閑話 正義派閥、美徳3人の憂鬱(4)
「――さて、どうしてそう思うのかを聞かせて貰えまいか?」
太助から出されたコーヒーを一口飲み、王牙が
一応、大型機材なども運ばれてくるこの場所は、3mの巨漢が普通に生活するにも不自由は何もない為、王牙もゆったりとお茶をする余裕はあった。
「希望としては、気になる?」
「ああっ。許せる事と許せない事があるのは、致し方ない――特に東城先生においては、無暗に切り捨てるわけにはいかん。だからこそ、ワシも納得したいのだ」
「許したい――そう言えば納得する人間なんて、一体どこにいる?」
王牙に物怖じする事無く、太助は平然とそう言い返す。
その時の太助の目を見た王牙は、ぞくりと背に悪寒が走った。
「許さないじゃない。許せないんだよ、そんな事誰も認めないから。だから僕達は望まれる形であり抑える形として、そう言う形になったんじゃないか」
「……」
王牙どころか、凪も昴も黙っていた。
――太助は時折、美徳ですら怯ませる様な、まるで飲みこまれる闇を思わせる冷たい瞳をするような時がある。
それに呑まれたと言う訳ではないが、昴も凪も王牙も、この時の太助に反論する事は、非常に難しかった
「なんで他人の存在を認められも許せもしないのに、成長なんて求めるんだよ? ――そんなで成長を促した所で、受け入れられない物増やして、都合悪くなったら迷惑だって斬り捨てる。そんな勝手な理由で不幸を量産する、最悪なシステムにしかならないのに」
「――成程、確かにそれでは成長など望んではいかんだろうが、しかし……」
「今その先を言う資格は、誰一人としてないよ――それと“他人の都合も動機もクソ喰らえ”な物として正論突きつけるんなら、“人なんて放っておいても勝手に生まれてくる”、そう言ってからにしてくれない?」
情を理由に正論突きつけて、一方的に踏み躙ろうとする奴って、反吐が出るんだよ
そう吐き捨てる様に言う太助に、王牙は何も言えなかった。
――そんな中で昴が、コーヒーを一口飲み、カップを置く
「成長してはならない――それが君の考える限界かい?」
「――ちょっと違うけど、まあそんな所かな? ……正直な話、血を望むのに血を流すなって、かぐや姫じゃあるまいし。それに、九十九の方がまだ物を考えてる状態で僕たちが間違ってるって、それじゃ一体どうすれば良いんだよ?」
「理と情、比率を間違えたその先にすぎない、か……本当に悪いのは、間違うことではなく間違いに気づかない事なのかもしれないね。参考になったよ、ありがとう」
そう言って昴が立ち、それに続くよう王牙と凪が立つ
「色々と考える事が出来たな」
「うむっ」
「――参考になったなら何より。じゃ、頑張って」




