黒騎士と姫とハンナの呪い16
「……とりあえず聞いてやる」
「お前は魔族だろ。儂も魔族だ。 つまり我々は敵ではないということだ。だからこその提案だ。勇者パーティの魔法使いを裏切り、こっちに付かないか」
勇者パーティの魔法使い?
ハンスの奴。
勇者は嫌だと言っていたくせに、結局やったのか、まったく、相変わらず素直じゃない奴だ。
「勇者パーティの魔法使い? どういうことだ? 噂によると、勇者パーティの魔法使いは白いヒゲがいっぱい生えていたときくが。 俺の依頼人はあそこにいる普通の田舎のおっさんだったけど。人違いじゃないか?」
俺の問いに、老魔法使いは鼻で笑いながら答えた。
「フン! 勘違いだなんて、笑わせるな! この小娘はあそこにいる魔法使いの娘だろう。この娘は勇者パーティの魔法使いの娘だ! 俺がかけた呪いがそれを証明しておる!」
なるほど。やっぱりお前がハンナに呪いをかけた魔法使いだったんだな! そうだろうと思ったよ!
この中にハンナに呪いをかけた魔法使いがいなければ、混乱しないようにハンスが教えてくれたはずなのに。 何も言わなかったからさ!
それにしても、俺が初めて会った時も、ハンナはまだ 歩けないくらいの子供だったというのに、それよりもっと幼かったはずのハンナに呪いをかけるなんて! このゲド!! 許さん!!
でも、ある意味いい機会だ。 状況は悪いけど、ここであいつを倒すことができれば、ハンナの呪いも自然に解けるだろう。
問題は、どうやって老魔法使いを倒すかなんだけど。
ハンスの表情を見るに、そのうちあの防御魔法の解釈が終わりそうだし。
とりあえず、もう少し時間を引いてみるか。
「はっ! そもそもその子に呪いがかかっているなんて、どうやってわかる。あんたが俺たちを仲違いさせるためにデタラメを言ってないと証明でもできるのか。そもそもそこにいるおっさんが勇者パーティの魔法使いだったと言うこともあやしい。おい、おっさん! あんたが勇者パーティに魔法使いだったなんて、本当なのか!」
俺はそう言いながらハンスに目で合図を送った。
あとどれくらい掛かるんだ。
「……ああ、本当だ」
俺の問いに答えながら、ハンスは老魔法使いに見えないように手で合図をした。
『あと2分待ってくれ』
2分か、思ったより長いな。
やはりさっきまで吸魔石を使ったアーティファクトを作成していたのが魔力回路に負担をかけたのだろうか。
その直後、こっちに移動してきて犠牲の陣まで解除したのだから、ハンスの疲労は言えたもんじゃないはずだ。
いずれにせよ、もっと時間を引くしかないのか。
仕方ない。
「はあ、マジか。 おい、おっさん。悪いけど、俺はこの仕事から手を引くことにする。 あんたが人間なのは、まあ、そんなこともあるかと思って目を瞑ったが。 いくらなんでも、この魔界の敵である勇者パーティーのメンバーと手を組むわけにはいかないからな」
もちろん嘘だ。
たまたま老魔法使いが俺を傭兵か何かと思っているようだから、それに合わせて適当に言ったに過ぎない。
こう言えば、魔法使いたちの油断を引き出せると思って言ったのだがー。
「お、おい! 貴様! 裏切る気か……!」
いつの間に目覚めたのか、ギャルルが呪いでボロボロの体を引きずりながらこっちに向かって叫んだ。
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