黒騎士と姫と離乳食作り2
「で、できた……!!」
結局俺が離乳食作りに成功したのは、それから2日後だった。
料理をするたびにベベが泣いたり、変な声を出したり、おむつをぬらしたりしたからだ。
その2日間で俺が知ったことが2つある。
一つ、子供の世話をしながら料理をするのはとてつもなく大変だ。
二つ、何んだかベベが寝返りを打とうとしているような気がする、ということだ。
赤ちゃんってこんなに早く寝返りを始めるんだなぁ、と思った。
この2日間、ベベが突然左の手足を右に上げたり下げたりしてうめき声を上げるのが増えた。
最初は姿勢が悪いからだろうかとも思ったが、どうやらそうではないようだ。昨日は背中が少し浮き上がったりもしたし。 結局出来なかったけど。
俺は最近それをほほ笑ましく見つめている。
「問題は、寝返りができないと泣くってことだけどね」
たかが寝返りが思い通りにならないくらいで泣くなんて、赤ちゃんという生き物は謎だ。
おかげで料理中にベベをなだめようと飛び出して何度鍋を焦がしたことか。 ハハッ。
最初は魔道鍋の火をしっかり消しても、すぐまた泣き出すと慌てて消すのを忘れて行っちゃうんだよな。はあ。
「まあ、それでも結局、完成したんだけどね」
それも一つじゃなく、ノールさんが教えてくれたレシピと、マレさんが教えてくれたレシピ、両方とも用意しておいた。
ちなみに、マレさんがハンナのお母さんから聞いたというオートミール粥の離乳食レシピは、やはりオートミールを煮込んでからすりつぶすのが正解だった。
マレさんの言ってたレシピどうり水につけた後すりつぶすのも一度やってはみたが、無駄に力が入り、うまくすりつぶせなかった。
それに比べて、一度煮込んだオートミールは、ざらざらした感じはあるものの、なんとかすりつぶすことができた。
そうして完成したのが、この具なしオートミール粥だ!
煮込んだオートミールをすりつぶした後、一度濾し、ざらざらした食感をほぼ取り除いたオートミール粥は、見た目だけ見るとほとんど具のないスープに近かった。
ちなみに、ノールさんのレシピは、オートミールがちょっと入ったミルクスープに近いものだった。だからか具材がほとんど感じられない感じに仕上がった。
「にしても、どっちも ちょっと濾しすぎた気がするなぁ」
でもまあ、固いよりはマシだろう、うん。
それよりも今大事なのは、ベベがこの離乳食を食べてくれるかどうか、だ。
うろ覚えだけど、初めて離乳食を与えるのはとても難しいと前世で聞いた記憶がある。
そしてその記憶の中には、初めて離乳食を始めるときは少しお腹が空いているときがいいと聞いた記憶もあり、俺は悪いけどベベがお腹が空くのを待っていた。
時計を見ながらハラハラしていると、お腹を空かしたベベが泣き始めた。
「ぷへぇ、ぷぇええええええーー!!」
「泣くないで、ベベちゃん。ほら、ご飯だよ~」
俺はベベ用に用意したティースプーンでマレさんのレシピで作ったオートミール粥をすくい、ベベの口元に移した。
ぐずぐず泣いていたベベが、香ばしい香りにつられて首を動かした。
「よしよし、おいしいお粥だよ~」
「プイッ!」
しかしベベは少し匂いを嗅いだだけで首を振り、また泣き出した。
え、 なんで? なんで食べないんだ! 興味はちゃんとあったのに!?
ベベの口の周りでスプーンを動かしてみたが、意味はなかった。
ベベはオートミール粥には目もくれず、やがてバタバタと暴れはじめた。
しばしベベともみ合った俺は、オートミール粥を片手に持ってガクッと頭を下げた。
「離乳食食べさせるの難しいぃ」
いや、あきらめるな!
俺にはまだもう一つレシピが残っている!
それもノールさんの秘蔵のレシピがな!!
俺はガクンと下げた頭を上げ、マジックバッグからノールさんのレシピで作った離乳食を取り出した。
正直こっちは俺の考えでは離乳食というよりスープに近いものだった。だから、マレさんのレシピを食べて欲しかったんだけど、背に腹は代えられないし、とりあえずこっちも試してみよう。
「ほら、ベベちゃん、今度はこっちを食べてみようか? おいしいまんまが飛んでいきますよ〜」
俺は華麗な手動きでベベの気を引いて、ノールさんの離乳食をベベの口に運んだ。
「ぷぅ……?」
すると、スプーンに乗った離乳食を観察するように見たベベがクンクンと匂いを嗅いだ後、小さく口を開けた。
ミルクの匂いに警戒心を解いたようだ。
「よし! この隙に……!」
俺はベベの口にそっと離乳食を流し込んだ。
すると、ベベが小さな唇をぱくぱくと動かしながら離乳食を食べ始めた。
「や、やった……!!」
ベベが離乳食を食べてくれた!!
ノールさんのレシピは牛乳95パーセントにオートミール5パーセントくらいの比率だから、これを離乳食と言っていいかどうかわからないけど、とにかく食べてくれた!!
あっ! 待てよ!? 今ベベがノールさんの離乳食に警戒心を解いた理由は何だ?
そうだ! ミルク特有の甘い匂いだ! 親しいミルクの匂いにベベが警戒心を解いてくれたのだ! それなら!
俺はマレさんの離乳食にノールさんの離乳食を少し混ぜてベベの口に運んだ。
そう、マレさんの離乳食にミルクの香りを加えたのだ!
ゴクッ、じゃあちょっと試してみるか!
「さあ、お姫様! これも食べてみましょか!」
食べてみましょう。ていうか、食べてください!
そんな俺の思いが通じたのだろうか。
クンクンとオートミール粥の匂いを嗅いだベベが、スプーンに向かって軽く口をあけ、はーむ! とオートミール粥を少し口に入れた。
モグモグ。ゴクン!
「ひ、ぴゃう……♥」
「ヤ、ヤッタ……!!」
食べてくれた! ノールさん! マレさん! ローナさん! ありがとうございます! おかげでうちの子が離乳食を食べてくれました!
俺は感動に震えながら、ベベに少しずつオートミール粥を食べさせた。ノールさんのミルクスープを混ぜたのがいいきっかけになったのか、ベベはマレさんのオートミール粥もちゃんと食べてくれた。
でもそれも数スプーンくらい。用意したオートミール粥が半分も減る前にベベが食べるのをやめた。
そして。
「ぷ、ぷぇええええーーー!!」
……また泣き出した。
「な、なんで泣くんだ!? さっきまで美味しそうに食べてたのに!!」
「ぷええええええええーー!!」
慌てて聞いても、やはりベベから答えは返ってこない。
何度かオートミール粥を食べさせようと試みた俺だが、ベベはマレさんのレシピで作ったオートミール粥はおろか、ノールさんのミルクスープも食べてくれなかった。
結局諦めてミノタウロスの乳を取り出すまでにはそう時間がかからなかった。
「はぁ、なんでいきなり食べてくれないんだろう」
赤ちゃん、マジ難しい
「ゴクゴク」
俺は楽しそうにミノタウロスの乳を飲むベベを見ながら、深くため息をついた。
「はぁ、離乳食を食べさせないわけにもいかないし、明日でもマレさんに聞きに行くか」
食べたがらないものを無理やり食べさせるわけにもいかないし。
とりあえず今日の離乳食チャレンジはこれで終わりだな。ヤレヤレ。
読んでいただきありがとうございます!
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが読みたい!」
と思った方は、ぜひブックマーク!
それと、↓の★★★★★を押してください!
するとなんと!作者のテンションがめちゃくちゃ上がります!
上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!
よろしくお願いします!ヽ(o^▽^o)ノ




