表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔の者  作者: 夏川
1/3

1



森を抜けて山を登り、丘を下ってもうひと山越えた場所に、城が建っている。年中、白い霧で覆われて城の全貌を見た人はいないという。

そもそも、ここ人がくることはそうない。


人と呼ばれることがない者が、いる。





ーーーー


「王、ご報告に参りました。」


「うん。」


「第三大陸と第五大陸の戦争は、まだ、長引くようです。」




だだっ広い部屋の奥、王座に座る者と、それに向かって跪く男性。

人気がなく、薄ら暗く、冷たい石の部屋には不釣り合いに、真っ白な騎士服を着た金髪の青年である。

どこぞの王子のような見目は、人々からの人気が高そうだが、いまはここにふたりきりしかいない。


「ーーそうか。そろそろ、いい頃だね。」


はきはきと報告した青年と対照的に、静かな冷たい声が響く。


王座に座るのは、城に似合いの、漆黒の青年だった。立派でおどろおどろしい椅子に座るには、年若くか細いが、何処か近寄りがたい威厳があるのは、真っ黒な目に感情がないからか。


「フォイア頼むね。」

「御意。」

「それから、第一にいる彼はどうかな。」

「今のところ、有力です。当初は雷の属性かと言われていましたが、光属性だということが、公に認められました。所謂、勇者の扱いですね。ただ、いかんせんまだ、若すぎます。」


「そういえば、マニエーテがぴよちゃんって呼んでいた気がする。かわいいんだね。」

「…あれは、かわいいというよりは、ただの生意気ですね。」

「今度、連れておいでよ。」

「側近にするには、まだ早いかと…。」

「みんなが認めてる人は久しぶりだし。きっと大丈夫だよ。もしだめなら、またクロックにお願いしよう。今までもそうだったでしょう。心配なら、みんなでおいでよ。もしものことがあっても、誰かがなんとかできるでしょ。」



それは、魔王と呼ばれる者とその側近の会話にしては、どこか気が抜けたような雰囲気だった。

まるで、新しいお友だちを連れておいで、とでも言うような。

フォイア、と呼ばれた男性は、表情には出さないが、内心困っているようだった。その証拠に、周りでぱちぱちと小さな火花が散っている。王子様面なので、単にキラキラオーラが出ているようにもみえるが。


困るのも当然。なんせ、魔王の元に勇者を連れて来いというのだから。


「わかりました。停戦協定の際、話をつけて参ります。」

「さすがフォイ。ありがとう。」


冷たい声に、わずかに柔らかさが含んだようだった。

その声のあと、ばちん、とひとつ火花が弾け、フォイアの左手をわずかに焼いた。


「ああ、ごめん。大丈夫?手が赤くなってる。薬塗る?」

「結構です。ではそろそろ、戻ります。」


口早にそういうやいなや、フォイアの周りを青い炎の渦が包んだ。

全てを包むと瞬間、その炎は風に消えた。


「君も相変わらず、かわいいね。」


感情のこもってない呟きが落ちた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ