできないから、北郷正輝の方針は否定も止める事も、その理由に中身がないから止められない。

全うできないと言う事は、肯定しているのと同義ではないかと。


成長とは何か

――それは今の最善以上の最善を手にする事であり、力を得る事も知を学ぶ事も、その為の手段でしかないのではないか?


限界とは何か

――それはどう足掻こうと今以上の最善が出せない、どうしようもならなくなる事……それは決して、訪れない物ではないのではないか?


正義は何故人が限界と評するのか

――それは、人は他人を殺す程度で全てが上手くいく……そう思い込んでいるからではないか?

――納得できないから、間違っているからその考えを根本から否定し、なかった事にすればいいと思っているからではないのか?


「――なあ賢二さん、主義思想に勝ち負けなんてあると思うか?」

「――? 何を言うかと思えば、そんな物あるわけないでしょう。どんな思想も主義も一長一短ある物ですから、一概にこれが絶対何てあり得ません。かといって、好き嫌いで選んでいい者でもありませんが」

「そうだろ? ――だから俺は、最初から正義の方針に対して、考える必要がないとか、勝つ必要があるなんて最初から思ってない」

「――興味深いですね。君は一体何を考えているのですか?」

「それは言えないな。少なくとも、叩き潰せば勝ちなんてブレイン失格な考えじゃあない」


光一は基本的に、憤怒のブレイン――考えるのが主な役目として、受け止めている。

そして、憤怒・勇気同盟においては、自分にしかそれは出来ない事も自覚している。


頭脳労働もさることながら――


「――さて」


目的の為に非情に徹する事も、自分にしか出来ない事を。


「済まねえが賢二さん――ちょっとばっか昂ぶってきたんで、色々と覚悟決めといてくださいよ?」


光一は“残虐”の契約者。

その特性故なのか、光一は血を見ると感情が昂り、歯止めが利かなくなる悪癖がある。


こういう時に彼を戒めるのは、同じ上級系譜のひばりの役目なのだが――


「ふふっ、ふふふっ……はははははははっ!!」


その彼女が居ない今、光一に歯止めを掛けられる物などいない

眼を見開き、口元を歪めた笑みを浮かべ――


「あーっはっはっはっはっはっはっは!!」


眼の前の獲物――岩崎賢二めがけ、跳びかかった。


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