第95話
光線の影響が抜けたのか、漸く身体がそれなりに動く様になったユウ。
マグマの攻撃を2発も受け、更には頭に受けたと言うのに平然としている白夜。
――そんな中で白夜が空間を叩き割り、上着を取りだして素肌に直接羽織る。
「――お前自身はどう考えてんだ?」
「井上首相の恩義がある以上黙ってはいるが、私は半端な意思がはびこる世も統べる世も許す気はない」
「あんな傍若無人な冷血鉄仮面野郎でも、あの人を立てる気はあるのかよ」
「ホンット意外過ぎるわね。言ってる事は正論かもしれないけど、何様のつもりなのかって位見下した不遜な態度を崩さないから」
「錬に姉さん、声が大きいよ! こっちに狙いがついたらどうするのさ!?」
「――言われてんぞ?」
「構わん、自覚はある――まあそれよりも、一条にしても北郷にしても、くだらん理由や半端な意思で行動しているのなら、殺すつもりだった。無論お前もな」
「――さらりと言うなお前は」
流石にカチンと来たのか、ユウの表情は引きつっていた。
その後ろから、ひばりが表情を引き締め、ユウの前に出る。
「――あの」
「なんだ?」
「貴方は、知ってるんですか? ――正義がなぜああいう方針を取る様になったのか」
「知っている」
「なら教えてください。あたし達は正義が何故ああなったのか、知る必要があるんです」
白夜はひばりの表情を見据え――目線を合わせる為に膝をつく。
「――何故知る必要がある?」
「一条さんもあたし達も、やりたいのは復讐じゃありません。あの方法じゃなくても、秩序を維持できる方法を探したいんです」
ひばりの言葉を聞き――少しだけ修哉達の方に目線を向け、改めてひばりを見据える。
「――先ほどのやりとりを見る限りでは、その必要はなさそうだがな」
「あれは――」
「どうせ拳を振り上げた解決しか望まないなら、正義のやり方が最善だろう。自分の願いが自分に向いた位で騒ぎ過ぎだ」
「そんな解決を望む人ばかりではありません! 中には……」
「大地の賛美者、犯罪契約者――挙げて行けばきりがない。自分の願いに殺されかけたことを、正義のせいにしているだけだ」
吐き捨てる様に言う白夜に、ひばりもきっと見据える。
――どこまで行こうと彼とは相いれない
それがわかるからこそ、退けない物がある以上は。
「少なくとも、あたしもあたしの仲間も――あたしが尊敬するユウさんに一条さんも、そんな願いは持ってません!」
「一条も朝霧もそうだとは認めているが――“悲愴”。お前のその願いは一体何の為の、誰の為の願いだ?」
「え――?」
「自分の意思で動く者と、何かに突き動かされている者の目は違う――お前のその目は、後者の眼だ。ジレンマを抱えつつも、自分の意思を貫こうとする一条や北郷とは、似ても似つかない」
――ひばりの背に、悪寒が走った。
と同時に、無意識に一歩後ろに下がる。
「――見透かされる事を恐れたか」
「え? ……! 違います、あたしは……!」
その先はユウに抱きかかえられ、告げる事は出来なかった。
「試練のつもりかよ?」
「言った筈だがな。私は半端な意思を認めるつもりはないと」
「ああ、そうだったな。ひばり――は立てそうにないな」
そう呟き、ユウはひばりをひょいと背負う形に――おんぶの形を取った。
「ちょっ、ユウさん!?」
「どうせ立てないだろ? なら黙ってしがみついてろ」
「うぅっ……恥ずかしいですよ」
「大丈夫、見た目的に問題はない。それより、振り落されるなよ」
「……わかりました。あと、ちっちゃくありませんからね!」
「――そこ忘れないのな?」
――さて、とユウは考える
ひばりがこの有様では、どうやって修哉達を巻き込まずに戦った物か――
「――場所を変えるか?」
「――いいのかよ?」
「ここからは事情が違う。邪魔がいては興ざめだ」
「……ようやく、解放されるのか? ――助かった」
「――寿命が縮まるかと思ったわ」
「……だからやめようって言ったんだよ。早く逃げ……? どうしたの、修哉?」
「……ふぅっ……ふぅっ……」
和人が目を向けた先には、頭を押さえうずくまる修哉。
ぶるぶると体を震わせ、滝のような汗をふきだしながら
「おい修哉、どうしたんだよ?」
「修哉君? すごい汗よ?」
「――わからない。すごい何かがいくつも、頭に無理やり入り込んで来て、頭に何かを刻み込むような……」
「――ユウさん、あれってまさか……!」
「――ああ。間違いない、超感覚の思念だ。俺達の戦いのショックで目覚めたみたいだ」
「――ほおっ。意外な素質があったか」




