黒騎士と姫、また森へ6
「ベベ、一口だけでも食べてくれないか? ほら、ハンナお姉ちゃんがしょんぼりしてるでしょ」
「ぴゃあ……?」
俺の言葉に、ベベが『本当に……?』と問いかけるような声を出して、ハンナの方に目を向けた。
そしてその後びっくりして目を丸くした。
まさかハンナがあんなに落ち込むとは本当に思っていなかったみたいだ。
「この前、うっかりしてハンナを傷つけそうになったこともあるでしょ? 味見だけでもいいから一度食べて見ないか?」
「ぷぅ、ぴゃあ……」
俺のささやきに迷っていたベベが、やむを得ないというような顔でうなずいた。
ベベも前回のことを気にしていたのだろう。自分から謝ることができない分、なおさら気にしていたはずだ。
「よし、いい子だ!」
俺はベベの頭を軽く撫でた後、ベベの口元に卵黄が乗ったスプーンを運んだ。
「ほら、ベベちゃん、あーん」
「あ、ああー」
目をぎゅっとつぶったベベがスプーンの上に乗った卵黄をパクッと食べた。
そしてその後。
「ぴゃ、ぴゃあ!? ぴゃあッ♥」
驚いたように声を上げて、卵黄が入った器に手を伸ばした。
「わあ! ベベちゃん、気に入ってくれたの!?」
「ぴゃ♥ ぴゃぴゃあッ♥」
ハンナの言葉に猛烈にうなずいたベベが卵黄に手を伸ばしつつけた。
しかし、だと言ってこれをべべに渡すわけにもいかない。せっかくハンナが作ってきたベベのおやつがベベの手で台無しになる可能性が高いし。
ベベはまだ器をちゃんと持つこともできないからな。
「こら、ベベちゃん。俺が食べさせてあげるから、ちょっと待ちなさい!」
「ぴゃッ! ぴゃぴゃ!」
「はいはい。ほら、あーん」
スプーンに卵黄を乗せベベの口に入れてあげると、ベベは瞬く間に卵黄を食べてつくした。
そして俺が作った離乳食というとー。
「今日も残ってしまった」
「ああっ!すみません。ナイトさん!!」
「いや、謝らなくていいよ。ハンナのせいじゃないから」
俺、離乳食作るの下手なんだろうか。料理が上手くないと思ったことは一度もないけど。ちょっと凹むなぁ。
そんなことを考えていると、ハンナが慌てながらも手に持って離さないサンドイッチが目に入った。
さっきは忙しくて気つかなかったけど。
「ハンナはスクランブルエッグサンドを作ってきたんだね」
「あ、はい! これ作るのも簡単で、すごく美味しいですから!」
「そうか。教えた甲斐があったな」
そう答えてギャルルとデイルの方を見ると、ギャルルとデールは硬い黒パンとチーズとベーコンを手に持って食べていた。
デールは普通に家で食べるものをそのまま持ってきたのみたいだし、ギャルルは……あれは弁当を作るのを忘れた確率が高いな。
ギャルルの目は、ハンナが食べているサンドイッチに釘付けになっていた。
普段は家の人が弁当を用意してくれているだろうから、たぶんいつも通り他の人が弁当を用意してくれるのを待っていて、成り行きでノールさんが用意したあの弁当を持ってくることになったのだろう。
自分の手では何もしたことのない立派な家の子の弊害だな。あれは。
仕方ないな。
「「二人ともこれ食べる(か)?」」
俺とハンナの声が重なった。
ハンナも、二人の弁当が自分の昔の弁当と同じものであることに遅れて気づいたようだ。
ハンナと目が合った俺はにっこり笑いながらみんなに言った。
「みんなで一緒に食べようか?」
そう言って、俺はマジックバッグからサンドイッチとフルーツサラダを取り出した。
ギャルルが獲ってきたウサギもあるし、これくらいあれば十分だろう。
そう思いながら顔を上げると、ギャルルがボソリとした声で聞いてきた。
「……大丈夫なのか?」
「もちろん」
「ルルちゃんはウサギを捕まえてくれたでしょ? 遠慮しないで食べて食べて!」
ハンナがそう言うと、ギャルルの表情がちょっと明るくなった。
問題は、ギャルルの横でサンドイッチに手を伸ばしていたデールが、その話を聞いてふと手を止めたってことだ。
「ハンナ、僕は?」
後ろの言葉は聞かなくてもわかった。
僕はウサギ獲れてないから、食べちゃダメ? だな。
デールの言葉にハンナが目を泳がせながら言った。
「ええと、デ、デールはさっきキノコ狩りを一生懸命手伝ってくれたから!! そのお礼!」
「そうだそうだ、だから二人とも遠慮しなくて食べていいよ」
「うん!」
「わかった。 じゃあ、いただきます!」
そう言ってギャルルは真っ先にハンナのサンドイッチに手を伸ばし、デールはおもしろそうな顔でフルーツサラダに手を伸ばした。
その後の反応は二人とも同じだった。
はむっと手にしたものを一口食べた二人は、夢中で手にしたものを食べ始めた。
「おいしーーーーい!!」
「おいしすぎるだろ! ヤバいんだけど!」
んん。二人ともお弁当をとても気に入ってくれたようだ。
手に持ったものを食べつくした二人は、俺が作ってきた弁当を次々に食べつくした。
よし、俺の料理の腕は悪くない。うん、間違いなくそうだ! ベベはまだ若いから味がわからないだけで!
......絶対に現代のレシピが二人にウケたわけじゃないんだから。……ないよな?
そんなことを考えていると、
「あ、ウサギ焼き上がった」
ギャルルが焚き火で焼いたウサギの前に俺たちを呼んだ。
俺たちはしゃべるのをやめて、うさぎ焼きの方に集まった。
さっきからいい匂いがすると思ったら、何か香辛料をまぶしたらしく香ばしい香りがした。
「「「ゴックリ」」」
いい匂いに誘われた俺を含むみんなの喉が鳴った。
いや、本当にいい匂いがするんだけど。 この香辛料はどこで手に入れたんだろう。 ぜひ売ってほしいなぁ……。
おそらくギャルルの家の特製レシピだろうけど。
カプカ・タイガーの娘で 、旅なんてしたこともないはずのギャルルが他のところで手に入れるはずもないだろうし。
はあ、とても残念だ。
……仕方ない。この機会にできるだけたくさん食べておくことにしよう!
そんなことを考えた俺は子供達と一緒に夢中になってウサギを食べ始めた。
ギャルルがハンナにあることについて聞いたのは、その時だった。
どこか緊張した声で尋ねるギャルルの視線は、ハンナの首、正確にはハンナの首からぶら下がっている首輪に向けられていた。
首輪といってもチョーカーに近いそれは、赤いリボンに緑色の宝石が付いてある結構高そうなものだった。
しかし、それを見ているギャルルの目はどこか嫌なものを見ているかのように鋭かった。
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