表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/171

第100話

朝霧裕樹、大神白夜両名がぶつかり、2日が経過。


「――はっ……はっ……」

「――流石に続けると堪えるな」


流石に疲労は隠せず、2人は膝をつきつつもそれぞれ剣を握りしめ、互いを見据え合う。

――2日間続けてユウの背にしがみつくひばりも、最強格2人の戦いという極限以上の危機的な立場にもかかわらず、躊躇や迷いはなかった。


「――何が目的かは知らんが、よくここまでできるな?」

「私は大罪として成すべき事をしているまでだ。文句を言われる筋合いはない」

「その成すべき事に、俺と一条の同盟破棄が含まれるってのかよ?」

「含まれる。ガキの我儘で今の均衡を崩されてはかなわん」

「――ガキの我儘とは随分ないい方だな」

「――落ちついてください。ユウさん」


ユウのブレイカー――“憤怒”の稼働音が、少しばかり強くなった。

その背にしがみつくひばりもそれを察知し、宥める様にしがみつく腕で撫でて宥める。


「お前が――と言うよりも、ナワバリが一条の意を汲んでいるとは到底思えん」

「それは仕方ないじゃないですか。あんな事に――」

「だから何だ? 人が望む正しさなど、“間違いを犯した者に許す物等何もない”、“正しさの前では全てが無意味でなければならない”――その2つにすぎんだろう。その時お前達は一条を裏切り、攻め入った。だから正義はそれを行使しただけの話だ」

「――そんな一方的な正しさがある訳!」

「あった筈だ」


――そう言われたひばりの脳裏に浮かんだのは、白夜襲撃前の修哉達とのやりとり。


「人の考える正しさ“突きつける為の正しさ”に、困難に立ち向かう意思――勇気などある訳がない。本来なら勇気いちじょう正義ほんごうに敗れた時点で、気付くべき事だ」

「――って事は、あの映像を流したのも」

「私だ。一条の意を汲めるかどうかを確かめるつもりでな」

「あー……」


――そう言われ、ユウも流石に納得せざるを得なかった。

答えを明かした以上、白夜も次を許す程甘くはない。


「わかったなら悪い事は云わん、今すぐ手を引け。お前も一条の方針を無駄にし、秩序を壊す事は本意でないだろう?」

「――だったら説得するさ。困難であることは承知の上だ」

「そうです。欲望を斬り捨てれば、確かに争いはなくなるかもしれない――でもそんなのって生きてる事にならないし、成長だって……」

「成長など出来んさ。確かに欲望は人にとってなければならん物であり、成長を促す要素である事も事実」


――だがそれはあくまで、理性で制御できる範疇での話だ。


「理性のない欲望、我儘で成長など出来ん。そう言う人間程、“間違いとは他人の物”――そう思いこみ、道理を捻じ曲げて使おうとする。犯罪契約者も大地の賛美者も一般人バカどもも、そう言う点では皆同じだ」

「でも人には可能性があります! 確かに修哉君たちは、正しさの使い方を間違えてたかもしれませんが、だからって可能性を奪うなんてそんなの間違ってます!」

「お前の悲しみはその程度の物か、“悲愴”」

「――!」

「美徳自体が、“慈愛”と“友情”が地に堕ち、“誠実”と“希望”は選択肢を縛られ、“勇気”は力と意味を失い、“正義”が守護者ではなく殲滅者でなければならない――正義以外の理性が悉くボロボロになり果てていると言うのに、それを省みもせず悠長なことを言っていれば、悲劇等起こって当たり前だ」

「――そりゃ確かに勉強不足だったな!!」


ユウが右腕を振り上げ、ぐらぐらと煮え繰り返る膨大なマグマを圧縮し、構えを取る。

白夜もそれを見て、右腕に“空間破壊”を展開し、構えを取り――互いに抜き打ちの体勢に入る。


「契約者社会は、ブレイカーの恩恵で成り立つだけの社会じゃない。俺達大罪、そして美徳の比率――欲望と理性の均衡なくして成り立たない世界。だから俺達は、余計な物が余計な力を持ち過ぎたこの世界を変え、失ってはならなかった意味を取り戻す」

「ならばまずは我儘の矯正法でも考える事だな。」

「そうさせてもらうか――お前をぶっ倒した後にな!!」


火山が噴火する様な轟音が響き、マグマが撃ちだされる。

それを迎え討つかのように、白夜が拳を突き出し空間が砕け――砕けた空間に、マグマがぶつかった。


流石に離れると感覚が追いつかないです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ