第102話
温泉話は書いてますが……正直、あまりすすみません。
なので、先に書き上がったこちらを。
出来あがりはまだ先になりそうです。
ひばりがユウの首に手を回し、ぐっと力を込めるのを確認し、ユウは“焔群”をベルトに引っ掛け、“六連”を2本抜いた。
白夜の模倣は、オリジナル程の性能は出せない――ならばどの道、自身の土俵である剣戟戦に持ち込めば勝てない相手ではない。
「まあ、妥当なところだな」
そう言って、氷で出来た鉄仮面の様な表情を崩さないまま、白夜も空間を叩き割り、そこから愛用している大剣を抜きだす。
「――とか言いつつ、かよ」
「別に、相手に合わせて戦う事も選択肢の1つだ――そもそも、今の私に死角はない」
大剣を頭上で円を描くように振るい、その勢いのままハンマー投げの様に身体を回転させ、大剣の重量と自身のスピードで勢いをつける。
怠惰の契約者、荒川公人の“超重隕石”
その勢いを殺さないまま踏み込み、ユウと距離を詰め大剣を振りかぶる。
希望の契約者、鳴神王牙の“金剛爆斧”
巨漢2人の技を組み合わせ、乾坤一擲となした一撃はユウに当たりこそしなかったものの、その斬撃は地面を“抉る”でも“壊す”でもなく、周囲にヒビ1つ入れず斬った。
憤怒の契約者、朝霧裕樹の斬撃でより洗練された斬撃として。
「そこっ!」
そこから生じた隙を逃さず、ユウは“焔群”を抜き剣を突きだす。
流れる水を表現する、舞う様な動き。
――“慈愛”の契約者、水鏡怜奈の受け流し。
そこから、風の様な俊敏な動きを組み合わせ回し蹴りを繰り出し、ユウの背にしがみつくひばりに命中させる。
勇気の契約者、一条宇宙の蹴り。
「きゃあっ!」
「くっ……!」
回し蹴りで生じた隙を見逃す訳にはいかず、ユウは剣を手放し白夜の腕を掴み、顔面めがけて拳を突き出す。
ビキビキビキッ!!
「……無駄だ」
顔面に叩き込まれた拳は、白夜を微動だにさせず、寧ろ彼を中心とした地面が陥没。
暴食の契約者、明治我夢の防御力。
「だろうな! ――“冥獄”」
叩き込んだ拳の二の腕から、急激にマグマが噴き出し爆発。
それには流石に耐えきれず、白夜は噴出に巻き込まれる様に吹き飛ばされた。
「――大丈夫か?」
「……平気、とまでは言えませんが、それでも大丈夫です」
「そうか……まさかあの巨漢どものまでってのは、流石に驚いたな」
「あたしも正直、ユウさんや慈愛の怜奈さんの動きならまだしも、そこまでとは思いませんでした」
模倣は所詮は模倣であり、自分の能力以上の物は再現は出来ない。
しかし白夜は、宇宙の動きは主に最高速度と制動力を、北郷の拳打はパワーと耐久性等、そう言った要素を自分に合わせ調整し、不足している要素は別の要素を宛がった上での再現としている。
元々全ての能力に秀でた万能型である白夜ではあるが、系譜格ならともかく同じ大罪美徳格の物となると、どうやろうと劣る部分も無理も生じてしまう。
「――荒川さんの“超重隕石”も、パワーと体重がない分、武器の重量とスピードと、それらを駆使する身体の使い方で再現してるって感じだった。それでも破壊力という点ではオリジナル程出せない分、鳴神さんの“金剛爆斧”とユウさんの斬撃を組み合わせ、最強の斬撃に昇華させて……それでもやっぱり、どこかが違ってた。この違いは」
ぶつぶつと何かを至高の海に沈んでるひばりに、ユウは何も言わなかった。
万能型という点では、器用貧乏と評している物のひばりも同じ――つまり、同じ万能型だからこそ、ひばりが今ぶつかっている壁を超える為の要素を白夜が持っていても、何ら不思議はない。
ひばりが求めている物――それは。
「――?」
と考えた所で、ふと違和感を感じた。
何か天地がひっくりかえるような感覚を覚え、周囲を見回し――地面の先、空に当たる部分に地面がある奇妙な光景。
そして――
「“三千世界崩し”」
空間の割れ目に剣を突きさし――それを引き抜こうとする白夜の姿があり、引き抜かれたと同時に、落下する感覚と頭上に迫りくる先ほどまで地面だった岩盤。
「ちぃっ!」
右腕をひばりに当たらないよう配慮しつつ、炎上させぐつぐつと煮え繰り返るマグマで包み、巨大なマグマの腕を形成して頭上に迫りくる岩盤めがけ、突き出す。
マグマの拳は岩盤を貫き、貫かれた個所を中心にドロドロと溶け――巨大な岩盤は、マグマにとりこまれた。
「余所見をするな」
「――!」
ふと見た先に、自身と距離を詰め――握り締めた右拳を振り上げる白夜の姿があった。
正義の契約者、北郷正輝の拳打。
白夜の拳がユウの顔面にめり込み、ユウがふっ飛ばされて行く――それと同時に、白夜の胸元が右肩から左脇腹にかけて、ユウの居合の一閃で斬り裂かれた。
「……ってえ」
ひばりを咄嗟に抱きかかえて庇い、ユウはよろよろと立ちあがり――頭上から振り下ろされる大剣の一撃を受け流し、一閃
その一撃は白夜に当たる事はなく、軽く後ろへ飛ぶ程度でかわされ、その勢いを利用した回し蹴りがユウの腹に叩き込まれ、ひばりを下敷きに背中から倒れ込んだ。
「……立て。この程度では怪獣ごっこだろう」
「ざっけんな! ガキの遊び扱いしてんじゃねえ!!」
「ならば情けない姿を晒すな。その荷物の覚悟を無駄にしたくなければな」
「――やっぱ気付いてんのかよ」




