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黒騎士と姫と秘められし力1




なんか横からずっと見ていると、ちょっと居心地悪いんだけど。

はぁ、仕方ない。 今まで見たギャルルの性格から考えると、何かに気づいて俺の正体を追及するつもりなら、真っ先に聞いていただろうし。一応聞くだけ聞いてみるか。


「ええと、他に何か言いたいことでもあるのかな」


ぎこちない笑みを浮かべながらそう尋ねると、ギャルルが待っていたように、目をギュッとして叫んだ。


「ぼ、僕にもあれ売ってくれないか」

「え?」

「さ、さっきの網型の魔道具だよ! 僕にも売ってくれないかと聞いてるんだ!」


 あ、ああ、OMH229号のこたか。


 ま、俺の正体がバレたわけじゃないならいいか。


 それにしても、便利な魔道具を売って欲しいと言うのが耳を真っ赤にするほど恥ずかしいものなのか。買いたいなら買えばいいと思うんだが。


「いいよ、一個で銀貨三枚だけど、何個買う」

「一、あ、いや、ニ個くれ!」


 ギャルルはそう言いながら、銀貨6枚を差し出した。

 流石は四天王カプカ・タイガーの娘。

 ニ個なら銀貨六枚。つまり、円貨で六万円ほどの金額なんだけど、迷いも無く買うって言うとは、太っ腹だな。


 俺はそんなことを考えながらマジックバッグから魔道具を取り出し、ギャルルに差し出した。


「はい、どうぞ」

「え? 三つだけど」

「一個はおまけだよ。使ってみて気に入ったら、あとで買ってくれ」


 俺はそう言いながらOMH229号二個とOMH222号一個をギャルルに渡した。もちろん専用リムーバーも一緒に。

 OMH229号も何個か残ってたけど、OMH222号の方をあげたのは、そう、宣伝用だった。

 魔道具を受け取ったギャルルは小さな声で「ありがとう」と言った後、応接室のある小屋の方へ走って行った。

 なんだろう、このくすぐったい反応。

 なんとなく首の後ろを掻いていると、ノールさんがニヤニヤしながら声をかけてきた。


「あら、ナイトさん。モテモテね」

「いや、モテモテじゃないですよ」


 からかっているのは分かるけど、そこはあまりいじらないで欲しい。

 こっちはソロ歴200年以上なんだから。流石にちょっと傷つく。




***




 ノールさんが買った魔道具を渡した後、その代金と離乳食レシピ、そして牛乳とベーコンまでもらった俺は、ノールさんのミノタウロス農場を出た後、寄り道もせずまっすぐ森の中にある家に戻った。

 これ以上トラブルはゴメンだったからだ。


「……疲れたぁ」


 本当に疲れた。

 正直もう動きたくない。

 このまま寝るのもアリだな、とも思うくらいだった。

 しかし、そうするわけにはいかない。

 まだやることがたくさん残っているからだ。


「離乳しょくぅ……作らないとぉぉ」


 マレさんは離乳食はこの時期から始めるべきだと言ってたし。


 もちろん今日から始める必要はない。だが子守り初心者の俺は子供の成長というものがとう進むのかわからない。だからせめてできるだけ時期に合わせて離乳食を始めてやりたい、と思っている。


「これでも一応、魔王様から与えられた任務だしな」


 というわけで、俺はまずマレさんから聞いたレシピと、ノールさんからもらったレシピを両方とも作ってみることにした。

 ノールさんは自分のレシピが人気なんだと言ってたけど、どっちがベベの口に合うかかわからないからね。


「まずは、時間がかかりそうなマレさんのレシピからやってみるか。ええと、とりあえずオートミールを水につける、と言ってたな」


 作った後は時間停止機能のついたマジックバッグに保管するつもりだし、ちょっと多めにするか。


 俺は大きなボウルにオートミールと水を入れた後、ほこりや虫が入らないように上に布をかぶらせた。


「これはこのまま30分くらい置いておくとして、その間ベベのベッドをセットしよう」


 位置は俺のベッドのすぐ横が良さそうだ。何かあってもすぐわかるし、位置も移動経路の邪魔にもならないから。


「ベベちゃん、ちょっとおとなしくしてってね」


 俺はベベをしばし俺のベッドに降ろした後、マレさんからもらったベビーベッドをマジックバッグから取り出し、そっと床に置いた。


 最初は中古はあんまり良くないかなと思っていたが、こうして置いてみると意外に悪くない。

 使い込まれた木製家具ならではのぬくもりというか、あたたかさというか、そんな感じが心地いい。


 ただ、問題が一つ。 もらったのはベッドフレームだけで、中に入る寝具は貰ってない。さすがに他人の布団をそのまま使わせるのはちょっと気が引けたからだ。


「寝具はロベランに頼もうかな。ベビーベッドとかと違って、城に余っている布団とかを使って作り直せばいいし」


 寝具の用意ができるまでは、余った毛布を重ねて使おう。きれいな毛布はマジックバッグに何枚も入っているし、二枚三枚重ねて敷けば悪くはないだろう。

 俺は毛布を折りたたみ、ベビーベッドに入れ、ベベをその中にそっと寝かせた。


「さあ、ベベちゃん。どうかな」

「ぴゃあーー?」


 慣れないベビーベッドにベベが首をかしげながらバタバタとした。


 うーん、もしかして毛布だけでは寝心地が悪かったのだろうか。


「でも、しばらくは我慢して欲しいな。出来るだけ早く作るとしても、このベッドのサイズにぴったり合うものを作るのは時間がかかるんだ」


 そんなことを言っていると、ベベが俺の考えを読んだかのように一瞬泣くのを止め、眉間にしわを寄せてぷぅーと頬から力を抜いた。

 なんだろう、今の反応は。


「ぷぅ、ぴゃー」

「……もしかして我慢してくれると言ってるのか?」

「ぴゃあぅ」


 俺の勘違いかもしれないけど、正解……みたいだな?

 まさかとは思うが俺の言葉を理解してるのか?  何だろう、ありがたいけどちょっと怖いな。

 ベベの頬をツンツンしながらそんなことを考えていると、今度はベベが不満そうに頬を膨らませた。


「ぷうーー!!」

「お、おぅ、自分は怖くないってことか? そうか、そうか、そうだよなぁ。ベベちゃんは可愛い可愛いお姫様なんだもんな~」


舌足らずな声でそう言うと、俺のからかうような態度が引き金となったのか、頬をフグみたいにふくらませたベベが、


「ぱあっ!! ぴゃ!! ぴゃあーー!!」


と叫びながら俺の髪を引っ張った。


「ぎゃあああ! 痛い痛い痛いよ!」


ていうか、なんでこんなに痛いんだ?! と思いながら目を開けると、ほのかに光っているベベの姿が見えた。こいつ聖力を使っていたのか! だからこんなに痛かったのか!!


 ベベの小さな手で俺の髪を引っ張ったところで、俺の髪が抜けるはずがない。俺とベベの力の差は、まさに天と地ほどあるからだ。

 しかし、今のようにベベが聖力を使うと、その差はある程度ごまかすことができる。今のこの状況のように!

 流石にベベが聖力を使ったからって、ベベと腕相撲で俺が負けることは起こらない。しかし、それでも人間の身体の中で一番弱いところ、髪の毛を引っ張るという攻撃くらいできるようになるのだ。

 したがって、今のこの状況はかなりヤバイ。一大事だ。

 何がヤバイかというと、毛根がヤバイ!!


「ごめん!! 俺が悪かった!! だからベベちゃん! 放して! そんなに引っ張ったらハゲちゃうぅぅ!!」


 毛根はどんなに鍛えても鍛えられないから!! つるつるのハゲニナッテシマウーーーー!!


 やっと黒騎士と姫とギャルル・タイガーのパートが終わりましたね。

 こんなに長くなるとは思ってなかったので、8話まで行くとは驚きです。


 あと、リメイク前と比べると、ここもかなり変わりましたね。

 次の話はほぼすべてが新しく書いた内容になりそうです。

 それでは明日もよろしくお願いします!


 ***




 読んでいただきありがとうございます!

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 上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!


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