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閑話 井上首相の傲慢訪問(5)

エレベーターを降りた先――あるのは、闇だった


「……大神君」

「ここに照明はありませんので、これを」


そう言って白夜がとりだしたのは、懐中電灯。

どうやらここは、思念の力を使える者達が収容される区域らしいと、辺りをつける。


「――それでもこんな所に収容されれば、1日と立たず発狂しそうだわ」

「上位格ならばこそですよ。先ほども言いましたが、傲慢に逆境や窮地を知らない者など必要ありません」

「……」


その地下区画は、元々上級系譜格――と言うより、思念の力を使いこなせる者が圧倒的に少ない事もあってか、そんなに大きく作られてはいなかった。

ただし、1つ1つの独房を隔てる壁から扉までが、雰囲気的に本当に部屋と呼ばれる様なスペースあるかどうかが疑わしい位、重厚に造られている。


そして――試しに白夜に開けさせた空の独房も、これまでと比較して随分と狭く、磔にするかのような拘束具が絡みついている、トイレ兼用となってる頑強な椅子が1つ置かれているだけ。

その頑強な椅子の後ろには、何に使うかわからないが機会が置かれている。


「……」


ヘルオンアース最下層――なのかどうかはわからない。

しかし、ここに九十九が収監されている事――あって話さねばならない事がある


「――それにしても」

「?」

「何を考えてるのかを聞かせて貰えない? ――君がヘルオンアースを教えようと思った訳を」


白夜は基本的に、自分の事を他人に話す事どころか、戦闘にしても組織にしても、彼は絶対に自分の全貌を明かす様な事をしない。

増して、恐怖故に全貌が隠され、隠されているが故に謎が謎を呼ぶ恐怖の監獄、ヘルオンアース――その実態を晒すなど、怪しいと思わない訳がなかった。


「――単純な興味ですよ」

「興味?」

「貴方が椎名九十九と何を話したいのか――聞くなと言うなら下がりますが」

「……議題は、“人間は本当に欲望を斬り捨てなければならないのか”。まずは理解し、そこから――いえ、人はもっと早く変わらなければならなかった」

「――変化、ですか」


表情こそ変わっていないが、呆れ――は混じってはなかった。

一応首相の意を汲んだのか、まあいいでしょうと一言呟き――1つの扉の前で立ち止まる。


「ここ?」

「はい――では」


ギィッ……と、重い扉が開く。


「……!」

「……元気かしら? 九十九君」


椅子に拘束され、身体にはあらゆる医療機器の電極や点滴のチューブなどがつけられ、足の先から頭部まで隙間もなく拘束ベルトで椅子にくくり付けられ、ぱっと見では容姿はわからない。

しかし――頭部にあるベルトの、故意的に作られた隙間が存在する個所から見える、強過ぎる意思を秘めた眼。

それは見覚えはあった。


「…………お久しぶりです、首相――こんな所で、どうされました?」

「……話をしに来たの」

「話? ――まだそのような事を仰るか? 人が真に望む平和とは、欲望を斬り捨てた正しき世界……それ以外を望んだ所で、迷惑なだけだというのに」

「その事で話に来たの――欲望を斬り捨てねば、本当に未来はないのか」

「あると何故言えます? ――人が望むのは“愛”と“平和”ではなく、“絶対”と“独占”。そして正義に求めるのは“徹底”と“勝利”だけ……必要なのは理解する事ではなく、正しく機能するかどうか――人として正しく機能せん者等死んで当然。誰もが普通に正しいと断じて行っていると言うのに、何故それを否定するのか?」



「…………ん?」


それを後ろで見ていた白夜は、ふと上を見上げる。

――そこでふむっと何かを考えるそぶりをし、ほっとくと決めた様に2人のやりとりを見据える。


「――欲望を斬り捨てた正しき世界……法も秩序も、力も正義も、それらが一体何のための物なのか--そんなこともわからないと言うなら、それ以外ないだろうな--まあ、弱者など何人死のうと知った事ではないが」




「うわっ!」


ドシャッ!


「いてて……なっ、なんだここ? --元の世界……なのかな?」

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