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とある作戦

 至る所で鳴り響く銃声と激声。爆発の破壊音。空に昇る混じり合った硝煙と黒煙。本来なら太陽も沈み辺りを照らすのは人間の英知と月明りだけのはずが、今宵は無数に上がった火の手が十分過ぎる程にその役割を果たしていた。

 だがそんな明るさを気に掛ける者は一人もいない。それを説明するかのように、そこには飛び交う呻き声と悲鳴ですら異質な存在になりえない地獄絵図が広がっていた。

 そんな誰しもが耳を塞ぎたくなるような音が外で飛び交う中、足並みを揃えた複数の足音は一枚の両開きドアの前で立ち止まった。

 先頭のスーツに防弾チョッキ、ガスマスクをした男の指示で完全武装した者が二人、ドア前へ進むと手際よく小型爆弾を設置。その間に男を含めた計四人は左右に別れ、爆弾を設置した二人もそれぞれがドアの正面から消えた。それを確認した男が声は出さず再度指示をすると並んだドアノブ部分が同時に爆発。激しさは外からの爆音に劣るもののドアは勢いに押され開き、ガスマスクの男を先頭に全員が銃を構えながら室内へと早足で突入した。

 既に火の手が回り始めている酷く荒れた部屋の中。

 だがそれよりも突入した全員の視線を一手に引き受けていたのは正面奥の光景だった。

 もう一人に抱き付く形で凭れかかる(シャツとネクタイだけの)スーツ姿の男。だがその男の背中からは刃が一本、天井へ向け突き出ていた。それは壁を這い燃え盛る炎に照らされ妖しく煌めく血で覆われた刀。

 そして男の凭れかかっている人物は、まだ年端もいかぬ子どもだった。そんな子の手に今も血が伝い落ちるその刀は固く握られていた。


「ふっ……。悪いが――俺は、死なない」


 死の間際の途切れるか弱い声と無理矢理浮かべた笑み。その子を真っすぐ捉えていた双眸。

 だがそんな男を見返す目は、瞳孔が開き視線だけで殺してしまいそうな程に睨みつけていた。


「……こんな事。俺にとっちゃ、どうって事ないだよ。……気にも留めない。こうなる……前は……良か……った」


 そして血に塗れた男の手がその子の頬へ伸びる。


「忘れるな……俺は……お前……」


 だがそこで頬に血の線を描きながら手は力無く滑り落ち、男はそのまま床へと倒れた。

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