閑話 正義派閥、美徳3人の憂鬱(3)
「それで僕の所へ、ですか?」
場所は、東城太助の研究室。
ケガの治癒も終え、いざ研究再開――という所へ、昴達は訪問。
「正義派閥の意見も欲しくなったからね」
「強硬派閥には、他の美徳にも否定的な者が多い以上、話が通じる東城先生が適任だ」
「ワシも同感だ」
正直研究しようと意気込んでた所への訪問なので、あまりいい気はしなかった。
しかし、他ならぬ美徳の面々からの頼みとなれば、絶対に無碍にはできない太助は二つ返事で了承。
「一応公式の場ではない以上、普通の言葉で良いかな?」
「構わないよ、君は僕達と同い年だからね。ただ――これは話し合いという事を意識し、理解し合う事を前提としたまえ」
「ん、わかった――じゃあまずは、そちらの成長と限界の意味を聞かせてもらえない?」
「良いよ。ありきたりではあるけど、基本的にはまず目標を定め、そこへ向かい邁進する事かな?」
「無論、その際に生じる障害、現実にどう対応するかも重要だ」
「――運命とは常に唐突な物。だが運命に翻弄されるばかりでは、成長など出来んからな」
太助は成程ね、と言わんばかりに頷きながら――ハァッとため息をつく。
「? 何故ため息だ?」」
「いや、別にあんた達に呆れてる訳じゃない」
「君には君の思う所があったと言う事かい? ……一先ずはその事はいい。それで君は、何を持って人を限界と評しているのかな?」
「――成長自体が悪い事だからだ」
吐き捨てる様な言い方に、3人は少々怪訝に思うも――昴が2人に目配せをし、メガネに指を当て位置を直す。
「成長自体が、かい?」
「ええ。あんた達の言う事を間違いだなんて思わないけど、人に成長なんて出来ないしする必要もない――いや、あっちゃいけないと、僕達はそう思ってますから」
「何故出来もしなければ、する必要があってはならないと思っている?」
「――その前に、僕も聞かせて貰って良いかな? あんた達は僕の……いや、僕達の言い分を聞いて、どう思った?」
じろり、と値踏みする様な眼を3人に向ける。
別に疑っている訳ではない物の、やはり答え次第で
「別にどうも思わないよ。それが君達の考えだと言うなら、僕に否定する理由はない」
「……確かにな。どんな事だろうと、良かれ悪しかれ両面においての意味は必ず存在する。そこを考えずして、本当に受け入れたとは言えない」
「まだお前達の真意を聞いた訳ではないからな。ワシの意見の言うには、材料が足らなさすぎる以上、今は迂闊な事を言う訳にもいくまい」
「そう……じゃあちょっとコーヒー淹れてくるけど、飲む? 砂糖はないけど」
「じゃあ貰おうか」
「うむっ」
「たまには良いか」




