黒騎士と姫とハンナの呪い1
どうにかしてスターン村に戻ってきた俺たちを迎えてくれたのは、ハンスとノールさん、二人だった。
「おい、ナイト! これは一体!? ハ、ハンナは大丈夫なのか!?」
「デール! ルルちゃん! ハンナ!」
俺たちを見た二人の視線が、俺におんぶされたまま気を失っているハンナに集まった。
「は、ハンナ.......!!」
気を失っているハンナを見つけたハンスが、震える手をハンナに伸ばした。
俺はそんなハンスにハンナを渡した後、真剣な声でハンスに言った。
「ハンス。ちょっと聞きたいことがあるんだが、後で時間いいか?」
「あ、ああ、わかった」
うなずいたハンスは、ノールさんの方を見て言った。
「ノールさん、農場のことは申し訳ありませんが、続きはまた後でよろしいでしょうか」
「ええと、ええ、構わないわ。私もハンナのことが心配だから、ハンナと一緒にいてください」
「ありがとうございます」
頭を下げてお礼を言ったハンスは、そのまま早足で店の方に向かった。
カランー。
鈴の音と共に店に入ったハンスはそのままハンナの部屋に上がり、ベッドにハンナを寝かせて言った。
「……魔力暴走だな?」
「ああ」
俺はハンスの質問に首を縦に振りながら考えた。
やっぱり知っていたのか。
じゃあ、いったいコイツはなぜハンナに健康のためと言って、あんなモノをつけたんだ?
全てのものには流れというものがある。
そしてその流れを無理矢理封じ込めば、どこかで必ず問題が発生するのが当たり前のことだ。
そしてそれは魔力も同様で、魔力の動きを無理矢理封じるこの首飾りは、魔力を持つ者にとっては毒に等しいのものだと言える。
ましてやそれがハンナのような強大な魔力を持っているものならばなおさら。
そんなことを考えながらハンスをじっと見下ろしていると、ハンスが俺の考えを読んだかのように言った。
「なぜ、ハンナに魔力を封じる首飾りなんかをつけたのかと聞きたいんだろう」
「ああ」
ハンスが自分の命のようも大事にしているハンナにそんなことをしたなら、きっと何か理由があるはずだ、と俺はまだ考えていた。
「……呪いのせいだよ」
「呪いて……?」
首を傾げながらハンスの言葉を繰り返すと、ハンスが深いため息を吐きながら説明した。
「ああ。 聖国を出る時に、運悪く俺に恨みを持った魔族たちと出くわってしまってな。疲れているところに襲われて、その魔族たちがまだ幼いハンナに呪いをかけるのを塞ぎきれなかったんだ。これはその呪いが動くのを防ぐためにつけたものだよ」
「なるほど。魔力さえ動かなければ、呪いも活性化できないんだから、魔力そのものを動かないように抑制したわけか」
「ああ、その通りだ」
ハンスの考えはわかった。
しかし、それでも俺はハンスの言葉にちょっとした疑問を感じずにはいられなかった。
「でもそれって、魔力が極端に少ない人にしか使えないだろ」
いくら天才魔法使いと有名なハンスだとしても、そのへんの魔法使いよりも遥かに魔力量の多いハンナにそんな技を使うのは難しいはずだ。
「ああ、そうだな。子供の頃はこれだけでも十分だったんだけどな。 どんどんハンナの魔力が増えていて、今や毎晩吸魔の魔法陣を使ってハンナの魔力を少しずつ吸い取ってるんだ。だから、まだチョーカーだけでも十分だろうと思ってたんだけど」
「ハンナの素質が予想よりもずっと高かったということか」
「ああ、まさか魔力暴走まで起こすとはな。さすが俺の娘だ、というべきか。本当に、本当に……成長が早すぎる」
ハンナの額の上の髪を指先でそっととかしながら話すハンスの背中はなんだか疲れているように見えた。
いつも平気な顔をしていたが、相当辛い思いをしていたんだろう。
その背中を眺めながら、俺は喉から飛び出そうとする言葉を飲み込んだ。
なぜ最初から相談してくれなかったのか、これからどうするつもりなのか、俺がそんなに頼りなかったのか、言いたいことはたくさんあった。
しかし、俺はその言葉を全て飲み込んだ後、ハンスに問いかけた。
「対処法は? お前の事だ。こんな事態になったときのために、2、3個の対処法くらい同然用意しておいただろ?」
今まで使っていたチョーカーを作り直すのはダメだ。
すでに一度暴走状態になった以上、同じ方法を使ってもまた同じことが起こる可能性が高い。
だから今度は魔力の動きを抑えつつ、同時に魔力を消耗させる魔道具が必要になる。
俺の言葉にしばらく黙っていたハンスが、ちょっと間抜けな顔で俺に聞いてきた。
「……怒らないのか。俺が今までお前を信用してなかったてことだぞ」
ハンスのその言葉に、俺はハンスと真剣に目を合わせてはっきりと言った。
「怒っているよ」
怒ってないわけないだろ。
もっと早く言ってくれれば、ハンナがこんな目に遭わずに済んだかもしれないのに。
しかし、ハンスの心がわからないわけでもない。
魔族と最前線で戦っていた人が、ある日突然姿を消し、また突然魔王国の四天王になって現れたのだから。 俺だとしても、そんな人を信用するのは無理だ。
本音がどうであれ、今まで普通に接してくれたのが逆におかしかったのだ。
しかしそんなそれ、これはこれだ。
「でも今は、ハンナの魔力暴走に対処するのが先だろ」
魔力暴走は決して甘いものじゃない。
できるだけ早く対処しなければ、ハンナの命が危ないのだ。
呪いが期限に余裕のある信号式爆弾だとすれば、魔力暴走はいつ爆発するかわからない時限爆弾だ。
今は落ち着いているが、いつ再び暴走し始めるか誰もわからない。
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