表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔の者  作者: 夏川
3/3

3



その日はそのまま、本部の宿泊室に泊まるよう言われた。宿泊室、なんて言うが、高級ホテルさながらの一室だった。



そんな環境を与えられても、頭の中は例の命令のことでいっぱいだった。


ーーなにか、引っかかる。


そもそも、停戦協定の場に魔物なんてやってくるだろうか。各国の長官なんて、相当な実力者たちの集まりだ。負の感情を露呈するような馬鹿はいない。もちろんそれは、首脳陣にもいえることだった。

ただ、首脳陣が冷静であれば、戦争などが起きることはない、というのも、当初からの疑問だった。

第三大陸の第五大陸の、戦争。

正直、自分には無関係だと思っていた。

戦争が勃発した当初は、メディアがこぞって取り上げ、ニュースといえばその話題、悲痛な内容に、遠い国の出来事とはいえ、世の中が暗い雰囲気になったものだが、今は規制が入り、ニュースに組み入れられる時間が大幅に減った。

人々の悲しみや不安で、魔物が大量発生したのだ。

当時は朝も夜もなく働き詰めだったと、第一部隊の先輩は言っていた。


戦場では、負の感情が大量に発生すると思っていた。復讐心や悲しみ、死への恐怖、怒り、そんな思いが魔物を生み出すのだ。

お偉いさん方の協定の場ではなく。

自分は騙されているのか、戦争にかこつけて、自分を抹消するのが本来の目的なんじゃないか。


そこで、思考を止めた。

これまでだって、さんざん騙されてきた。

ずっと、信じられるのは自分だけだった。

傷つけられたから、傷つけたし、盗みも、騙しもした。

これまでもそうしてきた。

なんのために生きたらいいのかも、わからなくなっていた。

そんな自分をごまかしつつ、今日まできた。

そうやって生きている自分が今日死のうが、明日死のうが、そう大差ないな。


そうやって、無駄にやわらかいベットの上で思考していると、いつのまにか眠りについていた。

正確には、微力な電力を流されて、強制的に眠らされていたのだが、ルミエールはそれに気づくことはなかった。



ーーー



朝の支度は、何もかも準備されていた。

目覚ましから湯浴み、着替え、朝食、など。

こんな待遇を受けられるのは、どこぞの貴族か何かくらいだろう。

小ざっぱりと身なりを整えられ、真っ白な軍服に着替えたルミエールを見て、マニエーテも満足げにうなづいた。

ルミエールの心境としては、猫がやっている料理店を訪れて生クリームを塗りたくられた男のようだったが。


対戦協定を結ぶ場所までは、マニエーテの異動魔法で行くらしかった。今朝口にした朝食が込み上げてこないかと心配になった。


「合図をするから、昨日と同じようになさい。自分を自分の魔法で包むの。感情の制御さえできていれば、負担はないわよ。」



言われた通り、自分の周りに光を纏わせた。

その姿を確認したマニエーテが、にこりと微笑んだことは、知らない。



ーーー




「もういいわ。」


その声を聞いて魔力を消す。

昨日のように砂に吸い込まれる感覚はなかった。

自分の光に酔うこともなかった。


顔を上げると、金髪の王子様がいた。


「来たね。」


タダラならぬオーラは、マニエーテの出すものと似ていた。

他の誰も、追随できないと、感じさせるのだ。


「無理を言ってすまなかった。」

「ほんとよ。私はもう少しピヨちゃんの成長を待つつもりだったのに。」

「あの人に同じこと言うのか?」

「言えないからあなたに言ってるんじゃない。バカなの?」

「暴言はやめてくれ、彼が戸惑ってる。紹介してもらえるか?」

「ルミエール、この胡散臭いのがフォイア。第三の長官。」

「フォイア長官。第一大陸国軍第一部隊ルミエールと申します。」

「うん。噂には聞いてるよ。マニエーテにいじめられてない?」

「失礼な。私がいじめるのはあんたくらいよ。向こうでは強くて優しい女神様で通ってるから。」

「女神?カカア天下の間違いじゃないか。」


なんだこれ。

夫婦の痴話喧嘩でも聞かされてるのか。

魔力のコントロールで手にしたスルースキルで、ふたりのやりとりをぼんやりと眺める。

マニエーテがこうも気を許す姿から察するに、彼も同じ立場の人間だろうと思った。


「会議のことだけど。場所は第四大陸のハオ島。参加者は各首脳と長官…たぶん9人かな。クロック氏はいつも来ないから。」

「わからないわよ、あいつだって、あの人が大事でしょう。ピヨちゃんのことも、興味がないわけじゃないと思うわ。」

「まあ、居るにこしたことはない。最終的には合流しないといけないし。探す手間が省ける。」

不参加とか、あり得るんだ、と内心思った。

「あなたに頼みたいのは昨日言った通りね。魔力の調整は不要よ。自分の身くらい自分で守れないと長には相応しくないしね。」


そんな長が9人もいるなら、万が一の時の自分は不要では?とはいわなかった。


「首脳陣のことは無視して。あなたはただ、魔物を殲滅させることだけを考えなさい。」

まるで、魔物が現れることは決定事項のことのように言うのだ。

「はい。」

思うところは多々あるが、断ったところで自分の首が飛ぶだけだ。

何より、自分の中にどれだけの魔力があるのか、知りたかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ