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黒騎士と姫とハンナの呪い8






 一方、その時地下研究室でハンスと俺は吸魔石と死闘を繰り広げていた。


「……」

「……」


 お互い言葉を交わす暇はなかった。


 俺はハンスの吸魔石の加工を邪魔したくなかったし、ハンスはハンスで集中していて、何か話す余裕もなかった。


 そのため、研究室に響くのは、ハンスが刻む魔法陣に共鳴するように、吸魔石から聞こえてくる軽い共鳴音だけ。

 そうしてかなりの時間が経ったとき、ハンスが最後の一筆を魔石に刻むと同時に大きな共鳴音が鳴り響いた。


「…… 終わったか?」

「ああ」


 やっと終わったのか。


「「はぁー」」


 短いやり取りを交わした俺たちは、ため息と同時にテーブルに頭を付けた。

 正直、吸魔石に魔力を入れるのがこんなに大変だとは思ってなかった。普段、これよりもっと多くの魔力を使うことも結構あったからもっと楽だろうと思い込んでいた。

 ただ、俺が予想しできなかったのは、ある程度量が減った魔力が補充されず、じわじわと減っていくことによる疲労感だった。

 食べても食べてもずっとお腹が減りつつくみたいな、微妙な空腹感が焦燥感を感じさせた。


 ハンスの方は言うまでもないだろう。魔力を吸い取る吸魔石に魔法陣を刻むという、それだけでも大変な作業だ。なのに、それに娘の命がかかっている。これほど緊張することも他にないだろう。その分、疲労感も相当なもののはずだ。


 しかし、そんな中でも俺たちは成功したのだ。

 ハンスが流した汗が目に入って一瞬目が見えなくなったり、研究室に溜まったホコリで俺が咳をしそうになって、ちょっとしたミスを起こしそうになったりもしたが、それでも俺たちは吸魔石の加工という成果をこの手で得ることができたのだ!

 次からはこんな作業する前に研究室をきれいに掃除して、ハンスの頭には鉢巻でも巻かせようと決意しながら、俺は真剣な表情で吸魔石の魔道具を見ているハンスに言った。


「やっと終わったな」

「ああ、そうだな。やっと終わった」

「物に異常はないか?」

「ああ、完璧、だ」


 これで準備は終わった。

 そうつぶやいたハンスは、吸魔石の魔道具をぎゅっと手で握りしめた。






 苦労して魔力吸収の魔道具を作ったハンスは、地下から上がってくるなり、ハンナに魔道具を渡すと言って2階に上がった。

 問題が起こったのは、それから間もなくのことだった。

 2階から降りてきたハンスが震える声で叫んだ。


「お、おい! ナイト! ハンナ、ハンナがいなくなった!!」


 あきらかに動揺しているハンスの言葉に、俺は表情を固めた。


「どういうことだ、ちゃんと説明しろ」

「お、俺もよくわからない。ハンナの部屋に行ったら、これが抜けられていて!」


 そう言ったハンスは俺に手を広げて見せた。

 その手の上には、子供の拳くらいの大きさの魔石が置かれていた。


「魔石じゃないか、なんでこれを?」

「外部の魔力を遮断して部屋の中の人を守る魔法陣の核だよ! ハンナを守るために部屋に設置した!」


 そこまで聞いた俺は眉をひそめながら言った。


「それがなんで……まさか、この村にスパイがいたのか?」


 そう疑う俺にハンスが首を横に振りながら言った。


「わからん。そんなことはないと思いたいけど、今の状況では……」


 そう言いながら、ハンスは魔石をぎゅっと握った。

 魔石の尖ったところに押されたのか、ハンスの手から赤い血が流れた。

 俺がそんなハンスを複雑な顔で見ていると、突然店のドアをパン! と開けて入ってきたギャルルが慌てて言った。


「ハ、ハンナが消えた!!」

「ああ、俺たちも知ってる」


 俺たちも今その話をしていたんだから。

 そう答えると、ギャルルが焦った顔で言った。


「ぼ、僕、道でハンナと会ったんだけど、僕が話しかけても気づかなくて、そのまま通り過ぎて、振り返ったらいつの間にかいなくなっていたんだ! それで、何かおかしいと思って追いかけてみたんだけど、町から少し離れたところで匂いも消えていて……!!」

「……ハンナが自分の足で出て行った……だと?」


 ……ということは。

 ハンスと目が合うと、ハンスが椅子にガクッと座り込みながら言った。


「あいつらの仕業だ。たぶん、呪いを操作して、ハンナがここから出るように操ったのだろう」

「……やっぱりそうか」


 ハンナが自分の足でここを出たとしたら、それ以外の答えはないだろう。

 そう納得していると、ハンスが血が流れ落ちる手でテーブルを叩いた。


「あのクソ呪い使いめ……!! ずっと隙ができるのを待っていたのか!!」

「そうみたいだな」


 そして、おそらく狙っていたのはハンナだけではなかったようだ。

 ハンナの部屋に一緒に寝かせていたはずのベベの気配が感じられなかった。

 状況を見る限り、ハンナはハンスの人質なはずだ。ベベは......ただそばにいたからついで連れて行ったか、それともベベの正体を知っていて聖国への脅しのために連れて行ったかの二つの中の一つだろう。


「……くそ!」


 ハンスが怒りに満ちた顔で叫んだ。

 それを見ていた俺はため息をついた後、マジックバッグから癒しのポーションを取り出し、ハンスの手にかけながら言った。


「落ち着け。二人とも人質としてはそれなりの価値があるんだから、すぐに命を狙われることはないはずだ」


 そうと言っても、敵の手に二人の命がかかっている以上、安心はできないが。

 そう言った俺は、ポーションの効果で癒されていく手を見て礼を言うハンスから目を離しながら言った。


「ふぅ。とりあえず、二人がどこにいるか探そう」


 二人の居場所がわからないと何も始まらないんだから。

 俺は体の中から密かに魔力を高めた。


 探しているのは、ハンナとベベの影に隠しておいた俺の影の欠片。


 目を閉じて集中すると、まぶたに隠れて黒くなった視界が一瞬にして変わり、薄暗い森の姿が目に映った。


 暗く鬱蒼とした森。

 黒いローブを着た3人の魔法使い。

 そして、その3人の魔法使いの中心にいるハンナとベベ。

 場所はー。


「……あそこか」


 前にハンナが魔力暴走を起こした場所、そこから歩いて1時間ほど離れた場所に二人はいた。

 いたのだが……。


 影で繋がれた視界で何かを見つけた俺は、閉じていた目を開いて、ハンスに言った。


「見つけた」

「見つけたのか! ハンナは無事か! どこにいる!!」

「ハンナはベベと一緒に東の森の深いところにいる。ただ……」


 俺が言葉を伸ばすと、ハンスがもどかしそうに俺の肩を掴もうとした。

 しかし、俺は説明する代わりに、俺の肩を掴もうとするハンスの手首を掴みながら言った。


「いや、俺が説明するより、直接行ってみたほうが早いだろう。案内するよ。【シャドウ・ブリンク】」


 その言葉と同時に、足元から膨らんだ影が俺とハンスを包み込んだ。

 すると、本能的に俺たちがハンナのいる場所へ行くことに気づいたのだろうか、ギャルルが両腕を前に伸ばして俺たちに向かって突っ込んできた。


「僕も一緒に行く!!」

「え、ちょっ……!!」


 俺は移動の瞬間に割り込んできたギャルルを見て心の中で叫んだ。


 何をしているのかもわからないくせに、頭から突っ込むなんて!

 ギャルル、お前、それでも領主の娘か!!

 あとカプカ・タイガ! 娘の教育くらいちゃんとしろ!!




 と思った方は、ぜひブックマーク!と、

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 するとなんと!作者のテンションがめちゃくちゃ上がります!

 上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!


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