お散歩凛ちゃんと黄金丸
凛ちゃんは小学6年生!休日は朝から愛犬黄金丸の散歩!そこで出会った悪いお兄さん!さぁどうなる凛ちゃん!
「ふふふ~ん♪ 今日もいい天気だね、黄金丸!」
小学6年生の次原凛は、上機嫌でリードを握りしめていた。
彼女の隣を歩くのは、愛犬の黄金丸。
名前は勇ましいけれど、つぶらな瞳がチャームポイントのゴールデンレトリバーだ。
大好きな姉が名付けた、大好きな愛犬。
自分が生まれたときに我が家へやってきた、ずっと一緒の友達。
尻尾をプロペラのように回しながら、凛の歩幅に合わせて楽しそうに歩いている。
いつもの公園、いつもの帰り道。
今日の夕飯は何かな、なんて凛が考え事をしていた、その時だった。
「ワンッ! ガルルッ!」
突然、黄金丸がリードを強く引いた。
「えっ、黄金丸!?」
凛が驚いて顔を上げると、そこには見知らぬお兄さんが立っていた。
黒いパーカーを着て、スマホを見ながら歩いてくるお兄さんだ。
なんてこったい!
散歩中、知らないお兄さんを黄金丸が噛んでしまった!
「ダ、ダメッ……! ……まって!」
凛の制止も虚しく、飛び上がった黄金丸の口がお兄さんの腕のあたりを……。
ガブッ!!
「うわあっ!?」
お兄さんが素っ頓狂な叫び声を上げた!
時が止まったような静寂。
そして、お兄さんの足元には、見事な着地を遂げ何かを吐き捨てるように唸る黄金丸の姿が……。
(う、うそ……噛んだ……!?)
凛の顔からサーッと血の気が引いていく。
黄金丸はすぐにこちらに向き直り「へへっ」という顔をしているけれど、事態は深刻だ。
「あ、あわわ……どうしょう……」
心臓が早鐘を打つ。
怒られるかな? 警察呼ばれちゃうかな?
それとも「治療費100万円!」とか言われたらどうしよう!?
凛の頭の中は大パニック。
謝ったら許してくれるかなぁ……?
お兄さんに促され、すぐそばのベンチへと移動した凛。
お兄さんは深くため息をつくと、ゆっくりと凛の顔を覗き込んだ。
「お嬢ちゃん……わかってるよね……こういう時……この子がどうなるか……?」
凛の肩がビクッと跳ね上がる。
「は、はい……あの……どう……って……?」
お兄さんは、残酷な事実を淡々と告げた。
「保健所。……もう君は、この子に会えないかもしれないんだよ……?」
その言葉は、凛にとって死刑宣告のようなものだった。
「……ッ!!」
「もう会えない」その言葉が凛の心に重くのしかかる。
犬の寿命は自分よりも短い、いずれ黄金丸と別れなければいけない日は必ずくる。
だが……それが……こんなに急に来るなんて思いもしない……!
凛はガバッと頭を下げた。
恥ずかしさも、何もかも、すべてかなぐり捨てて叫ぶ。
「やっ……! いやです! お願いします! 許してください!!」
「黄金丸を連れて行かないで! 何でもしますから、お願いします!!」
涙目で震える凛を見て、お兄さんは満足そうに頷いた。
「なんでも……うん……そうだね、その気持ちが大事なんだ……! お兄さんの言う事を聞く……そうすれば……示談にしてあげるよ……!」
「……ジダン……?」
凛は聞き慣れない言葉にきょとんとしたが、すがるように叫んだ。
「お願いします! 黄金丸を連れて行かないでください!」
「……グフフ……じゃあ……」
お兄さんの太い腕が、凛のワンピースに手をかけようと迫る……!
凛は何が起きるのか、何をされるのかも分からず……ただ、自分が我慢すれば黄金丸が許されると思い……目を瞑り、身を固くした……。
……スカッ。
予想していた衝撃は来なかった。お兄さんの腕は空を切ったのだ。
いや……そうではない。
「…………?」
凛がギュッと目を閉じ耐えているその先……そこには信じられない光景があった。
目の前に突き出されたお兄さんの腕。
彼の腕は、肘から先が黄金丸の最初の噛みつきによって寸断され、無くなっていたのだ。
千切れ飛んだ腕はベンチの下で、真っ赤な血に染まりピクピクと蠢いていたッ!
「あ、あれ……おかしいな……小学生のおっぱいを……いま、まさに鷲掴みにしようと……」
「あ、あれ……あの子どこいった……?」
お兄さんは、まだ気づかない。
自分の腕がないことにも、視界が歪んでいることにも。
だらん……。
濡れたような音と共に、お兄さんの眼球が頭蓋骨から垂れ下がり、土の上に落ちたッ!
黄金丸の二撃目!
爪による神速の一撃が、顔面を切り裂いたのだッ!
「グルルルルッ……!!」
黄金丸は、地獄の番犬のような殺気を放ち、凛の前に立ちふさがっている。
(……? あれ? ……おかしいな……? お兄さん……何か言いかけてたような……?)
疑問に思った凛が目を開け、呆然とするお兄さんの姿を目に映す。
そんなお兄さんに気づいた凛は心配そうな顔をして、お兄さんの肩を叩いた。
「……あの……お兄さん……大丈夫ですか……? その……なんでもって……その……続き……なんでしたか……?」
トントン。
その無邪気な問いかけに、お兄さんが「うあ…?う…え…うお…?」と、謎の反応をする。
その時!
後ろから黄金丸の肉球が凛の足元をぽすぽすと叩いたッ!
「……え? 黄金丸……? なに?」
その温もりを感じ、凛が後ろを向いた、その刹那!
ドォォォォォンッ!!
黄金丸の体が弾丸のように飛び出し、お兄さんの首と体を、永遠の別れに導いたッ!!
ザンッ!!
吹き荒れる鮮血! 真っ赤なシャワー!
公園に降り注ぐ赤い血の雨ッ!
「わっ!? え!? なに!?」
「グルァッ!!」
黄金丸は走り出す! 凛ちゃんを引きずって!
後ろを振り返ることもなく! 全速力で家路へと急ぐ!
背後で崩れ落ちる薄汚い肉塊など、もう知ったことではない!
凛ちゃんは無事帰宅するだろうッ!
キッチンから漂うのは、最高に食欲をそそる香り。
今日の晩飯はカレーだ!
さよならお兄さん!
さよなら児童性犯罪者!
二度と出てくるな!




