一発短編 温泉での一時
長らくお待たせしました。
GAUさんにも、レフェルさんにも、ATKさんにも、さすらいの旅人さんにも。
一発ネタではありますが、楽しんでいただけたらと思います。
「……ふぅっ」
「結構気持ちのいい物だな。露天風呂って」
憤怒の契約者、朝霧裕樹。
勇気の契約者、一条宇宙。
「……全くだ」
誠実の契約者、御影凪
3人はそれぞれの友人や部下と共に、とある温泉に骨休めに来ていた。
『だっ、出せ--っ!!』
ふと見上げた先にある、巨大なウツボカズラ。
その中から聞こえてくる声――久遠光一の怒声を、極力聞かない様にして。
「助けないんですか?」
「……どうやって?」
天城修哉の声に、ユウは苦虫をかみつぶしたような顔で問いかける。
何せ、ウツボカズラが配置されてるのは女湯の上で、しかも中には――
『こーいっちゃん。おねーさんたちと裸のお付き合いだよん♪』
『ほーら、観念しちゃいなさい。ダーリン』
『よっ、よせ!! やめろーーーっ!!』
色欲の契約者、花柳月と、クリスティーナ・ウェストロードが入ってるだけに、迂闊に手を出す訳にも行かなかった。
「……あれじゃ落ちつかないよ」
「……文句言うなよ。じゃあ助けられるか?」
「無理です」
「……場所が場所、状況が状況だけにな」
「てか、嫌なら代われよこの野郎!!」
男湯と女湯を隔てる壁に張り付きつつ、鬼灯連がどなり声をあげた。
「やめなよ錬、間違いなく地獄のフルコースフラグだから」
「うるさい! 慈愛に友情の美人2人が今この先で冷てえッ!」
その怒鳴り声で危険を察知したのか、突如塀が凍りついた。
「ぐっ……」
「そこまでにしておけ。見苦しい上に、子供の教育に悪い」
「きゅうきゅうっ!」
「ぐるるるっ!」
「あははっ、あぷっ、ちょっ、やめ」
そんな錬の姿に、凪が隣で自身の応龍と、青龍の春清といった、思念獣達と遊んでいる東郷龍清に目を向け、抗議する。
「うっ……」
流石に子供を引き合いに出されては、引き下がるしかなくなり錬も渋々湯につかる。
――一方その頃。
「全く。下品な――」
塀を凍らせ、ペタペタと歩を進め湯につかる、黛蓮華。
「怜奈ちゃんの肌って、ホント雪のように白くてきれいだね~。ボクより胸も大きいし、羨ましいな~」
「そっ、そうですか? ……ワタクシは、アスカさんの様な格好よさに憧れますけど」
慈愛の契約者、水鏡怜奈。
友情の契約者、アスカ・ホークアイ。
「――流石に、頂点は女としても頂点なのかしらね?」
怜奈の落ちついた雰囲気の美貌、アスカの活発な雰囲気とメリハリのあるスタイルであり、2人して出る所はすごく出てて引っ込む所は引っ込んでいる。
佐伯紫苑とて自身に自信がない訳ではなかったが、2人の前ではどうにもかすむように思えてならなかった。
「まあまあ紫苑さん。相手が相手だけに、比べたってしょうがないですよ」
「――そうね。それより江藤さんは、参加しなくていいの? あれ」
そう言って紫苑は、頭上の巨大ウツボカズラを指さし、江藤愛奈に問いかける。
「確かに面白そうですけど、今日はやめときます」
「……今日はって」
「――色々と師事した方が面白そうですし」
「……」
その先はなんとなく聞かない方がいいと、直感的に紫苑は悟った。
「あーあ……やっぱり羨ましいな。怜奈さんもアスカさんも、2人とも美人で背が高くて」
そんな中で、支倉ひばりは怜奈とアスカを見て、少々落ち込んでいた。
「気持ちはわかるけど、ひばりちゃんはまだ良いよ。私はいつも怜奈さんと一緒だから」
その隣で、同じような悩みを持つ雨宮つぐみが、はあっとため息をついた。
「……つぐみもまだ良い方だと思う」
さらにその隣で、黛蓮華が自身の胸とひばり、つぐみの胸を見比べ、どんよりとした雰囲気を纏う。
「蓮華さんは、背も高くてカッコ良い女性じゃないですか」
「そうですよ。蓮華さんみたいな大人の魅力が欲しいって、いつも思ってるんですよ」
「そうは言うがな……小さくても女とみられるお前達と違って、私はあまり女としては見られないんだ。女物の服も、正直似合いそうもないしな」
――3人ははあっとため息をついた。
――その更に一方で
「良かったの? もっとゆっくりしなくて」
「いんや、良いよ別に」
レクリエーションルームのベンチで、ドライヤーを手に吉田鷹久が、夏目綾香の風呂上がりの髪を整えていた。
「どう過ごすかは、人それぞれですからね」
そんな2人のやりとりを見ない様に、マッサージチェアに座りながらゲームを楽しむ来島アキ。
『頼むから出してくれーーっ!!』
「なあタカーっ、タカもやっぱ今の光一みたいになってみたいかー?」
「遠慮しとく。あそこまで行くと、流石に羨ましいとも思えないよ」
「……やれやれ」
「所で来島さんは、それ何のゲームやってるの?」
「ロボットものです。クエイクの武装のヒントになるかもしれませんから」




