短編 ジレンマと諦観
応募作作成――のさなかに、ちょっと書きたくなった太助とアキの話です。
なんか、GAUさんのキャラと内のキャラって絡め易くて――
太助とアキって、同じ優れた技術者である半面、中身は正反対。
感情がないのに対し、色々とジレンマを抱える
だから、この2人を絡めた話って、作ると結構色々と考えてしまうんです。
――応募作の更新があるので、しばらくこの短編更新をメインにしようかな?
詠みたい組み合わせがあれば、感想とともに書いていただければと思います。
「1つ、聞いてもよろしいですか?」
「ん?」
「――貴方は何故、医者になったのですか?」
来島アキと東城太助。
2人で会い、何気なく――技術者として、意見を交わし合う。
そんな中で、ふとアキが気になった事――
太助がなぜ医者になったか。
「――許す為だよ」
「許す為--ですか?」
「僕もね、最初は復讐してやるつもりだったよ――僕から両親を奪った挙句、僕に傷を刻んだ奴等をね。けれど――」
――大丈夫。もうすぐだ……もうすぐ、平和は来るんだ。
だから頼む……今は、未来を見てくれ。
お前が人を許せる世界を、仲間たちと一緒に創って見せる――だから。
「――別に悪いことした訳でもないのに、必死に懇願する正輝様を見て……その時は水に流す事にして、僕は医者を目指す事にしたんだ。未来を創ろうとする正輝様の手伝いと言えば、これしかない――って思ってね」
「そうですか」
「で、サイボーグ義肢を開発して……感謝された時は、すごくうれしかったよ。これが未来を創るってことなんだって――所詮は無駄なことだったけどね」
「件のサイボーグテロですね。あの時は随分と叩かれた様ですが……」
「それどころか、“ありがとう”って言ってくれた子供が――
“次に会ったのが墓だった”
――そう言い放つと、太助はくっくっくと押し殺すような笑いを浮かべ……
最後には押し殺すのをやめた様に笑い――そして、狂ったように大笑いを始めた。
「――僕がやった事って、何か間違ってたかな?」
「私に言える事は何も間違ってなければ、貴方は何も悪くはないと言う事だけです」
「じゃあ正義がやってる事はどう?」
「間違ってはいないですが、まだ性急すぎると――」
「……誰も許す事なんかできやしないし、破滅させる事しか願わなくても? ――他人に迷惑な意思なんかいらない。ただ正しく生きることだけ考えてればいい……そう願っていてもかな?」
「――人を見捨てたくても出来ない、許そうとしても許せなくさせられた、今の思想自体が罪悪感になる……貴方はジレンマばかりですね」
「そうだね――きっと僕が君に……来島アキに、改めて惹かれる理由って、君は僕が辿り着きたい所であって、辿り着いてはいけない所だからかもね」
――それを聞いたアキは、呆れた様なため息をつき。
「――私さえもジレンマにしますか。とことん難儀な方ですね」
「違いない――でも、それが本来人間があるべき姿なんじゃないかな? 罪悪感なんてちょっとの免罪符の要素さえあれば、簡単に消しされるんだから」
「――くだらない話ですね」
「ああ、くだらないよ――そんなくだらない話が普通にあるから、僕は今欲望を斬り捨てる事を望むんだ」
「――どうでもいいです」
「うん、それでこそだよ――僕が改めて好きになった君らしい言葉だ」
「――貴方も、変わってますね」
「変わってるんじゃない。壊れてるんだ」




