2話 【帝国の主人公】
前回の1話同時刻…
ここは異世界『ヴァーレル』。この世界でオーストラリアの様な海に囲われた大陸を支配する国家『大イディアール海洋帝国』(通称 イディアール帝国または海洋帝国)。
人口約5億人を抱え、人間以外の様々な種族が暮らし、隠れた戦闘民族とも言われる程の国民性を持ち、膨大な兵力と艦隊により海を支配し、数多くの島々や海を隔てた近隣の大陸に小さくだが数多くの植民地を持っている大国である。
またこの帝国は世界を支配した古代帝国を起源とする歴史の長い国家なのだが、古代帝国の知識や技術の多くは継承されず、古代遺跡で厳重に保管される程度だ。(作ったり直したりは出来ないが、使う事なら出来る程度のレベル)。そしてこの歴史ある帝国は各国から不名誉な名で呼ばれている。『沈没した不老者』と…
そして話は物語へ移り、この帝国で皇帝の右腕として仕えるもう1人の主人公『ニルス・アデール=ヴァロリオ』(年齢は334歳)は、侯爵の身分であり、種族は" 異形種 "と呼ばれる化け物と人間のハーフである。本来差別されるはずの種族でありながら持ち前の強いカリスマ性により身分問わず多くの者に慕われ、次期皇帝へなれる程ではないかと言われている人物だ。
そんなヴァロリオだが、異世界と繋がるこの日、帝都バディフトの皇宮官邸にて機密性の高い『帝国存亡会議』に出席しており、帝国の未来についての議論を交わしていた。この会議においてヴァロリオの担当は皇帝命令で以前から監視を続けていた古代帝国の遺物『繋げる者』が再生しかけると言う奇妙な現象の監視であり、今回は経過報告だけで終わるはずだった────
侯爵ヴァロリオ「…報告としては特筆して言うべき事はありません。今まで通り繋げる者の周囲は第2兵団を、海は第6外交艦隊と海軍連盟に封鎖させております」
〘エヴァン・デルヴァン=クロード・イディアール〙(56歳 種族 人間)
クロード皇帝陛下「ん…。よろしい。繋げる者の監視はそのままで、ロルロダ・アヴァラン軍閥のどうだ? そろそろ、軍を動かすなり略奪なりすると思うのだが?」
〘グルニス・ルブローラン・ヴァノ伯爵〙
(年齢 320歳 種族 爬人)
ヴァノ帝国軍長「それはご安心を。沿岸警備は万全ですし、ロルロダと国境を接する軍閥には「略奪の恐れあり」と伝えております。彼らは何も出来やしないですよ」
〘セヴェラン・ル・テルス男爵〙
(年齢 132歳 種族 獣人)
テルス財務相「それはよいですが、繋げる者とロルロダを常に監視するのは財政的にきついです。今は植民地から入ってくる税収で何とかなっておりますが…」
〘ノルディルド・ノードル・ユルヴィル巨爵〙
(年齢 294歳 種族 魚人)
ノルディルド再建相「今はロルロダからの貢ぎ物は受け取っていません。それだけでも痛手なのに、異世界の問題が長続きするのでしたらそれこそ持ちませんぞ?」
〘アレクシス=アバラーム・シャドゥヴノン上爵〙
(年齢 76歳 種族 人間)
シャドゥヴノン国務相「そうです。繋げる者を急ぎ対処しなくてはなりません。もう既に帝国中の軍閥や各国に繋げる者の存在が知られてきております。このままでは攻め滅ぼされる恐れが…」
〘ドニ・ヴィクラート=サジュボル公爵〙
(年齢 645歳 種族 エルフ)
サジュボル内務相「ふむ…侵略を免罪符に大規模な改革をするのはどうでしょう? 権力や権限、帝国全ての軍をまとめるのです。いかがでしょう陛下?」
クロード皇帝陛下「権力の集中は内戦を意味する。同胞と殺り合う事は認めんぞ?」
サジュボル内務相「はっ…」
クロード皇帝陛下「・・・話がそれたな。ヴァロリオよ、そなたはこのまま繋げる者を監視せよ。必要であるなら特例状も出すが…」
侯爵ヴァロリオ「ご気遣い感謝致しますが、現状の戦力で大丈夫です。ロルロダだけではなく、異世界から来ようとしている者達にも対処出来ます」
クロード皇帝陛下「そうか。では頼んだぞ。…ではノルディルド巨爵、そなたの報告を…」
ノルディルド再建相「はっ。北部都市同盟連合からヴェルニュ家が離脱し、オー・ヴロン王国なる軍閥の宣言を────」
この後も会合が続き、各々の現状報告とその対策などを話し合った。数時間が経って会合が終わると皇帝に2人だけで話したいと言われ、見晴らしの良いバルコニーへ移ると深刻な面持ちなり、重大な何かだと察する
侯爵ヴァロリオ「…何がありましたか?」
クロード皇帝陛下「実はな、ビロヴァンス派の者が私の首を狙っているそうだ。既に帝国存亡会議の内部に潜り込んでいるようだ」
侯爵ヴァロリオ「あの中に…?!」
クロード皇帝陛下「しばらくは誰も信用出来ん。あなたに護衛を頼みたいが、今付けてしまえば暗殺側に変な警戒心を持たせてしまう。だからあなたにはそのまま繋げる者の監視を続けて貰いたい」
侯爵ヴァロリオ「…陛下がその様にお考えでしたら従います」
クロード皇帝陛下「感謝する。…それともう1つ。私はこの帝国を…」
兵長「陛下! ヴァロリオ殿! 一大事でございます!!」
慌てた様子でやってきた兵長に話を遮られた陛下だが、兵長の様子から緊急な事だと悟り冷静に報告を求めた
侯爵ヴァロリオ「兵長、繋げる者で何かあったのか?」
兵長「ハッ、その通りであります!。突然繋げる者が目覚めだし、形を変えつつあります!」
侯爵ヴァロリオ「ま、まさか…!?」
クロード皇帝陛下「こんな時期にか…!?」
とんでもない報告を受け、繋げる者が眠る方向に向き柵から身を乗り出す勢いで海を見る。眺めていると海面が泡を吹きつつ光を放っているのを見つけた
侯爵ヴァロリオ「陛下、あそこです」
クロード皇帝陛下「…あれが??」
驚いている場合ではない。繋げる者がある海底隧道都市『ルイカート』に住んでいる住民の避難と、監視を始めた時から海上警備の為に集めた艦船や飛行船を使ってこれから繋がるであろう入口を封鎖しなくてはならない。すぐさま命令を下さなければ
侯爵ヴァロリオ「兵長、ルイカート守備兵団に民の避難を! 海軍連盟第5警戒艦隊と空領団第4前衛艦隊に海上封鎖の命令を出すのだ!」
兵長「ヴァロリオ殿、それなのでありますが、副団長レヴァレス殿が既に命を出しております…」
侯爵ヴァロリオ「あやつめ…」
副団長レヴァレスにより既に軍が動いている。彼はヴァロリオの部下であり弟子でもある。自分が不在の際に繋げる者に何かあった時を託していたのだが、きちんと役目を果たしている事にフッと微笑み安堵した。繋げる者の事は副団長と軍に任せ、自分は陛下を守る事に徹するだけだ
侯爵ヴァロリオ「陛下、あなたの事ですから最後まで見届けるのでしょうが、身に危険が及んだ際は私の指示に従って貰います」
クロード皇帝陛下「分かっておる。さすがに昔のようにはいかん」
陛下の許可も得た。後は成り行きに任せるしかない。だがそれはすぐに来た。前回の蒼士の時と同様、爆音と光の柱、辺り一帯を飲み込む強烈な光、「コーーーン!!!」っという音と同時に太い光の柱に変化、最後に先程の音が耳を塞ぐ程大きく響き渡り中央部分に大きな空洞が開き落ち静かになった。繋がったのだ、日本と…
キャラクターの身分で『巨爵』やら『上爵』やら出てきましたが、これらはオリジナルのものです。身分の偉さを書いときます。
(上から偉い順です)
『大公』
『公爵』
『巨爵』
『侯爵』
『伯爵』
『上爵』
『子爵』
『男爵』
『下爵』
『卿』