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第11話

憤怒のナワバリは、恐々とした雰囲気に包まれていた。


反契約者宗教団体“大地の賛美者”による、上級系譜暗殺テロの失敗。

それを呼び水として、新たなテロが起こるかもしれないと言う危機感に怯えつつ。


「――でも江藤さんは、どうしてあそこに?」

「またお礼言いそびれたから、今度こそはね。それにバケモノ呼ばわりされたの気にして、距離とろうとするんじゃないかって思ったから」

「だからって、非常警戒態勢時に出歩くなよ」

「うん、何度か警察に呼びとめられちゃって、その度に身分証明する羽目になったよ」


契約者社会の生活は、携帯電話なくして機能しない。


契約者のナワバリと言うシステムの都合上、住人の身分証明は必要となる。

故に携帯電話に、所有者の身分証明を提示するシステムが組み込まれており、契約者社会ではそれにより買い物や施設の出入りなど、一種の行動制限を行っていた。


と言うのも、契約者となった事で好き放題やりたがる者が多過ぎるため、その制限として構築したシステム。

――なのだが、未成年者の非行防止や、犯罪防止としても重宝されている。


更に言えば、生体データと一致しなければ機能しないため、他人のデータを使う事は出来ない。


「……もしかして、迷惑だった?」

「迷惑じゃないけど、ここの前の事で世に不安が充満してる状況だから、そう言う事はやめてもらえないかな?」

「この前の事って――テロの?」

「そう。知ってるだろうけど、俺達“憤怒”は今、対の美徳“勇気”と同盟結んでるんだ。正負友好の一歩としてね――多分、大地の賛美者が今俺達上級系譜狙ったのも、その辺りが起因してる筈」

「? どういう事?」


愛奈の疑問に、光一は咳払いをして説明。


「今の世は、契約者の恩恵で成り立つ世界です――これはわかるよね?」

「うん。契約者の開発した技術のおかげで、世の文化は数百年先取りしてるって言われてる位だもん」

「そう――で、その頂点に位置してるのが、4年前に第三次世界大戦を終結させた14人――俗に言う、大罪と美徳」

「あたしと光一君は、その1人の憤怒の契約者、朝霧裕樹さんの部下だよ」

「どんな人かな? 2人のリーダーみたいな人なら、会ってみたいかも」

「その内な? ――話に戻るけど、その14人は今や世界の秩序の要で、たった1人欠けただけで世は乱世を迎えるってほどの力と影響力を持ってる……だから」

「だから、その側近の久遠さんと支倉さんが、狙われたって事?」


愛奈の言葉に、光一が頷く。


「俺達殺せば、憤怒の組織に大きな影響及ぼすからね。更に正負友好が絡んでる今なら、勇気に何らかの工作を仕掛けて煽れば、立派な亀裂の出来上がり。勇気と憤怒の全面戦争もあり得た」

「――大罪と美徳、その内の2つの全面戦争でも、世の機能は停止するからね。小競り合い程度でも大騒ぎだもん」

「以上の観点から、上手くいけば大罪の1つに大打撃を与える事が出来る――てなところが目的だろうな」


そうでなくても、メチャクチャになってる訳だけど――

と、光一は付け加える。


「今回の視察だって、主に防犯関連の調査が目的。この事態だから、多分客なんてそんなにいやしない」

「――ごめん、迷惑かけちゃったね。こんなときに尋ねるなんて、非常識だった」

「そんな事ないよ。ね、光一君?」

「――次回からは、事前に連絡してくれない? 事態がどう転ぶかわからない以上、一般人の女の子が一人で出歩くのは危ないし、用があるなら迎えに行くから」

「――うん、ありがと」


時は過ぎ、愛玩用ビオトープ。

一般開放を目的としている為、研究棟を除く合成獣キメラの飼育場は、動物園の様な造りとなっている。


合成獣キメラとのふれあい広場も設置されており、そこでは愛玩用の合成獣キメラと遊ぶ子供たちの姿が見れる場所。

――なのだが、今は非常警戒体制ともあり、流石に子供は1人たりとも姿は見えない。


「――以上が報告になります。それで、警備を増やして欲しいのですが」

「うーん……確かに必要だっていうのは良くわかる。でも現状じゃあな」

「そこを何とか。この通り――」


「わあっ、可愛い」

「可愛いなあ」


「――人気の呼べる新種の開発が成功したんです」


光一が責任者と、警備システムの打ち合わせをしている横

愛奈とひばりは、ウサギをベースにした合成獣キメラに、夢中になっていた。


「確かに、何かあれば損害になるのも事実か――わかった。でも現状で出せるのは警備ロボ2、3台程度だけど」

「――それでお願いします。ただ」

「わかってる。追加が入り次第、すぐ回すよ」

「ありがとうございます」

「後、監視カメラの配置の配置だけど――」


仕事はほどなく終了し、光一達は一路技術班の研究棟――の前に。


「ごめんね、送って貰っちゃって」

「いや、良いよ。楽しんで貰えたならそれで何より」

「それじゃ、またね」


愛奈を家に送った後に、技術班研究棟へ


「――アキ、クエイクの進捗は?」

「順調です。後2週間もあれば、完成しますよ」

「――もう少し早く、出来ないかな?」

「事態は理解してますが、雑になっては意味がありません。こちらもゲームする暇も惜しんで作業を続けてますので」

「そっか……すまん」



――所変わって


「――一体どういうつもりだ、ティナ?」

「……蓮華、私は怜奈の意思を尊重したい」

「だから負の契約者どもと手を結べと!? 怜奈様にあんな汚らわしい奴等と慣れ合えとでもいうのか!?」

「元は私達は仲間だったのよ? それを取り戻そうとする事が悪いとは、私には思えない」

「ティナ!!」

「蓮華――怜奈が大切なのはよくわかる。でもだからと、意思を無視していい理由にならないわ」

「っ! ……怜奈様の」

「ただ、勝手に勇気と接触した事は謝るわ……ごめんなさい」

「――いや、私も……お前はお前なりに、怜奈様を案じていると言う事はよくわかった、ティナ。その意思に免じて、今回は私が折れるとする」

「ありがとう」

「では勇気と憤怒に送る友好表明の準備をはじめよう――忙しくなるな」



「――つぐみ」

「ティナさん。あの……」

「大丈夫、きっとうまく行くから――私達を信じて、待ってなさい」

「……はい」



――その次の日の朝


「ティナ!? どこに行ったの、ティナ!?」

「ティナさん! 返事をしてください!!」

「怜奈様! つぐみ様! こちらが、ティナ様の部屋に!!」

「これは……何故こんな物が!? 何かの間違いに決まっています!」

「そうだよ! ティナさんが、ティナさんがこんな事する訳がない!」


「ティナ……一体どこへ行った? ――出て来てくれ。私が悪かったから……こんな物嘘だと……テロ組織と繋がり内部分裂を狙っていた等、嘘だと言ってくれ……」



「光一君!」

「? どうした、深紅?」

「それが――」

「何!? ――ちっ、やってくれたな。すぐ出るぞ、場所は!?」


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