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黒騎士と姫と本城1






 さて、そんだこんなでやってきた死の谷にある本城だが。


 カシャ。カシャ。

 コツコツ。


 俺は自分の前に黒騎士を立て、後ろからそれに付き歩いた。


 どうして俺が二人いるのかって?

 そりゃ、俺の前にある黒い鎧を着ている奪命王がドッペルゲンガーを使って作ったダミーだからだ。

 ここに来る時はこうしてダミー黒騎士を作り、俺は下級魔族で奪命王の側近であるナイトとして行動している。


「お、お帰りなさいませ! ご主人様……!!」


 塔のメインホールに入ると、使用人たちがダミー黒騎士に礼儀正しく挨拶をした。

 恐怖に震えながらも丁寧な姿勢で頭を下げる。

 それが普段の使用人たちの姿だった。

 しかし、今日は違った。

 使用人の顔に恐怖以外の感情が見えた。


 ガラガラガラガラ〜。


「ぴゃあぴゃあーー♥」


 ダミー黒騎士の後を付き歩く俺の手のガラガラと、それに喜ぶベベのせいだろう。


「……」


 ほとんど機械のようにガラガラを振る俺を見つめる使用人たちの目には、呆気ないに近い感情が込められていた。


 うう、見ないで(泣) 俺だってガラガラを振りたいから振ってるわけじゃないんだ……!!

 ベベがガラガラの音が聞こえないと泣いてしまうんだから、仕方ないでしょ! 家ではハンスがくれた色付きのメリーがガラガラの代わりになってくれたけど! さすがにメリーを持って出かけるわけにはいかないから!(泣泣泣泣泣)


 俺がそんな恥ずかしい思いをしているにもかかわらず、俺のダミーである黒騎士は何も言わずただ前に進んだ。


「……」


 なぜなら、残念なことにダミーとして使っているドッペルゲンガーには話す機能がついてないからだ! ハハッ!

 色々試したけどこれが無理だったんだよなぁ。

 なので今のところ、奪命王は下の者に答えないのが基本になっていたりする。くすん。

 シクシク。わざと無視してるわけじゃないんだよ! ただ技術的に無理だっただけだから! ごめん! 使用人のみんな!! いつかしゃべる機能も研究するから!!


 そう心の中で強く決意していると、使用人の中から前に出てくる人が1人いた。


「お帰りなさいませ、ご主人様、ナイト様。そちらの方はお客様ですか?


 この城の執事長であるロベランが、ガラガラを取ろうとバタバタするベベを見て尋ねた。

 やけに意味を込めてベベを見る様子から、ロベランはすでにベベの正体を知っているようだ。まあ、そうだろうと思っていた。ロベランは有能な執事なんだから。

 今ここでベベのことを尋ねたのは、ただ周囲の使用人にベベのことを知らせるためだろう。


「……」

「おはようございます、ロベラン執事長! この子はベベと言いって、しばらく私が世話をすることになりました」


 ダミー黒騎士は同然何も言わないし言えない。代わりに俺が前に出て答えた。

 その姿に違和感を感じる者は一人もいない。黒騎士である奪命王が他人の言葉に答えることはまずないからだ。


 そもそも下級魔族出身の「ナイト」が秘書として奪命王の側につくようになったのも、このダミー奪命王があまりにも無口だったからだ。

 傍らで一挙手一投足を記録し報告してくれる人がいないと業務に支障が出るため、ロベランが雇い奪命王につけたのがこの「ナイト」、という設定があったりする。

 おかげでこの霊墓城でナイトという下級魔族はかなり同情されている。外から見ると、運悪く執事長であるロベランの目に入ってしまい、上司二人の間に挟まれてしまった可哀想な下級魔族なんだから。事実とはまったく違うがな。


 そんな事を考えてる間、近づいてきたロベランがベベに向かって礼を言うように軽く頭を下げた。


「そうですか、よろしくお願いいたします、ベベ様、執事長のロベランと申します」

「ぴゃあ♥」


 ロベランの挨拶に、ベベは満面の笑顔で手を振った。

 すると、一瞬驚いた表情を見せたロベランが、さらに濃い笑顔を浮かべた。

 うん、わかるわかる。この子、本当に度胸があるんだよな。見た目はそう見えないけど、ロベランもアンデッドとしての邪気は相当なものだ。なのに満面の笑みなんて。聖国の王女だからかな。つよい。


 ちなみにこの城で働く奴らは全員アンデッドで、ロベランが指揮する使用人は全員 ゴーストた。

 それも実体化可能なレベルの凶悪な連中。

 普通、一般の人が見たら失神するのが基本なのだが、そんな連中に向かって、まだ歩くこともできない赤ん坊がニコニコしながら手を振るなんて。驚かないほうが無理と言うものだ。

 まあ、ここの使用人達はみんな優秀だからすぐ慣れると思うけど。


「ロベラン執事長、執務室に案内してください。今日は執務室で仕事をするとご主人様がおっしゃってました」

「はい、かしこまりました、どうぞこちらに」






バタンー。


「ロベラン執事長、今日の予定を教えてください。追加された予定とかありますか?」


 俺はダミー黒騎士を執務室机に座らせ、自分はソファに座りながら聞いた。

 すると、執務室のドアを閉め俺の後から入ってきたロベランが丁寧な口調で答えた。


「敬語をおやめください、ご主人様。もう私たちの会話を聞いている者はおりません」


 そう言ったロベランが、ダミー黒騎士ではなく、俺の隣に自然と立った。

 執事長ロベランは、この城で俺の正体を知っている数少ない人の中の1人である。

 執事長は黒騎士を補佐し、秘書であるナイトに業務指示を出す立場。俺のアリバイを作るためには執事長の協力が不可欠だった。なのでナイトという身分を作った時から今まで執事長に助けられている。


 念のため執務室のドアが閉まっていることをもう一度確認した俺は、ロベランに今度はため口で言った。


「わかった。それでロベラン、今日の予定は?」

「特に変更はございません。ここにある書類を確認していただければそれでよろしいかと。あとは……」

「あとは?」


 俺はガラガラをベベに渡した後、目の前に置いてある書類を読みながら聞いた。

 あ、これは総合技術研究所の予算追加要求の書類だな。とりあえずこれは保留で。さて、次の書類は……。


「最近、ご主人様に決闘を申し込む者が一人、おりますが……」

「……え? 決闘? 俺に!?」


 ロベランの話に、俺は書類を置いて問い返した。

 決闘って、あの決闘!? なぜ俺に!? もしかしてまだ俺の凶悪な噂を知らないほど、噂に疎い愚か者残っていたのか!?

 昔ならともかく、最近はこんなことがなかったので、俺は慌てて聞き返した。


「はい。ご主人様に、決闘を申し込みたいと」

「……無視しろ。弱い奴には興味がないとか。適当に言い返せばいいだろう」


 俺は決闘なんて絶対しないからな。

 身を守るために奪命王という凶悪な異名を名乗ってはいるが、俺は元々戦いが好きじゃない。むしろ嫌いだ。いっそのことこの世で戦争なんて無くなればいいと本気で思ってるくらいだ。


「かしこまりました、そうお伝えします。それと、ご主人様にお願いしたいことが一つあるのですが」




 

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