第104話
久しぶりの更新
うーん……どうにも思うように進まない。
「流石に、私と並び立つ者の1人だけはあるな」
「こんな所で終われるかよ」
「終わりなど常に唐突な物だ――北郷の振るった拳で死んだ者が、必要な犠牲のみだった様にな」
「世が聞いたら大激怒だぞそれ」
「気に入らない程度で呼吸も出来ん脆弱の分際で出しゃばるな、とでも言わせて貰う。そもそも本来、北郷に対する否定権は私の物である筈だがな」
白夜がそう言い放ち、ユウめがけて今度は双剣を手に、一条宇宙を連想させる動きで距離を詰め、迎え討つユウの下段からの振り上げに、合わせる様に上段からの振り下ろしが衝突し、剣が火花を散らす
「それも――と言いたい所だが、ああそうだな。結果から見れば、お前が北郷に手出ししなかったのは正しい、そう言わざるを得ないだろうよ。だが納得ってのは、強いる物じゃねえだろ」
「ぬかせ、権利とは義務だろう。やりたくないからやらない、納得出来ないから意味がない――そんな物ではない筈だがな」
今度は剣を握ったまま、両名共に拳を撃ちつけ合い――北郷正輝の拳打を使用している分、白夜が勝り、ユウは咄嗟に蹴りを放つもこちらも宇宙の蹴りを使われ、打ち負ける。
その打ち負けた勢いを逆に利用して身体を回転させ、その勢いのままに突きを繰り出し、白夜も打ち勝った勢いを利用して身体を回転させ、同じく突きを繰り出し――2人の突きだした剣の切っ先が、寸分狂わずぶつかるも今度はユウが打ち勝ち、その突きは白夜の剣を弾いて顔の頬をかする。
「……やはり、動きのトレースでは勝てんな」
「……こんな事も出来んのかよ、コイツの眼は」
自分の動きに完全に合わせ、ほぼ同じ相対角度での対応。
自分の動きが把握されているかのような感覚と、ほぼ同じ力をぶつけ合ったかのような手ごたえを、ユウは確かに感じつつ――。
「――ひばり」
「……まだです。まだ、後もう少しだけ――決定的な物が、まだ」
「そうか」
背にしがみつくひばりに問いかけ――。
その次の瞬間、刃がぶつかり合う音が鳴り響く。
「精々あがく事だな。人の限界など、簡単に訪れる物だぞ」
「ご忠告感謝する。だが俺達はちょっとやそっとじゃ諦め……」
「確かに諦観も限界とは言えるが、それでここまでの事態になるのか?」
「――ならねえな」
「人の限界――それは絶対を得る事。正確には、得たと勘違いする事で訪れる。そして最も簡単にそう思い込む手段、それは“免罪符”を得る事だ」
白夜が後ろへ飛びのき、双剣を手放し大剣を手にし、“超重隕石”の要領で身体ごと大剣を大きく振り回し――その勢いのままにユウめがけて、大剣を投げつける。
ユウがその大剣を回避し、その間に白夜がユウの死角になる角度から、宇宙の身のこなしで距離を詰め、正輝の拳打を繰り出し、ユウは咄嗟にガードし受け止める。
「――免罪符と来たか」
「あり得ない話でもなかろう? 大地の賛美者しかり、犯罪契約者しかりな。“許される”で理性は決して機能はしない」
「そんなのあっていい訳ないよ!」
「そのない物を平然と使っているのが今だろう。だから――」
白夜が眼をくわっと見開き、ほんの少しだけ身体をずらし――
「――!?」
その次の瞬間、ユウはバランスを失って地面に膝をつき――
白夜の蹴りがユウの顔面にめり込み、その勢いのまま地面にたたきつけられ、白夜に顔面を踏み抑えられている格好となる。
「たかが気に入らないと言う理由で、こんな悪趣味な事をしなければ納得できない」
「うっ、ぐうっ……!」
「北郷が今の方針を取ったのも、傘下が狂気の軍勢に変貌したのも、決して理由がない訳ではない」
背にしがみついていたひばりが、ユウの六連の1本を抜いて、白夜に斬りかかり――その刃は、指でつまむかのように受け止められる。
「――それでもあたしは、笑顔を守りたいんです」
「ならまずは、自分の持つ物の意味を見直すんだな。同じ万能型とでも思っているだろうが、私とお前ではそういう部分が違う――1人で立てん者が、1人で歩くなど出来るか」
「1人で……」
「――いい加減にしろこのサド野郎!!」
ユウが怒鳴ると同時に、ユウを起点に爆発が生じ――白夜は難なく回避し、ひばりもユウに抱きかかえられ、事無きを得る。
「悪趣味っつー位なら態々実演すんな!!」
「それはすまなかったな。確かに、私とて良い気分はしなかった」
「ひばりも無茶すんな。心配だから……」
「……」
「ひばり?」
「え? はっ、はい! 大丈夫です。あたしは」




