黒騎士と姫とギャルル・タイガー5
「何、何だ!?」
「おぎゃああああーーーー!!!!」
デールの声にノールさんが悲鳴が聞こえてきた方向に顔を向け、ご機嫌に指を吸っていたベベはまた泣き出した。
いつもならベベの泣きをなだめるのが先だが、今そんな余裕はない。
俺は悲鳴が聞こえた瞬間、ベベにシールドをかけ、建物の外に飛び出した。
すると、暴走している数体のミノタウロスと、ノールさんの息子デールを片腕に抱え、ミノタウロスから逃げているギャルルの姿が目に入った。
しかも追われているのはデールだけではない。他の農場の職員達もミノタウロスに追われ、デールとギャルルを助けることができない状況だった。
「デ、デール……!!」
息子のデールの危険に、顔を青くしたノールさんが無我夢中でデールに向かって走っていった。
このままでは二人が危ない!
しかし、魔道具を使うには子供二人とミノタウロスの距離が近すぎた。
少なくとももう少し距離をあけないと使えない。
OMH222号は相手と離れていると使えるものだが、距離が近いと使うのがやや難しい。 なぜなら、どうしても捕獲するのに時間がかかってしまうからだ。捕獲が終わる前にモンスターの暴走に巻き込まれ、デールやギャルルが怪我をする可能性が高い。
それを知っているからこそ、ノールさんも前に俺から買った魔道具OMH222号を使わずに、ただただ走っているのだろう。
「くっ」
仕方ない。
ギャルルがいるところで力を使いたくはなかったが、人命救助が先だ。
俺は二人のいる方向に走りながら、そっと影に魔力を送り込んだ。
すると、影が俺を中心に音もなく伸び始めた。
ギャルルの視線を避けて伸びていった影は、誰にも気づかれずにミノタウロスの足を縛った。
『シャドウ・トラップ』
「ムオオオォォォォ……!!!!」
俺の影に捕まったミノタウロスは必死に抵抗したが、一度捕まった以上逃げる術はない。しかし、このままミノタウロスを陰で捕まっていると、ここの人々に疑われる可能性が高すぎる。
俺は俺の陰に足止めされたミノタウロスが二人から離れた隙に、魔道具OMH229号を放った。
ドカン!とミノタウロスの体に当たったOMH229号は大きく広がり、ミノタウロスの体を覆った。
この前使ったOMH222号はメOモンに似たものが出てくるやつだったが、今回は大型モンスターすらも一気に包み込むことができる大きさのネット型の魔道具だった。ちなみにべたべたくっつくのは一緒。おかげでミノタウロスはどんどん体に巻きつく粘着性のあるネットに耐えきれず、あっという間に横に倒れた。
「ム、ムオ、ムオオォォォォ……!!」
OMH229号の中に縛られたミノタウロスを見たノールさんが遠くから安堵のため息をついた。
しかし、まだ安心するのは早い。
捕まってるのはまだミノタウロス一匹だけ。
暴れているミノタウロスはまだ五匹も残っていた。
それを全部捕らえる前に安心はできない。
しかし、他の人に疑われずに迅速にこの状況を片付けるのは流石に無理があった。
どうしたらいいんだ。
そんなことを考えていると、後ろからギャルルの声が聞こえてきた。
「何、何だ! これは!?」
本能的に安全な場所を探し、デールを連れて俺の方に逃げてきたギャルルが言った。
「何、何だ、アレは! あんたがやったのか!?」
何か聞きたいことがあるようだが、今そんな暇はない。
「ルルさん、ちょっと手伝ってくれないかな」
「な、なんだよ、手伝うって。何をすればいい」
「これをあそこで暴れているミノタウロスに当ててくれ。できるか」
あのカプカ・タイガーの子だ。できないとは言わせないぞ?
「ああ、もちろんできる」
少し何かを考えているように見えたギャルルは頭をうなずき、俺の手からOMH229号を何個かもらい走って行った。
「ノールさん、お願いします」
「ええ、わかったわ」
ノールさんにベベを任せた俺は、その小さな背中を追うように足を運んだ。
俺が狙うのは、ギャルルが狙うミノタウロスのすぐ近くにいる奴だ。
いくら魔道具があるとはいえ、万が一の事態が起こるかもしれないからな。
なにかの問題が起こったら、すぐに助けに入るつもりだった。
俺はギャルルを片目で見つめながら言った。
「そのボールが当たる距離まで近づいたら、そのまま投げてくれ」
「……わかった!」
そう答えたギャルルは、迷うことなく手に持っていた魔道具をミノタウロスに投げた。
ええっ、もう投げるのか!? 今のこれ、当たると確信して投げたんだな!? 獣人族すごいな!!
そんなことを考えていると、素早いスピードで飛んでいった魔道具がミノタウロスの鼻に直撃した。
「ムオオォォォォ……!!」
鼻に魔道具を直撃され、鼻血を垂らしながら苦しそうに叫ぶミノタウロスを、魔道具から出た網がびっしりと縛りつけた。
かなり距離が離れていたのに、命中させるだけで終わらせず、ミノタウロスに鼻血まで出させるとは。 あの一発にすさまじい力が込められていたことがよくわかった。
……もしかしてギャルルには魔道具いらなかったのでは?
遠距離からの攻撃一発があの威力なら、普通にミノタウロスを倒せると思うんだけど。 さっきはデールを助けるのを優先して戦えなかったとか?
そんなことを考えながら、俺は魔道具を当てても怪しまれない距離まで近づいてきたミノタウロスに、適度に力を抜いた魔道具を投げた。
放物線を描いて飛んでいったボールがミノタウロスの頭に軽く当たり、パッ!とネットを広げた。
うん。ジミだな。
これくらいならさすがに怪しまれることはないだろう。
俺はそんなことを考えながら、他の人たちの反応を見た。
みんな魔道具を不思議だという顔で見ているだけで、ミノタウロスと戦っている俺を怪しむものは一人もいなかった。
よし! このまま行くか!
そんなことを考えながら、俺はまたギャルルの方に視線を戻した。
すると視線の先に、拳をぎゅっと握るのを繰り返しながら、自分の手と先ほど魔道具で捕らえたミノタウロスを交互に見つめるギャルルが見えた。
何だかボーっとしているのが、ミノタウロスをたかが魔道具一つで捕まえたという事実が実感が湧かないようだった。
まあ、理解できないわけではない。 今は魔道具を使って簡単に捕まえているが、一般的にミノタウロスはかなり優秀なものでないと倒すのは難しいと言われてるモンスターだ。いくら家畜化されたとはいえ、ミノタウロスのその純粋なスペックの高さはどこに行く訳じゃないし。だからこそ常識との乖離を感じているのだろう。
しかし、今大事なのはそんなことじゃなかった。
ボーっとしているギャルルの後ろから迫ってくる黒い影が見えた。
ギャルルが魔道具に夢中になっている隙を狙って、普通のミノタウロスと比べても頭一つ分は大きいミノタウロスが、ギャルルに向かってその大きな拳を振り上げた。
「ムオオオォォーー!!」
遅れてミノタウロスに気づいたギャルルが急いで防御態勢を取ったが、それはあまりにも遅かった。
ミノタウロスの拳がギャルルの頭に向かってまっすぐ振り落とされた。
「ぎゃああッ!! ダメ!! ギャ、ルルちゃん避けて!!」
後ろからノールさんが驚いて泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
パニックのあまり、ギャルルの本名を呼びそうになったノールさんの声に混じって、しばらくおとなしかったベベの泣き声がまた聞こえ始めた。
おそらくノールさんの大きな声に驚いたのだろう。
チッ!と軽く舌打ちした俺は、マジックバッグから適当な腕輪を取り出し、腕につけた後、ギャルルがいる方向に体を飛ばした。
みなさん、こんにちは。
ええと、何か話してみたかったのですが、恥ずかしくてちょっとお話するのが難しいですね。
今も緊張で手がプルプルしてます。
投稿するときはこんなに緊張しないのに、不思議です。
せっかく後書きに何か書いてみようと思ったので、設定に関するちょっとした雑談でもしてみたいと思います。
ギャルルの名前ですが、実は獣人王カプカが初めて聞いたギャルルの泣き声が『ぎゃるる』だったので、ギャルルになってしまったという設定があります。
小説の方に出てくるかどうかはわかりませんが、私的にはかなり面白い名前をつけたと思ってて、結構気に入ってます。
さて、次回はそのギャルルの視点での話です。
良かったら次もよろしくお願いします!
***
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