黒騎士と姫とハンナの呪い4
「ハンス、そろそろ真面目な話をしようか」
「……ああ、研究室に行ってから話そう」
俺はハンスの後を追って地下へ下りながら尋ねた。
「それで、実際、ハンナの具合はどうなんだ」
「……そんなに良くはない。でも、アレを使って魔道具を作ることができれば何とかなると思ってる」
ハンスのそのつぶやきと一緒に階段が終わり、ハンスの研究室の扉が目に入った。
「そういえば、ここに入るのは初めてだな」
「……そうだったな」
「うん。前の研究室にはよく遊びに行ってたんだけどな。でもまあ、前の研究室とあんま変わらないな」
そう言いながら近くにいるテーブルにある、見慣れた魔法陣に魔力を吹き込むと、魔法陣から火が出て、その上に置かれてあったやかんからお湯が沸き始めた。
今すぐお茶を飲むつもりはないが、なんとなく懐かしくてやってみたのだ。
茶葉はきっとこの下の二段目の引き出しにあるのだろう。そんなことを考えていると、ハンスが肩をすくめながら言った。
「そりゃそうだろうよ。魔法使いの研究室は、全てが計算された戦闘要塞に等しいものだからな」
「そういえば、前にもそんなこと言ってたな」
だから、高ランクの魔法使いは突然の戦闘にも慌てずに対応できると、自慢げに言っていた覚えがある。
その時は半信半疑で、魔法使い特有の虚勢もあるんじゃないかと思っていたが、ここまで同じものを作ってるのを見ると、その言葉もあながち嘘ではなかったらしい。
「それよりナイト。吸魔石を見せてくれ。状態を見ないと、どう加工すればいいかわからない」
「ああ、わかったよ、ほら」
「うおっ! 投げるなッ! ていうか、デカいな!?」
デカいのか? うーん。たしかに拳ほどの大きさだから大きい方かもな。
本当を言うとハンスが言ったサイズにカットして持ってこようかとも思ってたんだけど、もしかしたら大きかったら大きかったで何か使い道があるんじゃないかと思って、丸ごと持ってきたんだけど。
「それで、使えるか?」
たぶん使えるだろうと思いながらも、俺は少し不安を覚えながらハンスに聞いた。
前にハンスに聞いたのだが、魔法に使う触媒というのは、大きければいいというものではないらしい。大きさも大事だけど、触媒で一番大事なのは触媒そのものの質だそうだ。
その質というものによって、小指の爪くらいの大きさの魔石が大人の拳ほどの大きさのよりも高い価値を持つことも少なくないらしいからな。
唾を飲み込みながら鑑定をするハンスを見ていると、ハンスが俺の方に振り向き、ほっとため息をつきながら言った。
「使えるよ。ていうか、ハイスペックすぎるだろ、一体どこでこんなものを手に入れたんだよ」
「ああ、昔に掃討戦に行ったときに偶然拾ったんだよ」
本当に偶然拾った。
昔、掃討戦をしている時期に反乱軍がいるという報告を聞いて行った場所で。
これを手に入れたとき、少し理解できないこともあったが、そんなことは今更どうでもいいことだ。
「それで、加工にどれくらいかかると思うんだ」
「……大体一日くらいかかると思う」
一日か。思ったより短いな。それくらいならなんとかなるかな。
「わかった、じゃあ俺はその間、お前が設置しておいた吸魔陣で、ハンナの魔力を消耗させているよ」
「いや。残念だが、お前も俺と一緒に魔道具を作らなければならない」
「は? なんでだ」
魔法使いの仕事に魔法と何の関係もない俺が参加しても、何の助けにもならないはずだが。
首を横に傾げながら尋ねると、ハンスがため息と共に言った。
「吸魔石の魔力を吸い込む力が強すぎて、俺一人の力では吸魔石に魔法陣を定着させることができないんだよ」
なるほど、そういうことか。
普通の魔石に魔法陣を定着させるには、魔石に魔法陣を刻む力さえあればいい。
だけど、今みたいに吸魔石に魔法陣を定着させるときは違う。
吸魔石が吸収する魔力に加え、その上に魔法陣を刻みながら使う魔力も必要になる。
普通の魔石に魔法陣を定着させることの2〜3倍、あるいはそれ以上の魔力が必要になるかもしれないのだ。
確かに、いくらハンスが凄腕の魔法使いだとしても、一人では無理な作業だったし、俺が手伝う必要があることも理解した。
したのだが。
「じゃあ、ハンナはどうするんだよ」
吸魔陣というのは、文字通り魔力を吸収する魔法陣で、本来は魔力を持つ犯罪者を捕まえるために使うものだ。
したがって当然だが、犯罪者にかける配慮などない。なので吸魔陣は発動していると、その中にいる人の限界まで魔力を奪ってしまう。
そのため、吸魔陣が設置された監獄に閉じ込められていると、健康な人でもやがて体に問題が発生することが多い。
その関係で、一時は人の道理という観点から吸魔陣は使わないほうがいいのではないかという話も出ていた。そして今は死刑に相当する犯罪を犯した者にのみ使用するよう法で定められているはずだ。
そんな吸魔陣を今のハンナが耐えられるはずがない。
少なくともハンナが幼い頃から魔力を扱う練習をしてきたとすれば、自分の限界を知り、体に害が及ばないタイミングで魔法陣から出ればいいはずだが……。
まだ自分が持っている魔力がどんなものなのかもきちんと認識できてないハンナには難しいことだろう。
そんな心配を込めてハンスを見つめると、ハンスが唇を咥えながら言った。
「……限界ギリギリまで、ハンナの魔力を奪って仮死状態にするつもりだ」
「……お前、本気か」
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