黒騎士と姫とハンナの呪い3
「ただいまぁ」
それから3日後、俺はようやくハンスの店に戻ることができた。
疲れた体を引きずって玄関を通ると、焦った顔で店の入り口を睨んでいたハンスがその場で立ち上がって聞いてきた。
「すぐ戻ると言って行った癖に、何でこんなに遅く来たんだよ! アレを持ってるのがバレて牢にでもぶち込まれたんじゃないかと心配したぞ!」
「いやあ、ちょっと事情があってな」
まさかアレがあんなに見つからないとは思わなかった。
俺が吸魔石を埋めたのは、アジトである小屋を建てる前だ。
ざっくりと吸魔石を埋めた場所を中心に小屋を建てたのである。
だから俺はおおよそ小屋の真ん中くらいを掘れば吸魔石が見つかると思っていたのだが……。
まさかそれが小屋の端っこに埋まっているとは思わなかったなぁ。
おかげで、間違った場所を掘っては埋めるのを繰り返しながら、無駄に時間と体力を使ってしまった。
全部掘ってしまえば一日で終わってたかもしれないのに。アレの上に小屋さえなかったら! くっ!
しかも最後にアレを見つけたのも、地面に魔力を探査機のように撃って、魔力が通らないところを掘るという方法を昨日思いついて、やっと見つけたのだ。
もっと早く思いついていたら、時間を無駄にしなくて済んだのに!(泣)
いや、せめてベベの世話をするために時時穴掘りを止めてなければ1日で終わってたかもしれない。
やっぱりベベはハンスに任せて行った方が良かったかな? と一瞬思ってこともあるが……。
ハンナがいつ暴走するかわからないのに、しょっちゅう聖欲でトラブルを起こすベベを置いて行くわけにはいかないよな (泣)
「それより、ハンナはどうだ。大丈夫だったか?」
「ああ。この前倒れたことを言い訳に、ずっと家で休ませながら吸魔陣で魔力を吸い取ってるから。今はなんとかー」
そんな話をしていると、突然背後からハンナの声が聞こえてきた。
「ナイトさん、きましたか?」
階段の方から聞こえてきた声に振り向くと、パジャマの上にカーディガンを羽織ったハンナがゆっくりと階段を下りてくるのが見えた。
俺と同じく、ハンナを見つけたハンスが慌ててハンナの方に駆けつけた。
「ハンナ! ベッドでおとなしくしてろって言っただろ!?」
「ええと。でも、3日もベッドにいたからと、ちょっと退屈で……」
「それでもダメだ! まだこんなに顔色が悪いんだから、早くベッドに戻って休みなさい!」
確かに。ハンスの言葉通り、ハンナの顔色はとても良くは見えなかった。
青白い顔色に冷や汗をかいているのが、誰が見ても病人の姿だった。
「ハンナ、ハンスの言う通り、戻って休んだ方がいいと思うぞ」
倒れるのではないかと心配だ。
しかし、そんな俺とハンスの説得にも、ハンナは首を縦に振らなかった。
「でも、まだナイトさんには、この前助けてくれたお礼もちゃんと言ってないですし……」
「そんなこと気にしなくていいから。 そもそも俺が姪っ子のようなハンナを助けるのは当たり前のことだし」
「でも……」
本当にハンナはいい子だな。そんなこと気にしなくていいのに。
はあ、仕方ない。
「じゃあ治ったら、後で前みたいに一緒にベベの離乳食でも作ってよ。毎回作るのに手間がかかって大変だからさ」
「えっ! それでいいんですか?」
「むしろ俺の方から頼みたいくらいだよ。 何なら定期的に手伝って貰う代わりに報酬を払ってもいいぞ」
バイト代も出す。マジで。
真剣にそう言うと、一瞬ぼかんとした顔をしたハンナが、少し間をおいてクスクス笑いながら言った。
「ふふふ、ナイトさんたら。わかりました、じゃあ、今度必ず手伝います! じゃあお父さん、私は上がるからナイトさんにちゃんとおもてなししてね?
私がいないからって、お茶も出さないとかそんなことしちゃだめだよ!」
「ああ、わかったから、さっさと上がりなさい。ハンナ、俺のお姫様。なんなら、俺がお姫様抱っこで運んであげようか?」
「いやだ、恥ずかしい! じゃあ、ナイトさん、また後で!」
お姫様抱っこが本当に嫌だったのか、頬を赤くしたハンナが早足で2階に上がった。
するとその場には、ハンナをお姫様抱っこするために両腕を広げたハンスだけが残った。
「……哀れだな」
娘に拒否される父親というのは。
「恋愛経験ゼロのくせに、俺を同情するんじゃない!」
「誰が恋愛経験ゼロだ、こら!!」
「お前のことだよ!! それともなんだ? 俺が知らない間に一度でも恋人があったと言うのか!」
「それは……!!」
……確かになかったけど!!
女が俺に寄ってこないのにどうしろと言うんだよ!! これでも生前はアプローチも結構されたのに、死んでアンデッドになった後は死気のせいかそういうのも全くなったし。
くそー。こうなると知っていたら、生前アプローチされたときにデートでもしておけばよかった!
「そもそもお前も同じだろ! 戦に出るまで周りに寄ってくる女もいなかったくせに!!」
「それはお前のせい……!! ふう、もういい。何のためにこんなくだらない喧嘩をしてるんだか」
「何だ、その顔は」
何でそんな偉そうな顔をしてるんだよ。気持ち悪い。
「そりゃそうだろ。
お前は恋愛経験ゼロのガキだが、俺は美しい妻に加え、ハンナという可愛い娘もいるんだからな」
「……!!」
そうだった! こいつは今や既婚者だった!! くそっ!!
「お前は絶対に俺に勝てないぞ」
確かに俺がこの話題に関してはハンスに勝つことは不可能だ。
しかし、そんなハンスにも天敵はいた。
「お父さん、モテなかったお父さんの過去をずっと聞いていたくないから、もうそろそろやめたらどう?」
「……ハンナ!!」
いつの間にか2階から降りてきたハンナの冷たい視線を受けたハンスが、「くっ!」と心臓を押さえながらひざまずいた。
なんだかハンスの胸に突き刺さった矢が見えてるような気がした。
おそらくその矢の名は「娘の軽蔑」なのだろう。
「ナイトさんもあまりお父さんに付き合わないでください! お父さんはすぐ調子に乗りますから!」
そうやって俺にも一言言ったハンナが再び二階に上がり、俺はそのあとに残されたハンスを見下ろした。
ハンスの背中に刺されたもう一つの矢に「お父さんはすぐ調子に乗りますから!」と書かれているのが見えた。
本当に、哀れだよなぁ。もういじる気もなくなるほどにさ。
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