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黒騎士と姫と採寸3




「それでは、私はこれで失礼いたします」

「は、はい。ありがとうございます」


 ベベと俺の採寸を終えたエマさんが、頭を下げて部屋から出て行った。

エマさんを見送った俺は、ふらふらと歩き、ソファにぐったり腰を下ろした。

 すると、エマさんと入れ替わるように部屋に入ってきたロベランが、さりげなく俺の前にお茶を置いた。


「御主人様、お疲れ様でした」

「ああ、ロベラン。ありがとう。だが、その前に言うべきことがあるんじゃないか」


 俺は聞きたいことがあるんだが。


「出過ぎた真似をしてもし訳ありません。ですが、このロベラン、この件については何の後悔もございません」


 後悔はしてねえのかよ。


「いくら御主人様が下級魔族のふりをなさっているとはいえ、御主人様はこの霊墓城の主でおられます。ですので、この城の誰よりも良質な品を身に着けるのは当たり前のことだと思います」


 なるほど、そうなのか。ロベランの考えはよく分かった。しかし。


「俺が聞きたいのはその話ではない」


 確かにさっきまではその話をしたかったけど。

 今聞きたいのは別の話だ。


「この子の聖力について城の者たちに警告しておけと言ったはずだが。今日のあの出来事はなんだ。まるで出来てないじゃないか」


ロベランをじっと見つめながら聞くと、ロベランが腰を下ろしながた答えた。


「おっしゃる通り、伝えておきましたが、警告が足りなかったようです。まさかこんなことが起こるとは思いませんでした。私の落ち度です。申し訳ありません」

「死人が出るところだったぞ。まさかこんなことになるとは思わなかった、で済むと思うか」


 死んだ命は戻らない。

 俺はそれを戦争でこの身をもって痛いほど痛感した。

 禁術を使っても、死者の中からアンデッドとしてよみがえる者は数少ない。ましてやそれが一度死の鎌から逃げたことのあるアンデッドなら、そのものが生き残る可能性は限りなく低くなる。

 そうなったらいくら謝っても死んだ命は戻らないのだ。


 そんなことを考えていると、ロベランがさらに深く頭を下げた。


「今後、このようなことが起こらないよう、気をつけておきます。本当に申し訳ございませんでした、ご主人様」


 そこまで言ったロベランが一息ついて。『しかし』と言を続けた。


「しかし、使用人の気持ちもお考えてください。ご主人様。この霊墓省の使用人は皆、ご主人様の名に恥じない働き者であると自負しております。主人の命令よりも自分の命を優先しろというのは、私たち使用人にとっては不名誉以外の何物でもございません」


「だからといって、たかが服の仕立てでお前達が傷ついては本末転倒だろう」


 何よりも俺は、できることならこの城にいるみんなに、死とか痛みとかするものを気にせず生きてほしいと思っている。

 それなのに、たかが服の仕立てで使用人が死ぬ思いをすることになるなんて、俺としては到底笑えない話なのだ。


 しかし、ロベランは僕と考えが違うらしく、床に膝をついて言った。


「ですが、ご主人様。この城の者たちは皆、ご主人様に仕えるためにいるのです。私たち使用人一同、ご主人様の命であればどんな些細なことでも、この命を捧げる覚悟が出来ております。どうか私たちのこの忠義を尽くさせてください」


 そう出るのか。

 たしかに現代日本と違って、この世界ではまだ主人のために命を捧げることを最高の忠義と考える傾向があったな。

 ロベランも、いや、頑ななロベランだからこそなおさらそういう考えを強く持っているのだろう。

 だが、今回ばかりは俺も「はい、そうですか」で済ませることができない。


 霊墓城の使用人たちを統率しているロベランがこんな考えを持っていては、この霊墓城の使用人全員の命がいつ消えてもおかしくない風前の灯火のようなものになってしまう。

 俺はそれを許すつもりはないのだ。


 もうこれ以上、仲間が死ぬのはまっぴらごめんだ。


「黙れ、ロベラン。いつからお前が俺の所有物に口出しできる立場になった。城のものはすべて俺の物だ。俺の物の使い方をお前なんかが勝手に決めるな。それを決めるのはこの俺だ」


 そう告げた俺は体の中に縛っていた力の枷を静かに解いた。

 普段、意識的に体の中に閉じ込めていた、周りを押しつぶすような黒いオーラが俺から発せられる。


「……くっ!!」


 するとロベランが何か重いものに押しつぶされた人のようによろめいた。

 眉間に皺を寄せ、冷や汗を流すロベランの顔は、すでに死者であるにも関わらず、何だか青白くなったように見えた。

 なんだか老紳士をいじめているような気がして、気分がとても落ち着かない。

 しかし、まだ気を抜くことはできない。

 俺は力をさらに強く発散しながら、ロベランに釘を刺した。


「わかったか」

「……は! かしこまりました」


 ロベランが肩を震えながら深く頭を下げた。


 本当に反省したのか、それとも単に力に負けて震えているだけかわからないが、さすがにここまでやったらいくらロベランでもあんなことは二度と言わないだろう。


そう思った俺はロベランの下げられた頭をしばらく眺めた後、力を体に戻した。


「今度はこれで見逃してやる。次からは気をつけろ。わかったな」

「……は!」


 俺の命令にロベランが少し力のない声で答えた。

 それほど長い時間じゃなかったが、それでもロベランにとってはかなり厳しい時間だったようだ。

 俺はそんなロベランが完全に我を戻す前に、詰め寄るような勢いで言った。


「それと、さっきの事で傷を負った針子メイドたちには、傷の治癒と慰謝料、そして一週間の休暇を与えるように。俺は俺の所有物が万全でない状態で出歩いているのを見るのが不愉快だ」

「は! かしこまりました」


 よし! これでこの件片付いたな!

 実は前々から気になってたんだよな。この世界の業務環境。


 この世界の業務環境は、現代日本人としての自我が『ヒイィィッ!! イカれたパワハラ!!』と悲鳴を上げるほどのものである。

 決められた定休日もなく、出勤時間、退勤時間もない上に、ボーナスや賞与もない。その上、仕事中に怪我をしても自己責任だなんて!

 まさにブラック企業の鏡とも言える業務環境なのだ。

 だから俺は以前から、いつか必ず霊墓省の業務環境を変えてやると心に決めていたのだ。


 何故そんなことを決めていたかって?

 理由は色々あるが、一番の理由はあれだ。

 ただでさえ人間を殺せないというリスクを抱えていると言うのに、その上、奪命王としての生活が嫌で、下級魔族のふりをしてナイトとして勝手に生きている自覚が俺にはあったからだ。


 あとで本性がバレて、今持っている地位や威厳がなくなったりでもしたらマジでヤバイ。


 自分たちが従っていた奪命王がこんなしょうもない奴だと知った使用人たちに火炙りされる可能性が高い。


 火炙りなんて絶対に嫌だ!

 だから、これからも社内でのパワハラは必ず止める! 絶対にな!


 この辺りはだいぶ雰囲気が変わってしまいましたね。

前のと比べて良い方向に変わっていたら嬉しいですが、皆さんはどう思っていますか?


+あと、よく考えたらタイトルが内容と合わないような気がしたので、少しタイトルを変えてみました。



***


 読んでいただきありがとうございます!

 この小説を読んで


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 上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!


 よろしくお願いします!ヽ(o^▽^o)ノ


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