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黒騎士と姫と悪友






「本当に、棒の先がくるくる回る魔道具は誰も買わないと言うのに、お父さんは聞かなくって」

「……いいな!!」

「今回はやっぱり内藤さんもいらないでしょ? ……エッ。いいんですか!?」

「ん。いいよ。すごく」


 むしろ購入するしかない。

 この魔道具、ミニホイッパーなんだから!

 これさえあれば、自分でクリームを打たなくても、パンに乗せるクリームが簡単に手に入るから! 何なら一日一回トーストにクリームをかけて食べてもいいと思う! やっぱり毎回クリームを作るのは面倒で諦めていたから


 しかし、そんな俺の考えを知らないハンナは、頬を膨らませて興奮気味に怒った。


「ああ、もう! ナイトさんはうちの父さんに甘すぎます! この前も、その前も、そう言って変なものばっか買って!!」

「いや、それもそれなりによく使ってるんだけど」


 前回は確かにグラム数が0点1グラム単位で測定される天秤の魔道具だったし、またその前は髪を乾かすのに最適な温風を出す魔道具だった。今日もその魔道具を使って髪を乾かしたんだから。 ちゃんと活用してる。

 まあ、こんなことをハンナに言ったら「髪は普通にタオルで乾かせばいいんでしょ?」と言われそうなので絶対に言わないけど。


「ハハハ! ハンナ! ほら、ナイトもこの魔道具の良さを分かるだろ! やっぱり俺の見る目は確かなんだ!!」

「「いや。それはないから」」


 ハンナと俺の声がハモった。

 俺たちの同時ツッコミでハンスが倒れた。


 でも、何回か連続で当てたくらいで調子に乗るのはマジで困る。なんせハンスは見る目がおかしいから。

 普通に冷たい鉄板の魔道具を持ち込んだこともあったし、履いているだけで踊るんじゃなく、酔いするほどただ回る靴を持ち込んだこともあった。

 前のは普通に氷の上に鉄板を乗せた方が効率的で、後ろの靴になると普通に呪われ物である。


 集めること自体を悪く言うつもりはないけど、せめてそんな呪われたものを普通に雑貨屋で売ろうとしないでほしい。


 さて、事態も落ち着いた事だし、そろそろ真面目な話をしようか。


「ハンス。ちょっと良いか??」

「くすん。娘と親友に売られた俺に何の用だ」


 おいおい、その程度のツッコミでいい大人が泣くんじゃない。マジ泣きじゃないか。

 てか俺もいろいろと忙しい。話は勝手に進めてもらう。


「話がある。真面目な話だ。中に入って話してもいいか」


 真面目な顔でハンスの目を見て話すと、


「……わかった。ハンナ、お茶を用意してくれ」


 さっきまで泣いていたのが嘘のように席を立ち上がったハンスが店のドアを開けて中に入った。

 俺が真面目な話をしようと思っていることに気づいて配慮してくれたのだ。

 見る目はちょっとアレだけど、本当にいい奴なんだよな。今もちょっと泣いているけど。





***





「それで? 言いたいことってなんだ?」


 ハンナが出してくれたお茶を飲みながら、ハンスが尋ねた。


「ああ、この子のことだ」


 俺はそう言って、持っていたスリングをめくってハンスにベベを見せた。


「ぴゃーー♥」


 おむつを交換してからずっと機嫌の良いベベは、満面の笑みでハンスと目を合わせた。

 しかし、ベベのかわいい笑顔に反して、ハンスの表情はあまり良くない。


「……人間の、子供?」

「ああ、それも聖力を持つ子供だ」

「はああーーッ」


 俺の話を聞いたハンスは両手で顔を押さえた。

 人間時代からの悪縁であるハンスは、この村で唯一、俺の正体を知っている。

 したがって、奪命王である俺の立場、そんな俺が面倒を見るような立場の人間の子供、しかも聖力持ち。という数少ない手がかりだけで、ハンスはベベがどんな存在なのか気づいてしまったのだ。


「……よし、聞かなかったことにしよう!」

「おい! ひどいな! 友達だろ?!!」

「ふざけるな! 俺はそんな危険なことに首を突っ込む気はない! こっちとら可愛い可愛いハンナという娘がいるんだからな!!」

「チッ! この親バカやろう!」


 堂々と言いやがって!

 まあ、最初から期待なんかしてなかったけどな! これぞ俺の悪友だ!!


「まあ、そう言うんだろうなとは思ってたよ。だから、直接なんとかしてくれとは言わない」


 俺はよだれを垂らして俺の服にシミを作っているベベの頬を拭きながら言った。


 「ただ、少し情報を集めてくれないか?  些細なことでもいい。 俺はもう死んでこんな体になっちまったけど、お前はまだ人間なんだから、それなりの情報は得られるだろう」

 「それはそうだが、......それだけでいいのか」

 「ああ、それだけで十分だ。俺が直接出ると目立つからな。頼む」


 真剣な目でハンスの目を見つめながら話すと、俺の目を見つめたハンスが、しばらくして深くため息をつきながら言った。


「はあ! しょうがないな! その代わり、まともな情報が出ないと文句言うなよ!」

「ああ、わかった」

「それと! ハンナに危険が及ぶと思えば、俺は何があっても抜ける。わかったか!?」

「ああ、もちろんだ。俺もハンナが傷つくのは嫌だし、そうしてくれ」



 俺が当たり前のようにうなずくと、ハンスが疲れたように眉間を揉んだ。

 何か悪いことをした気がするが、仕方のないことだから諦めて欲しい。俺の周りにハンス以外に人間の国の事情を知る者は一人もいないんだから。 外交を担当するヴァンパイアクイーン・リリーなら知っているかもしれないが、あの女は論外だ。100 パーセント疑われるだろうし。魔王の耳に入るはずだから。

 とにかく一番大事なことを済ませた俺は、何かを探すようにポケットを漁るハンスを見ながら言った。


「タバコは止めたといってなかったか?」


 確かハンナが生まれる少し前にやめたと言った記憶がある。 妊婦と子供の体に悪いという話で。

 でも、今のあの仕草は明らかにタバコを探すものだった。


「はぁ、やめたよ、とっくにな。知ってるだろ。これはただの癖だ」


 そう言ったハンスは、ポケットからタバコではなく飴を取り出し、口に入れた。

 タバコの代わりらしい。


「そうか、また始めたのかと思ってびっくりしたよ」

「......する訳ないだろ。ハンナの健康に悪いんだからよ」

「そうだな。 お前、ハンナが大好きなんだもんな」

「ああ、俺の自慢の一人娘だからな!」


 ハンスが鼻筋を伸ばして誇らしげに言った。

 さっきの疲れた様子はどこへ行ったのかわからない。こいつの親バカも役に立つ時があるんだな。

 まあ、それはさておき。


「それより一つ聞きたいことがあるんだけど」

「ああ、何だ何だ、何が聞きたい! ハンナがいつ初めて歩き出したのか聞きたいか? 頭を下げて頼めば教えてあげなくもない!」

「違う! 俺が聞きたいのは、人間の赤ちゃんは何を食べさせればいいのかだ!」


 まったく。コイツはちょっと油断するとすぐ親バカし始めるんだから!

 あと、ハンナがいつ初めて歩いたかなんて、もう3回以上聞いてるわ! 流石に聞き飽きたんだからな!

 ハンスを睨みつけながらそう言うと、ハンスが残念そうにため息をついた後言った。


「そりゃ、乳だろ。乳……ああ、ここでは普通の動物の乳が手に入らなかったな。適度にミノタウロスの乳でも食べさせればいい。とはいえ、そのまま飲ませるわけにはいかないけど。ミノタウロスの乳にヒダマリの薬草の汁を混ぜるか、それともーー」

「それとも?」

「……ちょっと待ってろ」


 

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