luck3
カジノを出て黒塗りのSUVに乗り込んだ二人は先に出発したポーカーの男の後を追った。適度な間隔を開けながらも見失わないように尾行を続ける二人。
「全部がただの偶然って可能性は?」
「もちろんゼロじゃない」
「ていうかこんなことしてていいのか?」
「いいんだよ。犯罪を未然に防ぐのも立派な仕事だ。それに仕事があるなら連絡が来る。特に俺にはな」
「なんでお前だけ?」
「そりゃあ、仕事が無い時は外でギャンブルしてるからに決まってるだろ。テディを探すならカジノへ行けってな」
堂々と自分を指すテディだったが、二人の会話はエバの溜息で一度途切れた。
それからも尾行を続け、ポーカーの男の車は角に建てられた自動車整備工場へと入って行った。少し離れた場所に停車し車内から店の様子を伺う二人。
「にしても一体あいつはあのカジノで何を受け取ったんだ?」
「わざわざあんな回りくどいやり方で渡すぐらいだからな。まともなもんじゃないだろ。あとは手で隠せるサイズの何かだな」
「情報か? USBとか他の記録媒体とか」
「ありえるな。だがなぜ送らない? わざわざ会う必要があるか?」
「ネットなんて誰が見てるか分からねーからだろ?」
「今の時代だからこそアナログの方が役に立つこともあるからな。まぁ、あと考えられるのは宝石類か一部の人間にとって貴重な物か」
「形見とかか?」
「何かしらの意味を持つ物だな」
「ヤクの売買って可能性もある」
「金は渡して無かったが一方的に渡してた可能性もなくはないな。だがわざわざあんな場所でやる必要がないだろ」
「じゃー他は?」
「小型爆弾とか」
「それこそもっと場所が――」
するとエバの言葉を遮り二人が観察していた自動車整備工場が突如、怒鳴りつけるように激しい音を轟かせながら爆発に包み込まれた。道路には様々な物や火玉などが飛び散り工場からは大量の黒煙と燃え盛る炎が吐き出され続けている。
目の前で起きた突然の出来事に唖然としていたエバとテディはゆっくりと顔を向かい合わせた。
「俺の読みってやっぱ天才的?」
テディの言葉の後、二人は車を降りると爆発現場である工場へと近づいた。轟々と燃える炎と黒煙で中は確認できない。
「こりゃひでーな。まずは通報するか」
そしてテディは消防とFSAに通報しその後にシェーンへと連絡を入れた。
暫くしてサイレンと共に消防とFSAが到着。早々に消火活動が行われ間もなくして火は消えた。その頃には辺りを囲う野次馬が集まり出し、担当者も現場へ到着し、疑惑が事件へと姿を変えていた。
車両から降り二人の前で立ち止まった彼は外したサングラスを胸ポケットに仕舞った。
「さて、まずは話を聞こうか」
「担当はあんたか。ダロン」
「何か問題か?」
「いや、むしろやり易くていいね」
「そうだろ。それで? そっちはお前ら二人か?」
「あぁ。今回はそのままこいつと組むことになった」
それを聞くとダロンは視線をテディからエバへ向けた。
「前回は助かった」
お礼と共に差し出された手。
「仕事だからな」
それを返事と共に握り返す。
「今回は相棒が大変だが、よろしく頼むぞ」
「むしろ超優秀だから安心しろ」
エバとダロンは同時に軽く手を広げハイタッチの準備をするテディへ視線を向けるが何も言わず互いに顔を戻し手を離した。
「何だよ?」
「さぁ。話を聞かせろ」
「ったく......」
そしてテディはここに来るまでのカジノでの出来事を簡単にダロンへ話した。
「それだけか?」
「そーだよ」
「ダロン警部」
するとダロンの部下が男を一人連れ三人の元へやってきた。男は小柄の作業着を着たドワーフで落ち着かず煙草を吸っている。
「この店の店主です」
「何? 生きてたのか?」
「はい。たまたま外にいて助かったようです」
「ありがとう」
部下は捜査の始まった店内へと戻り、ダロンを含む三人はその店主に近づいた。
「FSAのダロンです。お話を聞かせてもらってもいいですか?」
「あぁ」
頻りに煙草を吸いながら小さく返事をする男はやはり落ち着かない様子。




