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黒騎士と姫とミノタウロス農場1




「たく、ハンスのやつ、親バカすぎるだろ」

「ぴゃ♥」

「おお! ベベ。君もそう思うか」


 ハンスに散々ちょっかいをかけられ出てきた俺は、そう言いながらベベの前でガラガラを振った。

 するとベベは「ぴゅっ♥ぴゃーー♥」と楽しそうに笑いながら足をバタバタさせた。

 そうか、ガラガラが気に入ったのか、よかったな。


「あはは。お父さんちょっとそういうところがあるんですよね。実は数日前町の男の子にもそんな事をして、隣の店のマレのお姉さんにも怒られました」

「やっぱり。いつかそうなると思ったよ」


 ハンスの奴はやり過ぎなんだよ。


「それで、そんなお父さんを一人おいて来てもいいのか」


 俺は今ハンナに案内され、領地の外れにあるミノタウロス農場へ向かう途中だった。一緒に行こうとしつこくしがみつくハンスを一人店に残して。


「大丈夫です! お父さんまで来てしまったらお店を見る人がなくなりますし! それに、こうやって少しずつ離れる練習をしないといつまで立っても今のままですから! お父さんも娘離れしないと!」

「そ、そうか」


 ハンナには計画があったんだな。

 そういうことだ、ハンス。今回のことをきっかけに、反省というものをやってくれ。




***



 そんなこんなでハンナとやってきたミノタウロス農場だが……。


「ウワアアアアーーーーッ!!!!!!! 誰かあいつを捕まえてくれ!!!!!!!」


 何か騒がしい。

 どうやらミノタウロス数匹が農場から脱走したようだ。


「危ない!! どいて!!! お客さん!!!!」


 あのミノタウロスの奴、もしかしてこっちに走ってきてる!?


「ムオオオオオオーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

「きゃあああーーーーッ!!!!」

「ふ、ふぇええええええええーーーー!!!!!」


 ミノタウロスが威嚇するような鳴き声をあげ、こちらに向かって突進してきた。

 遅れて事態を把握したハンナが悲鳴を上げ、ベベが驚いて泣き始めた。ガラガラのおかげでやっと気分が良くなったのに! ちくしょう!!

 ベベがうっすらと光始めた。同時にヒリヒリし始める手を感じながら、俺は急いでベベに聖石を当てた。

 すると透明だった聖石に金色の聖力が集まり、それと同時に痛みが治った。

 だが、おさまったのは、聖力の放出による痛みだけで、ベベの泣き声も、ハンナの恐怖も全く治る事はなかった。

 俺は両手で俺の袖を掴んでいるハンナを庇うように前に出ながら、ため息をついた。


「はぁ。まったく」


 こんな小さな子供たちを怖がらせるなんて。

 本当、たかが獣のくせに余計なことをしてくれる。

 おかげで穏やかな雰囲気が台無しだ。この報いどうしてくれよう。


 あんな農業用家畜。指一本でチョーチョイノチョイだけど、今の俺は魔王軍四天王の一人、黒騎士ではなく、魔王軍に所属しているだけの下級魔族。そんなことをすると目立ってしまう。なので、あれを処断する方法について何かと考えなければならない。

 武力でなく、他の手段を使うというのであれば……仕方ない。ちょっともったいないけどそれを使うか。


「イケッ! 俺の魔道具発明品(OMH) 222号!!」


 俺は掛け声とともに丸いボールをポOモン投げで投げた。

 緩やかなカーブを描きながら飛んでいたボールがミノタウロスの角に当たった。するとパカッ! という音とともにボールが割れ、中からネバネバしたメOモンのような液体が飛び出し、ミノタウロスの顔を覆った。


「ーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!」


 ミノタウロスは前足を上げ暴れたが、そんなことをしたところで顔についたメOモンみたいなものが落ちることはない。


「ミヨーーーーン」


 OMH 222号は妙な鳴き声を出しながら、ミノタウロスの頭の上でプルプルと揺れた。

 ミノタウロスは自分の顔にくっついているOMH222号を引き剥がそうと激しく頭を振った。しかし、そのゆるキャラのような姿とは裏腹にOMH222号の力はゆるくなかった。OMH 222号はボヨボヨと揺れながらも落ちるどころか、ミノタウロスの顔にさらに強くくっついた。

 絶対はなれないとしがみつくOMH222号に、ミノタウロスの動きがだんだん鈍くなった。


 ドオン……!!!!!


 顔が塞がれ呼吸ができなくなったミノタウロスは、やがて力尽き、横に倒れてしまった。


 よし、これで静かになった。

 次はーー。


「さあ、もう泣き止もうか! ベベちゃん! うるさい牛さんはもう倒したからね〜」


 俺はさっそくガラガラを振った。

 だがいくらガラガラを振っても、ベベは泣き止まない。

 もうほんと泣かないでくれーーーー。

 一生懸命ベベをなだめていると、隣でハンナがビクつきながらつぶやいた。


「……し、死んだんですか?」

「いや。気絶しただけだ」


 いくら家畜化に成功したとしてもミノタウロスは魔獣。息ができず気絶しただけで、あと20分は生きているはず。


 襲われたのはムカつくけど、それでも他人の財産を壊すのはちょっと気が引けるので、適度に手を抜いておいた。

 あとでミノタウロスの顔にくっついているメOモンみたいなのヤツを専用リムーバースプレーで消すだけで元の元気なミノタウロスに戻るから大丈夫だ。


 しかし、それを知っているのは魔道具を使った俺だけ。農場の人もミノタウロスが死んだと思ったのか、走ってくるのをやめ、驚いた表情で大きく口を開けていた。

 驚いて逃げるならともかく、 まさか、通りすがりの通行人が暴れるミノタウロスを簡単に倒せるとは思わなかったようだ。


 しかし、この状況を処理しなければならない担当者があのままでは困る。

 俺はガラガラを振りながら農場の職員さんに言った。


「あの! あいつは気絶しただけで、死んでないですから! 処分するなら早く殺すか、それとも畜舍に運ばないとまた暴れ出しますよ」


 俺の忠告を聞いた農場の人は慌てた表情で頭をさげ、他の人を呼ぶために農場に駆け込んだ。

 俺はその姿を見て舌打った。


「ヤレヤレ、慌ただしいな」


 ハンナも俺の言葉に同意するのか、「そう、ですね……」と視線を遠くに送った。

 途中、俺の手に握られたガラガラをチラッと見たのは、目の錯覚だと思いたい。

 




 

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