黒騎士と姫とサンドイッチ作り6
あっ。そういやそうなるのか。
いや、ギャルルだけ外すつもりはなかったけど。
むむ。うーん。ええと。
「あっ! ルルさんも驚かせてしまったから教えてあげるよ! ハンナが怪我すると思って驚いたでしょ?」
「そ、そうですね! ルルちゃんも驚いたでしょうからね!」
ハンナが焦りながら俺の言葉に同意した。
とっさに思いついた言い訳だが、我ながら悪くない言い訳だった。
リンガに殴られかけたハンナほどではないだろうが、それを見ていたギャルルも驚いただろうし。
うん。やっぱり悪くない。
「そ、そう? それならいいけどね」
「よかったね、ルルちゃん!」
ギャルルが頬を赤く染めながら尻尾を気持ち良さそうに振った。すると、ハンナも満面の笑みを浮かべながらギャルルの手を握った。
先ほどまでは流石にもらいすぎだと断っていたハンナだが、もう断る気はないみたいだ。
俺が言った言い訳を考えると、ハンナが拒んだら、ギャルルもメレンゲ焼きの作り方を教えてもらえないだろうからな。ギャルルをがっかりさせないためには仕方ないだろう。
とにかく、ハンナの緊張がすっかり解けたようでよかった。
そんなことを考えた俺は、手の平をパンと叩いた後言った。
「さて、じゃあ、次に移ろうか? まずはサンドイッチから作らないとね」
「はい!!」
「うん! わかった!」
「ナイトさん、次は何をしたらいいんですか?」
「そうだな。ぶっちゃけこの後はそんなに難しくないんだ。ハンナ、マスタードはあるか?」
「はい! ありますよ! お父さんが肉にマスタードをかけて食べるの好きですから、家に沢山あります!」
ん。知ってた。この世界のマスタードはかなり高額だけど、あいつは毎回思いっきりかけて食べるからね。まあ、それだけ稼げてるからいいんだろうけど。
とにかく、そのおかげで今マスタードを使えるから、今はそれで良いとしよう。
俺はマヨネーズを大さじで8、マスタードを大さじで1、レモン汁を大さじ1、ハチミツを大さじ2入れて、それをしっかり混ぜた
これでハニーマスタードは完成だな。
普段はマスタードとレモン汁をもう少し多めに入れる方だが、今日はハンナとギャルルも食べるがら少し控えめにした。
前回ハンナが食べたハニーマスタード入りサンドイッチもこのレシピだったし。
いきなり味を変えると口に合わないかもしれないからな。
「ハンナ、ハムとチーズってあるか?」
「魔道冷蔵庫にあります!」
「じゃあ、それを持ってきて薄く切ってくれ」
「はい! わかりました!」
それじゃあ俺は、ハンナがハムとチーズを用意している間、サンドイッチに入れる野菜でも用意しておくか。
トマトは横から包丁入れ、キャベツは手で適当な大きさに千切る。
「……そして、ああっ! 間違えた。先に玉ねぎから辛み抜きしておかなきゃいけないのに!」
「ええっ! ど、どうすればいいんですか!?」
「うーん。仕方ない。玉ねぎは焼いたものを入れる事にしよう」
そしてその間、キャベツは……。
「ルルさん。これ、千切ってくれないかな」
さっきから俺とハンナが料理しているのをやたらとしつこい目で見ているギャルルに頼んだ。
ギャルルの視線を少し離したかったし、何より一緒にやるほうが楽しくて早いだろうからな。
そんなことを考えていると、じっと俺を見上げたギャルルが言った。
「さん付けするのやめろ。むず痒い」
「ええと、じゃあルルちゃん?」
「キモッ! ルルでイイよ! ルルで!」
いや、そうだとしてもキモイと言うことはないだろ。おじさん傷つくよ?(泣)
ていうか、ハンナはちゃん付けしていいのに、俺はダメとか。
露骨な差別に傷つくべきか、それともハンナとギャルルの仲がいいことに微笑ましいと思えばいいのか迷ってしまうな。
はあ、とりあえずやるべきことからやるとするか。
「それじゃあ、ルル。これを千切りしてくれ」
「わかった。さっきあんたがやったようにすればいいんだな」
「ああ、ん。頼んだよ」
ハンスだけなら玉ねぎの辛さなんて気にしなくて良いだろうけど、ハンナとギャルルもいるんだから気をつけないとな。
俺は玉ねぎをスライスしてからフライパンにのせて、それを魔道焜炉の上に乗せた。
焼きすぎると玉ねぎの食感が悪くなるから、ほどよく焼き目がつくぐらいでいいだろう。
ほのかに広がる玉ねぎの甘い香りに微笑んでいると、後ろからハンナが話しかけてきた。
「ナイトさん、ハムとチーズ切り終わりました」
「僕も終わった」
「ああ、俺はもう少し時間がかかりそうだから、ちょっと待っててね」
ただ食材を切るだけのハンナやギャルルと違い、玉ねぎを中までしっかり焼かないといけないので、少し時間がかかった。でもそれもほんの数分で、俺は黄金色に焼いた玉ねぎを皿に盛り付けて、二人のところに運んだ。
具材の準備ができたから、残されたのはサンドイッチを作ることだけ。
「じゃあ、さっそく始めてみようか。二人は俺がやるのを見てから作ってくれ」
二人にそう言った俺は、パンにマヨネーズとハニーマスタードを塗り、サンドイッチの具材を一つ一つ入れた後、持ってきた紙でサンドイッチを包んだ。
「これでハニーマスタードサンドイッチの完成だ」
俺が作るのを見ていた二人が真剣な顔でサンドイッチを包んだ。
「できました!」
「ゴックリ。ぼ、ぼくもできた」
しばらくして、二人がせっせと作ったサンドイッチを見せてきた。
好きなものを少し多めに入れてもいいと言ってたからか、ハンナは野菜とお肉がバランスよく入ったサンドイッチを、ギャルルはお肉たっぷり、野菜は少しだけ入ったサンドイッチを作った。
ちなみにギャルルのサンドイッチは、中身が外に飛び出そうなボリューム感のあるサンドイッチだった。欲張りである。
とにかく二人の性格や味の好みが一目でわかるような良いサンドイッチだった。
「よし、それじゃあそろそろお昼だし。……ハンス呼んでお昼にでもしようか」
ぶっちゃけちょっとさっきあんなことがあったのに何の顔で呼ぶのかって感じだけど。
だからといって今呼ばないと、後でもっと気まずい雰囲気になっちゃうからなぁ。
「はい、ナイトさん! 私が呼んできます!」
ついさっき、ハンスが怒っていたのを気にしていたんだろうか、ハンナが真っ先に立ち上がり早足でハンスを呼びに行った。
「お父さん、早く来て! 早く!」
と叫びながら、不機嫌そうな顔のハンスを台所に連れてきた。
さて、果たしてハンスとナイトは仲直りできるだろうか!
その結果は次回に! (ドドーン!)
***
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