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黒騎士とギャルルとガイドブック


 


 こうして、いろいろと忙しかった食事の時間が終わり、俺たち4人はティータイムを持つことにした。

 大泣きした後、お腹いっぱいにまんまを食べたベベが隣でぐっすり眠ったころ、俺はギャルルに聞いた。


「それで、ルルは何が気になったのかな?」

「…… は?」

「俺に買った魔道具に気になることがあって、来たんじゃなかったのか?」

「ああ、そうだった」


 ああ、そうだった?

 なんだ、その今更思い出したような言い方は。

 ……まあ、どうでもいいけど。


 俺がギャルルに望むことはただ一つだけ。

 俺の正体について気づかないでほしい、ということだけだ。


 それなのに、ギャルルの目つきは、初めて会ったときから今まで、なんとなく何かを探るような気がして。


 ゴックリ。


 俺は乾いた口で唾を飲み込んだ。


「……」


 緊張の中、真剣な顔のギャルルがテーブルの上に俺が売った魔道具を置きながら言った。


「……この魔道具、大量に買いたいんだけど、できるか?」

「いや、俺は……えっ、魔道具?」


 あまりにも真剣な顔をしていたから、てっきり俺の正体について聞くのかと思ったが。 違ったか。


 何だか勘違いしたみたいで恥ずかしいな。


 俺は首の後ろを軽く搔きながら視線をそっと避けた。

 しかし、俺がそうしようがしまいが、ギャルルの話は勝手に進んだ。


「ああ、そうだ。お父さまぁ、父さんに見せたら興味を持ったみたいでさ。もし大量に売れるのなら買って帰りたいんだけど」


 父さんといえば、カフカ・タイガーの夫のことだよな。

 聞くところによると、かなり頭が回る人らしいし。俺の魔道具研究所で作った商品を見たら、そりゃ出所がどうであれ興味を持つのが当たり前か。


 …… 今まではそれが俺の領地だというのが原因で目に入ることもできなかったようだが。


 とにかくこれは好機だ。

 俺の領地の魔道具を売り飛ばす好機!

 しかし、それには問題が一つあった。


「数量は?」

「これを50個もらいたい、らしい」

「うーん。さすがにちょっと無理かな。そんなにはもってないんだ」

「やっぱりそうかぁ」


 そうだ。問題というのは俺が持っている魔道具の量だった。

 ギャルルに言った通り、いくら俺でも魔道具をそんなにたくさん持ち歩くことはない。


 俺が魔道具を持ってるのは、趣味で集めているのもあるが、この前のミノタウロスの件のように、主に実力偽装のためのものだ。それ以外は宣伝用。

 だからそんなに大量に持っている必要はないのだ。


 じゃあ、このまま領地に戻ってストックを持って来ればいいんじゃないかて?


 そもそも生産をそれほどしてないから、在庫なんてないも同然だ。

 俺が持っているものを含めても、1種に10個を超えることは滅多にない。

 OMH229号とかは、使い勝手がいいからストックを多少持っていたけど、それも前回売ったで終わり。また一から作り直さないといけない状況だ。


 ……在庫だけたくさん持っていてもウチのは売れないんだからね。シクシク!


 しばらく落ち込んでいた俺だが、だからといってこんな好機を逃すわけにはいかない。

 俺はすぐに気を取り直して言った。


「代わりにこれはどうだろう?」

「何だ?」

「君に売ったOMH229号とは違うけど、似たようなものがいくつかあるんだ。それを数に含めるのはどうだ?」


 俺はそう言って、自信満々にテーブルの上に何種の魔道具を置いた。

 するとギャルルはそのままピタリと動きを止め、ハンスは自分の額を叩いた。


 何だろう。


 ちょっと二人の反応が気になったが、そんな些細なことに気を取られている暇はない。


 何と言ってもこれは大きなビジネスチャンスなんだから!


 様々な魔道具をギャルルを通じて彼女の父親、つまりカフカ・タイガーの夫に見せることで、俺の領地は大規模の、しかも長期的な販売先を得ることができる。


 そしてそれはすなわち、俺の懐が暖かくなるってことだ!


 このチャンス、逃すわけにはいかない!


「わあ! これ、全部魔道具なんですか?」


 とにかく二人が微妙な反応を見せる中、優しいハンナだけが、俺が自信満々に出した魔道具に興味を持ってくれた。


俺はそれに心から感謝しながら、ハンナに魔道具について優しく、本当に優しく説明をし始めた。


「そうだよ、ハンナ。これは麻酔の毒ガスを出す魔道具で、そっちは軽い電気を出すもの。そしてあっちは……」


 そうやって10分ほど説明したとき、少しばかり引いた顔になったギャルルが両手を挙げて言った。


「ああ、わかった。よくはわからないけど、とにかくわかったから。それくらいにしてくれ」

「え? まだ途中だけど」


  魔道具は、きちんと説明を聞かないで使うと大きな事故を起こす可能性が高いんだよ。

 だが、実はそれに対する備えもできている。


「仕方ないなぁ。はいこれ、ガイドブックなんだけど。君にあげるよ」


 そう言った俺はテーブルの上に小さいガイドブックを置いた。

 小さいといっても、ほぼ教科書くらいのボリュームがあるんだけど。


 こう見えても外に出せない危険なものを抜き、命に危険のない安全(?)なものだけを集めた簡易ガイドブックである。


 ちなみに俺は百科事典くらいの厚さのガイドブックを持っている。魔道具研究所で開発した魔道具が多すぎて、それくらいじゃないと内容を全部記録できなかったのだ。


 ともあれ、この簡易ガイドブックだけでもギャルルには十分だろう。


 魔道具の外側にシリアルナンバーが書いてあるから、後で探して使えばいいだろうし。


 そんなことを考えながら、ギャルルに簡易ガイドブックを差し出すと、ギャルルがぎこちない笑みを浮かべた。


「……あ、ありがとう」


 口ではありがとうと言っているのに、どうして顔はそう見えないのだろうか、不思議なものだ。


 とにかく、ギャルルが簡易ガイドブックを受け取ってくれたから、俺の目的は達成されたのと同然だ。


 ワハハッ。 城のみんな! 仕事がたくさん入って来るから、期待しててね!




何だか数日前からハンスがとても可哀想ですね(笑)。

皆さんはどう思いますか?


***


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 上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!


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