第109話
ユウは即座に、自身の最高速度で駆けだし、白夜と距離を詰め居合斬りを仕掛ける。
何をされたかがわからない上に、元々後手に回るのは危険な相手。
そして白夜が、自分を含めた最強格の技を再現できる以上、自分の最強をもっての攻撃――自分の土俵での勝負に持ち込む事が、現状での最善。
ドゴっ!
「――!?」
「――思い切りがいいな」
――居合斬りを仕掛けるその瞬間。
そこを狙ったかのように、北郷の拳打による白夜の拳が、刀に掛けた腕ごとユウの腹に叩き込まれていた。
「――基本動作を、狙って!?」
「バカが。私の眼を甘く見るな!」
叩き込んだ拳を振り抜き、そのまま宇宙の回し蹴りを繰り出し、脇腹に叩き込み――ユウがそれを堪え、足を咄嗟に抱え込み――地面に、カランと音をたてて鞘が落ちた。
「なら動けなくしてやるさ!」
「甘く見るな――そう言った筈だ」
抜き身となった打刀“焔群”で、振り上げる様に白夜めがけて斬りかかり、それを白夜は身体を捻って避ける。
その瞬間ユウは足払いをし、白夜のバランスを崩したのを白夜は地面に腕を突き、刀を斬り返して振り下ろしたのを、払われた足でユウの軸足を払い、そのままユウは倒れ込むようにして白夜に斬りかかり――。
その斬撃も、空いた腕での水鏡怜奈の受け流しで回避されるも、ユウの腕が煙をあげ、轟音を挙げてマグマを爆発させる。
その煽りを受けて2人は吹き飛ばされ、そのまま間合いを開け対峙する
「――ったく、ふざけた話だな……ここまで手の内隠しておきながら、大罪最強かよ」
「手を抜く事と制限をかける事は違う――買いかぶり過ぎだ。幾ら私と言えど、お前達相手に手を抜いて、勝てはせん」
「手段こそ隠しはしても、本気は出していた――そう言いたいのかよ?」
「誇示する力は最低限で良い。加減も出来んバカ力、余興にすぎんサディズム、縋りつく為の偽善――所詮は無駄な物だ」
空間を叩き割り、そこから大剣を取り出し、それを頭上に構え――。
荒川公人の“超重隕石”の要領で身体を回転させ、鳴神王牙の“金剛爆斧”を、朝霧裕樹の斬撃で昇華させた上で、その勢いを組み合わせた回転斬り。
それに一条宇宙の身のこなしを加えて、白夜が突進。
後手に回ったユウは“灼熱の剛腕”を展開し――
タンっ!
「――!」
入るも、白夜が突如勢いを殺してまで何かのステップを踏み、重心が崩れその場に尻もちをつき……。
それを見計らっての白夜の蹴りを、ユウは受け止める。
「“進化を齎す眼”――私はこの眼をそう呼んでいる」
白夜はユウを見下ろしながら、そう告げる。
「北郷の拳打を手に入れた所で、北郷にはなれない。お前の剣戟を手に入れた所で、お前になれない。この眼を手に入れた所で、私になれない様に」
そしてゆっくりと足を離し、一歩下がる。
「“人は善にも悪にもなれない、なれるのは自分だけ”この言葉の意味が、この眼を“進化を齎す眼”と呼ぶ理由」
大剣をかき消し――そのまま見下す姿勢を崩さないまま問いかけ続ける。。
「それがわからんなら、変化など齎せない。無論北郷も一条も、これに対する答えは持っている--お前はどうだ?」
「……ユウさん、あたしとシンクロしてください」
そう問いかけられた後に、ひばりがそう言いだした。
「……何か掴んだか?」
「……はい」
「わかった」




