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魔の者  作者: 夏川
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『明日の午前演習後、14時に長官室に行きなさい。』


昨日の朝礼で部隊長に名指しされたかと思えば、そう言われた。

周囲がややざわついたが、ここではそれもごく一瞬で消える。また、ルミエール自身、少々のことは気にしなくなっていた。ここ最近、てんやわんやだったのだから、慣れてしまったのだ。


雷の属性だと思っていたが、光だったとわかったのが先月。ここ2年は第二部隊に所属していたが、半年に一度の身体測定で光属性だとわかった途端、第一部隊に異動となった。

もともと団体行動は苦手で、いつも一匹狼だったので、第一部隊の組織力の高さに慣れずにいた。

さすが第一部隊なだけあり、みな感情のコントロールに長けていた。つまり、魔力が高いということだ。

そして、個々の感情での言動がとても少ない。これまでのようにやっかみや嫌味を言われることはなかった。一方で、表面上だけ取り繕ったような人当たりの良い人々の対応に薄気味悪さ感じていた。心の底では皆、どう思っているかわからなかった。

大人しい人も快活な人もみな、等しくフレンドリーだった。とんでもなく無関心な人も一定数いたが。

そんな中で怒涛の1ヶ月。訓練方法は当然第二部隊と違ったが、何より魔物が現れた際の討伐に呼ばれることがとてつもなく多かった。どうやら第一部隊の仕事は魔物討伐のようだった。

魔物、とは、魔力に人の負の感情が乗って固体化した者だった。

無作為に人を襲うため、軍が対処すると聞いていたが、想像以上に第一部隊の出動数が多かった。第二部隊に回ってきていた討伐はごく一部のとても対処しやすいものだったと知った。

慣れない討伐で、なんとか足手まといにならないようになったと思っていたら、この呼び出しだ。



長官、というのは、目上も目上、自分のような一兵士が合間見えるには不釣り合いな天上人、第一大陸国軍長官、マニエーテのことだ。

マニエーテに呼ばれる要件など全く見当もつかないが、自分のこの属性にまつわることに違いないだろうと予測はできた。


返事をしてしばらく、部隊長を見つめるが、表情が読めず、この人の中には答えがないということを悟ったのだった。





とりあえず、入団の時に来て以来の本部を見上げる。

厳かな雰囲気だか、白の大理石でできているため、ぱっと見軍の本部とは思えない場所である。

名を告げ、検問を受けると、応接室の一室に案内された。

ここに長官がくるには、簡易的すぎる応接だった。座って待つよう言われる。

腰掛けたソファが想像以上に、砂のように沈み込んだと思ったらそのまま砂に飲み込まれた。




ーーー




「ピヨちゃん、いらっしゃい。」


軍人とは思えない、グラマラスで美しい雰囲気の女性が目の前にいた。

ただ、今はまだ目がチカチカとして、顔がよく見えなかった。


「….ぴ?、は、いえ、失礼いたしました。第一部隊ルミエール、参上いたしました。」


ソファに座ったままになっていたため、慌てて膝をつく。


「いいのよ、驚いたでしょう。魔力が落ち着くまでソファでゆっくりなさい。」


「恐れ入ります。失礼いたします。」


魔力、つまり、感情は自分でもある程度コントロールできるようになっていたし、何かあるだろうと心構えもしていたつもりだったが、思いの外驚愕していたようだ。

転移魔法なんて物語上のことかと思っていた。咄嗟に魔法で身を包んだが、魔力量が調整できていなかったらしい。


「そろそろ目は慣れてきた?私が誰かはわかっているみたいね。」

「長官、御無礼をお許しください。」

「無礼ではないわ。適切な対処方法よ。成長したのね、ピヨちゃん。」

「…。」


ピヨちゃんというのが自分を指していることは理解したが、ツッコむことはできなかった。

その目がまさに、子どもを見守るような優しい眼差しだったため、不思議と怒りも生まれなかった。


「突然呼んでごめんなさいね。【私たち】も正直、戸惑っているの。こんなことは、初めてで…。でも、あなたの力が必要であることに違いはないから、まずは動いてみなくちゃ、ということでね。申し訳ないけど、明日、第三大陸と第五大陸の停戦協定についてきてもらえるかしら。」



語尾は疑問系になっていたが、それは命令だった。

戦争の停戦協定に?自分が?なぜ?

あまりに突拍子もない、非現実的な内容だったため、感情はなかった。

停戦協定は普通、五大陸の各軍事長官と各首脳の10名で行われる。もちろん護衛もいるだろうが、長官たちの実力が高すぎて、護衛が邪魔になるという噂だ。


「どうやら、第三の第五のおばかちゃんたちが、戦争を止めるつもりがないみたいなのよ。きっととんでもなく大きな負の感情が生まれるはずだから、もし私たちの手に負えなかったらそのときは、あなたの力で魔物を消してほしくて。」


この人たちの手に負えない、なんてこと、あるんだろうか。


「ですが、私では力不足では…。魔物討伐をするようになってまだ1月です…。」

「私たちが誘導するわ。あなたにはいわゆる【世界の勇者】的な役割をしてほしいの。なんと言っても数千年ぶりの光属性よ。ーー今の世の中には、救いが必要なんでしょうね。」



貴方は何も考えず、感情のままにぶっ放しなさいー。




生まれてこの方、感情のままに、と言われたのは初めてだった。

それはひどく魅力的で、だけれどとても難しそうな命令だった。




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