第1話
始まりは、第三次世界大戦。
その最中造られた、人の感情を経由し限界を超える為の演算装置、ブレイカー。
ブレイカーと契約し、人としての限界を超えた力を手に入れた存在、契約者。
頂点に位置するブレイカー、大罪シリーズ、美徳シリーズのブレイカーと契約した、最強の14人の子供たちにより、第三次世界大戦は終結した。
時は、第三次世界大戦終結から4年後。
「うん、そうそう。上手だよ」
「ありがと、ひばりお姉ちゃん」
とある山奥の民家。
その台所で、まだ幼稚園位の少女と、小学生高学年程度の少女が、料理を作っていた。
「あっ、ユウ兄ちゃん!」
「いつもすまないな、ひばり」
「気にしなくていいよ、ユウさん。裕香ちゃんまだ小さいし、面倒見れる人がいないんだから」
ひばりと呼ばれた少女に、苦笑しながら頭を下げる少年、朝霧裕樹。
彼の家は代々続く鍛冶屋で、父母が第三次世界大戦でなくなり、生き残った血筋が彼と妹の裕香、そして祖父しかいなくなってしまったが故に、後を継ぐための鍛冶修行に勤しむ少年。
「まあ小さいよな、あいかわらず」
「いきなり現れてポンポンするのやめてよ! それにちっちゃくないよ! あたしが言ったのは、裕香ちゃんの事」
そのひばりの後ろにいつの間にか現れ、ひばりをからかい頭をポンポンする貧弱な体躯の少年、久遠光一。
「はいはい、そこまでにしろ。縦横極端コンビ」
「「変なコンビ名つけるな!(つけないで!)」」
そんな彼らは、第三次世界大戦からの付き合いの、仲良しトリオ。
「で、どうしたんだ光一?」
「技術班のアキから、例の運搬用ロボット“クエイク”開発費の追加申請」
「ああっ、あれ? アキちゃんも頑張ってるなあ」
「俺の方でやりくりして、資金のめどは立たせた。後はユウの署名さえあれば」
「ん、わかった。えーっと……」
であり、上司部下の関係でもある
大罪の1つ“憤怒”の契約者、朝霧裕樹が率いる、契約者社会の頂点の組織においての。
「あっ、ごめんね。光一君任せにして」
「良いの良いの。ひばりはユウの家事手伝いと言う、裕香ちゃんの為の仕事があるだろ」
「……面目ない」
その大罪に最も近い存在であり、大罪のブレイカーを模して造られた、系譜のブレイカーを使用する契約者。
憤怒の上級系譜、“残虐”の契約者、久遠光一
憤怒の上級系譜、“悲愴”の契約者、支倉ひばり。
彼と彼女は、世の頂点に位置する組織の、ナンバー2、3に位置している。
「よし、これでいいか?」
「ああっ。じゃあすぐに取り掛かるよ。んじゃ――深紅、情報集まった? そっか、わかった。じゃあ一時間後辺りに……はいはい、今日はご馳走するよ」
――所変わって。
「なあタカー。暇だよー」
「だったら仕事やって。こんなにあるんだから暇は……」
「やだよー、めんどくさい」
彼らは勇気の上級系譜、活気の契約者、夏目綾香
そして勇気の上級系譜、鋭気の契約者、吉田鷹久。
「あのさ、僕達も今や立場ある人間なんだから」
「わかってるけどさー、花の十代を仕事で費やすのやだよー」
「――はいはい。ちょっと待ってて、これが終わったらゲームしようよ」
「んー……じゃああたしもやる」
かちゃっ!
「ふうっ……」
「おっ、宇宙兄じゃん。やっほー」
「お疲れ様です、宇宙さん」
「ああ、ご苦労さん」
勇気の契約者、一条宇宙
疲れた様子の苦々しい顔を隠そうともせず――
「――出撃だ。準備しろ」
「……また北郷さんから?」
「この前の、負の契約者による虐殺事件のことでな」
「そりゃ、確かにあたしも腹が立つよ――でも、世を憂いてのこととはいえ、負の契約者を皆殺しにだなんて、あたし嫌だよ」
「俺だって嫌だ……でも今アイツと敵対しても、世の不安をあおるだけなんだ」
宇宙はギリっと拳を握りしめ、歯を食いしばる。
「――なあなあ、宇宙兄にタカー。あたし達さ、憤怒と同盟とか考えないか?」
「はっ?」
「だって第三次世界大戦じゃ、ユウ達も仲間だったじゃん。なのにどうして、仲たがいしなきゃならないのさ!?」
「――それが通じないのが今の俺たちなんだ」
「やめようよ綾香……宇宙さんだって、辛いんだから」
「うっ……ごめん宇宙兄。あたし、そんなつもりじゃ」
「いや、良いんだ。俺も……一体何やってんだって思う時あるから」
「――では、すぐに準備します。綾香」
「あっ、うん」
「光一君、大変や!」
「ん? どうかした?」
「勇気の勢力が、こっちに向かってるて」
「――わかった。悪い、すぐに内部のかく乱を」
「了解や」
「――もしもしユウ、斥候から連絡だ。勇気がこっちに向かってるって」
『……またか。わかった、すぐに迎撃態勢を整えてくれ。俺もすぐに向かう』
「はあああああああああああああああっ!」
ガギイッ!
「でやああああああああああああああっ!」
ガシイッ!
「来いよ宇宙ぁっ!!」
「行くぞユウっ!!」
宇宙の籠手を着けた拳と、ユウの刀がぶつかり火花を散らす。
地面は風の刃に抉られ、マグマによって焼かれ、無残な有様と化していた。
「おらああああっ!!」
「うおおおおおっ!!
ユウと宇宙が駆けだし、刀と拳がぶつかると同時にユウが身をかがめ、押し切ろうとする。
宇宙が後ろに大きく跳びあがり、ユウもその勢いのまま追撃。
ガギィっ!
追撃でユウの振るった刀に宇宙は籠手の正拳突きをぶつけ、2人は距離をとる。
その次の瞬間、ユウは六連をすべて抜き両腕をマグマで包み始める
宇宙も風を両手に集中させ、構えをとる。
「“迦具土ィッ!!”」
「“風龍”」
刀を牙とした溶岩竜と、風の竜がぶつかる
周囲に暴風、マグマが散らばり……やがて、2匹の竜は四散した。
「はぁっ……はぁっ……」
「はっ……はっ……今日は此処までだ」
憤怒の契約者、朝霧裕樹
勇気の契約者、一条宇宙
契約者で正と負の勇者と呼ばれる両者の戦い。