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黒騎士と騒がしい森3






 俺はそんなことを考えながらマジックバッグから聖石を取り出した。

 そして石になった獣人少女の足に当て、聖石の中に秘められた聖力を引き出した。

 聖石からほのかな光が発せられると同時に、石になった獣人少女の足と肌が徐々に元に戻っていった。

 聖石に宿る聖力が獣人の体を癒したのだ。

 魔族には傷と痛みだけを与える聖力だが、それ以外の種族には強力な癒しと浄化を与える。

 これをポーションでやろうとすると、こんなに綺麗にならないし、時間ももっとかかるし、加えてものすごく痛い。

 今も俺の手に痛みを与えている副作用さえなければ常備しておきたいくらい良いものだ。 聖力というのは。


 とにかく獣人少女の体が全部治ったことを確認した俺は聖石をマジックバッグに戻し、「もう見てもいいよ」と言った。


「……あっ!? 治った!?!?」


 獣人少女が驚いて再び尻尾を立てた。

 自分の足に触れる手に、砂漠の中でオアシスの幻想でも見るような切なさがあった。

 そしてそれが幻想ではなく現実であることに気づいた時、


「ふ、ふえぇぇぇぇーーーーん!!」


 獣人少女が大声で泣き出した。

 バジリスクに追われるという危機的状況のせいで、今まで我慢していた感情が、足が元に戻ったという安心感と一緒に爆発したようだ。


 それにしても、泣いてる子供の前でじっとしているのは、ちょっと気まずいな。

 むむっ。


「……飴でも食べるか?」


 泣いている子供に何を言っているんだ、と自分でも思ったけど、他に子供をなだめる方法が思い浮かばなかった。……ベベは幼いから例外として。ハンナは子供は子供だけど、ハンスよりシッカリモノだから例外として。

 さいわい獣人少女は素直に飴を受け取った。

 飴を受け取った子は泣きながら、すぐ飴の包装紙を剥がしてパクっと口に入れた。


「……ひく! ゴロゴロ、ゴロゴロ……」


 最初はぐずぐず泣いていたが、途中から飴の味に夢中になったのか、口の中で飴を転がす音だけが聞こえた。


 よし、落ち着いたみたいだな。


「君、名前は?」

「……ギャルル、ひくっ! だよ」

「そうか、ギャルル、君さえ良ければ町まで送ってあげようと思うんだけど、どう思う」

「……ひくっ! ありがとぅ」

「よし。じゃあ、出発する前に聞くけど。もう起きれるかな」

「うん! 大丈夫……じゃ、なかった。足に力が入らないぃ。……も、もしかして、僕、もう歩けない!?!!」


 む、そんなまさか、もしかして治癒が甘かったかな?


「ちょっと触ってみてもいいか」

「う、うん」


 ギャルルが緊張したように肩をすくめながらうなずいた。

 俺は骨や筋肉に異常がないことを確認した後、ギャルルにつま先を動かしてみるように言った。幸い骨や筋肉に異常はなかったし、つま先もちゃんと動いた。


「ふむ、問題はないな、たぶん疲れているからだろう」

「ほ、ほんと?」

「ああ、もちろん本当だ。後でちゃんと休めば治ると思う」


 しかし、こうなるとこの子の足でタイガー領地まで行くのは無理だ。

 こうならないようにわざわざ聖石まで使ったけど。こうなったら仕方ない。

 俺はギャルルの方に腰を下ろした。


「はい。乗りなさい」

「へ?」

「おんぶだよ。その足じゃあ町まで歩けないだろ」

「う、うん!」


 ギャルルがぎこちない動きで俺の背中に乗った。

 俺はギャルルにしっかり掴むように忠告した後、立ち上がった。


「じゃあ、行くぞ」

「きゃあああああああああああああああーーーー!!!!」



 足に魔力を込め、高速で走り始めると、ギャルルが背中から悲鳴を上げた。

 んー、速すぎたかな? と一瞬心配したが、幸い悲鳴に楽しそうな気配が混じっている。

 やっぱり獣人族は強いな。これならもう少しスピードを上げてもいいかもしれない。

 俺は足に流す魔力量をさらに増やし、強く地面を蹴った。

 すると、周囲の風景が伸びるように流されはしめた。


「きゃー!?  速、速い! 楽しいーー!!」

「そうか! よかったな!」


 さて、さっきこの子に話した時は村まで1時間はかかると言ったけど、それは子供のペースで歩いた時の話。俺のペースで走れば5分もかからない。

 ちなみにこれもこの子が耐えられるレベルまで抑えたスピードだったりする。


 そうやってものすごいスピードで走っていると、そろそろ目的地であるタイガー領が見えてきた。

 あと、ギャルルの名前を必死に呼んでいる彼女の保護者らしき人たちも。


 んー、いくら仮面を被っているとはいえ、あれだけ多くの人に姿を見せるのはちょっときついなぁ。

よし、ここでストップしよう。


「えっ! なんで止まるの?」

「もうすでに町に着いたからだよ。ほら、みろ。あそこに君を迎えに来た人たちがいるだろ」

「え?  あっ! 本当だ!! あーい!! みんな!! 僕、ここにいるよ!!」


 知り合いを発見したギャルルの神経がそちらに向かった。

 俺はその間、ギャルルを地面に下ろし、後ろに下がった。


 ヨシ。シュナイダーとベベを二人きりにしちゃったのも心配だし! 


 俺は今の隙に、Run away!!!!





 ベベの心配で足早に歩いてきた俺は、目的地に広がっている意外な風景に思わず足を止めた。


「……シュナイダー?」


 お前、何で変顔してんだよ。

 無言で尋ねると、変顔でベベと遊んでいたシュナイダーがドヤ顔で俺を見上げた。

 いや、まあ、別にいいけど。


「……君て子供が好きだったんだな」


 今まで小さい子と会うことがあまりなかったから知らなかった。

 そういえば、たまに子供に会うと興味を示すことがあったよなぁ。威圧してるのかと思ったけど、君はただの子供好きだったのか。

 おっと、こんな事を考えている場合じゃないな。まずはベベだ。


「ベベ、元気だったか」

「ぴゃあーー♥」


 さっそくベベを抱き上げながら聞くと、ベベは満面の笑みで応えた。


「むむ、何か俺といる時よりご機嫌じゃないか」

「ぴゃあーー♥ぴゃあーーう♥」


 楽しそうに足までバタバタと。

 大人げないかもしれないけど、……ちょっと羨ましい。

 そんなことを思いながらちらっとシュナイダーを見ると、ドヤ顔のシュナイダーがプヒィィーーン。 と鳴いて答えた。

 変顔とドヤ顔を連続して見た俺は思わず笑ってしまった。


「プハハッ。シュナイダー、お前は本当に子供が好きなんだな」

「プヒィィーーン!!」


 シュナイダーがもちろんだ! と答えるように鳴いた。





 

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