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悪が現れました

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/11/29

 町にアナウンスが響き渡る。


『悪が現れました』


 人々はざわめく。

 こんな平和で正しい人々しか住まない町に悪が現れるなんて。


 町にアナウンスが響き渡る。


『悪が現れました』


 人々は喜ぶ。

 なにせ、この平和で正しい人々しか住まないこの町では。


『皆様、直ちに悪の討伐をお願いします』


 ありとあらゆる暴力が禁止されているから。


 人々が走る。

 年齢問わずに。

 男女問わずに。

 人種問わずに。

 悪を討伐するため。



 この日、私は運が悪かった。

 なにせ、悪が現れた場所から遠くも近くもない場所に居たのだ。


 近ければすぐに辿り着く。

 遠ければすぐに諦めがつく。


 だけど、どちらでもない私は全速力で走っていた。

 間に合え、間に合えと悪に向かって。


 この間は指を折ってやった。

 その前は髪を引っ張ってやった。

 さらにその前は骨を折ってやった。


 今日は悪に何をしてやろう。

 どんなことをしてやろう。

 そんな事を考えながら走ったのに私は間に合わなかった。


「ちくしょう」


 辿り着いたときには悪はもう死んでいた。

 見るも無残な姿だ。

 間に合った人々が晴れやかな顔で歩いていく。

 間に合わなかった人々は肩を落として歩き去る。


 そして私はため息をつきながら罪状を読む。

 人殺しか。

 それも何件も。


 この町では定期的に『悪』が檻から解放される。

 そして、その瞬間にアナウンスが響く。

 悪が現れました、と。


 悪は生かしておいてもろくなことにならない。

 だからこそ正義の人々は悪を殺すのだ。


「あーあ」


 ため息を重ねる。


「またお預けか」


 そう呟いて日常へ戻る。

 この平和で正しい人々しか住まない町の一員として。

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