黒騎士と姫とギャルル・タイガー3
さて、それじゃあこれからアレ、すなわちウンコを片付けなきゃいけないんだけど。
ふと隣を見ると、ギャルルが顔を青くして、鼻をつまんでいた。
慣れているノールさんやデールならともかく、普通の獣人にはキツイ匂いだったようだ。
はあ、仕方ないな。
俺は心の中で深くため息をついた後、ギャルルを隠すように一歩前に出た。
「アレをやる始める前に、服を着替えたいんだけど、仕事着とかあるかな?」
「ああ、そりゃああるよ、ほら、これ」
デールはそう言いながら、俺の前に長靴を置いた。
まさかとは思うがこれだけじゃないよな?
これからまた何かくれるんだろうな? という目でデールを見てみたが、デールはさっさと靴を履かずに何をしているんだという顔で俺を見るだけだった。
「……」
マジかぁ、この服を着たままアレをやれというのか。
今すぐ辞めたいなぁぁ。
そんなことを考えながらノールさんの方に視線を向けたが、そこにいるのは、ノールさんの期待に満ちた眼差しだけだった。くっ! 眩しい!
はあ、仕方ない。やればいいんでしょ、やれば!
とはいえ流石にこのままやるのは気が引ける。
このままだと服がめちゃくちゃになるだろうし。そうなると俺の服を洗ってくれる洗濯係の人たちに申し訳ないことになる。
というわけで。
「よっと!」
俺はマジックバッグからきれいに畳まれた白い服を取り出した。
靴から上着まで一体となってる服は何を隠そう、一般に言うつなぎだった。
しかし、どんな汚れでも水で洗うと落とすことができるという、この世界では割とハイスペックな物で、なんと服の表面にスライムをコーティングするという新技術を使っている。
まあ、新技術と言っても、スライムパウダーを置いてあるところにうっかりボンドをこぼしてできただけなんだけど。
ボンドと混ざったスライムがどのような作用を起こしたのは知らないが、伸縮性がよく、なかなか汚れないという驚きの素材が誕生したのだ!
ちなみにこの服地ができた後、霊墓省のメイドさんたちは全員、汚れやすいエプロンをこの服地で新調したらしい。
水で洗うだけで汚れが落ちるから、いつでもきれいにできて便利だそうだ。
なので、この服を着ていると、ミノタウロスのフンなんていくら踏んでも、水で流すだけでキレイになるってことだ! ハハハッ!
さて、さっそく着てみるか。
とりあえず足を入れて、そのまま上に引き上げてーー。
「……なんでそんな目で見るんですか?」
いくら内側に服を着ているとはいえ、服を着るのをじろじろ見られたらさすがにちょっと気になるんですけど。
そんなことを考えていると、ノールさんが曖昧な笑みを浮かべながら言った。
「あ、いや、何でもないわ。ただ、ナイトさんの趣味、変わってるなぁ、と思っただけよ」
「いや、でも母さん、あれけっこう面白いよ。 何かツヤツヤしてるし」
「……ダサッ」
ノールさん、何とか上手く庇ってあげようとしてるのはわかりますけど、全然庇われてませんから。そしてデール君、ありがとう。そう思ってくれて。ところで君、この前ハンナと来た時はノールさんのことをママって呼んでなかったっけ? もしかして新人の前だからってカッコつけてる? それとギャルル、君はノールさんを見習えよ! いくらなんでもダサイは酷いだろ!!(泣)
とにかくここで何も言わないと、俺の趣味がつなぎになってしまう。それだけは絶対イヤだ。
「いや、これ、見た目はあれだけど、性能はいいんですよ。
「ええ、そうよね。 そのデザインに機能性も悪ければ、さすがに……ねぇ」
ノールさん本音が出てますよ!?
「いや、本当にこれすごくいい服ですから!」
「ええ、わかったわ、信じてあげるから、そんなに頑張って言わなくてもいいわよ」
「いや、いいわけじゃなくて、これ本当にいい服なんですよ!この服、どんなに汚れても水でちょっと洗うだけですぐ汚れが落ちるんですよ!」
見た目はちょっとアレでも、本当にいい服ですからね!
俺の言葉をさらっと流していたノールさんも、水で洗うだけで汚れが落ちるという言葉に興味を持ったのか、興味津々な顔で近づいてきてじっくりと俺の服を見た。
「えっ、本当に水で洗うだけで、汚れが落ちるの?」
「はい。本当ですよ、試してみますか?」
「ええ、お願いするわ」
そう頼まれて畜舎の方にやってきたのだが、ウウッ。今からここを歩かなきゃいけないなんて。気持ちワルイ!
でもすべては誤解を解くためだ。それに、これが売り上げにつながるかも知らないし。
「そ、それじゃ、い、行きますッ!!」
決意を固めた俺は、なかなか前に進まない足をなんとか動かして、畜舎を一通り歩いてから外に出た。
当然だが、畜舎の中を歩いた俺のつなぎは、ミノタウロスのフンで下がグチャグチャになっていた。
ウウッ、気持ち悪い! でも、これもノールさん達を説得するためだ!
そうやって自分を慰めながら、俺はノールさんに言った。
「ノールさん、お水ください。」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。」
ノールさんから水をもらった俺は、そのままえいッ!と汚れた裾に水をかけた。
すると、裾に付いていた汚れが一気に流れ落ちて、汚れていたつなぎの色が白く戻った。
まだ少し汚れが残ってはいるが、それも何回か水をかけるときれいになるだろう。
「うわっ! すごい! ねえ、ママ!」
「へえー。すごいじゃん」
デールとギャルルが不思議そうにつなぎを見た。
こほん! そうだろ? 凄いだろ! 絶対俺のファッション・センスがワルくてこれをきたわけじゃないんだからな!
そんなことを考えていると、突然ノールさんが俺の手をぎゅっと握ってきた。
「ナイトさん!!」
「え?! は、はい!!」
「私にそれ売ってくれないかしら! 前のみたいにそれも売ってるんでしょ?! 早く売ってるって言って!!」
「は、はい! 売ってます!!」
なんだこの威圧感!! それだけこのつなぎが気に入ったのか? まるで初めて汚れが一発で落ちる魔法のスポンジを見たお母さんみたいに食いついてきたぞ?!
とにかく売り物という俺の言葉に少し冷静になったのか、ノールさんが一歩離れてコホン!と空咳をした。
「ごめんなさい、ナイトさん。いつも洗濯にはあれこれと苦労していて」
「ああ、はい。わかります」
うちの城の使用人たちもみんな同じ反応だったから。 ただ、あっちは研究所に大量生産を命じてほしいというロベランを通した遠まわしな要望がきただけだけど。
とにかく売ると決まったら、一つだけ伝えなきゃならないことがある。
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