3.5話 【プロジェクト・ルーマ】
護衛艦いずもで漂流していたドラゴンの角と翼と尻尾が生えた異世界人を保護し少しばかりの時間が過ぎた…
最初の内は言葉での意思疎通は出来なかったものの、絵による意思疎通と日本人特有スキルジェスチャーで彼女が『ルーマ』と言う名前の異種族だと言う事と、彼女の年齢が約250歳以上(だが身長135cmの女の子姿)である事が判明した。それにルーマは本に興味があるそうでとあるプロジェクトが開始された。それはルーマに日本語を覚えさせ、いずれくる異世界との遭遇時に言語の翻訳をし、外交交渉をしてくれる仲介役として育てるプロジェクトが進行中だ。その為まずは基礎的な日本語を教える為、教育免許を持つ自衛官と共に岸本達が教育にあたっていた────
ルーマ「ごん、お前だったのか。いつもくりをくれたのは。 ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。 兵十は、火なわじゅうをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。…おわり」
『須藤 明晴』(32歳)
階級 2等海尉
須藤2尉「…上手に出来ましたね〜。もうスラスラ読めて立派ですよ〜? ではルーマにはごんぎつねの感想を聞いてみたいのだけど…大丈夫かな?」
ルーマ「…」(コクリ)
須藤2尉「よし、ではルーマの気になった所を聞かせてくれるかな?」
ルーマ「…ゴン1人、寂しがり屋、友達いない。だからイタズラ大好き。鉄砲の兵十、ゴン、2人とも優しい、心痛い」
須藤2尉「すご…細かいとこまで…」(小声)
素直に勉強を受けている様子をコンテナの外から観察してた岸本と武藤は驚愕していた。理由は言わずもがな、ここへ来て少ししか経っていないと言うのに絵本だがきちんと日本語を覚え理解し扱えているのだから
武藤職員「保護して数週間も経ってないのにここまで完璧に日本語を覚えるなんて… もはや賢いとかのレベルではないですよ?」
岸本先生「あぁ…日本語の習得が早すぎる。私達からすれば意思疎通しやすくなるからありがたいが、一から異言語をわずかで…。人間じゃないからか?」
武藤職員「生物として脳の作りが違うのかも知れませんね…」
岸本先生「かもなぁ…。採血した研究員からの連絡は?」
武藤職員「まだありません。角や羽、尻尾の成分についてもこれと言った報告は…」
岸本先生「そうか、まだ時間が掛かるか」
武藤職員「それと政府からルーマのこれまでの事や異世界の事についていい加減調べろと怒られてます」
岸本先生「はぁ…それを知る為にも準備も時間も掛かるってのに… 仕方ない。もう喋れる様になってるし俺が直接相手してこようか」
コンテナの中に入り須藤2尉と変わってもらい、折りたたみ椅子にドサッと座りルーマとの会話を試してみる
岸本先生「だいぶ喋れる様になったねぇ〜 日本語も分かる様になったし、何か欲しいものはあるかな?」
ルーマ「…おかし」
岸本先生「お菓子?えーっとどんなお菓子だい?」
ルーマ「…ぱい」
岸本先生「!?」
↑
卑猥な物だと思いびっくりする
須藤2尉「!?」
↑
そんな卑猥な事を教えた覚えがなく責任を取らされると思いびっくりする
武藤職員「!?」
↑
コンテナ越しに驚いている
ルーマ「…チョコパイ」
岸本先生「あぁ…チョコパイね…」
須藤2尉「そう言えばチョコパイ外交してたな…」
武藤職員「はぁ良かった 上に報告する様な事じゃなくて…」
岸本先生「(俺疲れてるのかなぁ…?)」
一同胸を撫で下ろしホッとして話を戻す
岸本先生「チョ、チョコパイが食べたいのか?」
ルーマ「チョコパイ…食べたい…」
岸本先生「そうか。じゃあ用意するよ。…ところで、ルーマは何処から来たのか覚えてるかい?」
ルーマ「…」
黙ってしまった。まだそこまでの言葉が出来ないか、何かの理由で言いたくないのどちらかだと思い話を変えようとしたが、ゆっくりと今までの事を喋り出した
ルーマ「…サヴォレーの地で暮らしてた。巣でお昼寝、髭のモジャモジャに連れてかれた。鉄の首輪付けて、船に乗せられた」
岸本先生「…記録してるか?」
須藤2尉「は、はい」
ルーマ「船壊した。逃げた。帝国の船追っかけて来た。怖かったから逃げた。雷履いた。光ってる穴があったから入って逃げた。疲れたから海に落ちた。起きたらここにいた。…チョコパイ美味しい。たくさん食べたい」
須藤2尉「サラッと要求して来ましたね」
岸本先生「この子案外図太いなぁ…」(汗)
ルーマ「ルーマの友達、サヴォレーの地にたくさんいる。滅びた帝国みんなで守ってる。今の帝国も守ってる」
色々気になる情報が一気に出てきたが、一つ一つ聞き出す
岸本先生「ルーマ、サヴォレーの地ってどんな所だい? その滅びた帝国と何か関係があるのかな?」
ルーマ「サヴォレーの地、滅びた帝国の禁書庫。名を継ぐ帝国イディアール、その聖域、心の拠り所。ルーマとルーマの友達、そこの守り人。みんなにチョコパイあげたい…」
須藤2尉「…エルサレムみたいな所から来たのですかね?」
岸本先生「多分… じゃあその…イ、イディアール?って国を教えてくれるか?」
1度静かになり、無表情で考えている。多分いろいろ思い出しているのだろう。そうしてると先程よりも言葉の数が少なく、ポツポツと喋り出した
ルーマ「…帝国。海の支配者… 勇敢な人達がたくさん。けど皆バラバラ…」
須藤2尉「…雰囲気が変わりましたが?」
岸本先生「あまり興味ない事何だと思う… その海の支配者とか、皆がバラバラっていうの具体的には分かるかい?」
ルーマ「…」
首を横に振る。細かい事までは分からないそうだ。仕方ない、別の質問に変えよう
岸本先生「じゃあ…その帝国は平和が好きかい? 今会ったら仲良く出来るとか…?」
ルーマ「………」
岸本先生「…」
ルーマ「…チョコパイあげたら友達なれる」
岸本先生「ん〜…ごめんね〜、1回チョコパイから離れようか〜?^^ 帝国の人達は、握手してくれる人達かな〜?」
ルーマ「…」
岸本先生「…」
ルーマ「…帝国、喧嘩大好き。でも握手も大好き。だからバラバラ、でも1つ」
須藤2尉「これは…ど言う意味でしょうか?」
岸本先生「恐らく…武闘派だが礼儀を重んじるような意味なんだろう。…重要な情報が分かった。武藤!今の記録したか?」
武藤職員「ええバッチリ!」
岸本先生「ルーマ、ありがとな!」
ルーマ「チョコパイ…!」(目キラキラ)
岸本先生「あぁ良いぞ!好きなだけ食え! 俺は政府に報告する。後は頼んだ」
須藤2尉「え、ええ!?」
後は須藤2尉に任せ(主にチョコパイ)、コンテナから出て武藤を連れて事務所(仮)に向かうが、武藤が分からない顔をしながら質問してきた
武藤職員「先生? 興奮してらっしゃりますがイディアール?の事でなにが分かったのですか?」
岸本先生「お前聞いていなかったのか? イディアールはな、戦い好きで礼儀正しい国民性なんだ。つまりかなり利口な可能性が高い。こっちから行けば平和的なファーストコンタクトが実現出来るかもしれん」
武藤職員「でもそれが間違いなら…」
岸本先生「その時は〜…左遷されて一生日の目にあう事が出来なくなるだけだ」
武藤職員「えっ!? 致命傷じゃないですか!」
岸本先生「この歳になれば何も怖くはない。大丈夫だ 責任は俺が取る」
武藤職員「えぇ…」(汗)
岸本先生「さて仕事だ。『プロジェクト・ルーマ』を開始する!」
貴重な情報を得て、岸本達は異世界とのファーストコンタクトに向けて準備を開始した。特に政府への説得が重要だが、長年説得と説明が慣れている岸本の前では弱腰政権と呼ばれる今の政府はお手の物だった。そしてすぐに異世界との接触が近ずいて来たのだった…